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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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人間を!使い捨てる!東京電力・福島第一原子力発電所〈第1回〉

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所要時間 約 9分

放射性核物質、差別される人々

ロジャー・ウィザースプーン / エナジー・マターズ 3月13日

東京電力役員01
昔の日本には、遠い場所から拉致されて来て、使役され虐待される黒人奴隷のような人々はいませんでした。
そのかわり、社会の底辺にあって社会的にも経済的にも汚いとされる仕事を賄うため、『部落民』という階級が作られたのです。
現代にあっても尚、その差別は解消していません。

もしその仕事が穢ければ、あるいは危険であれば、または差別されるような内容の仕事であれば、それをこなさなければならなかったのは、部落民と呼ばれた人々でした。
穢多(えた)、非人と呼ばれた彼らがその仕事をこなしたのです。

住む場所も制限され、スラム街で暮らす彼らには、他と違い生活の糧を得るための職業選択の自由もほとんどありませんでした。
彼らは一般の人々から完全に隔離された社会で生きる、不可触民でした。
数世紀前の江戸時代、当時の支配階級であった士分の人間たちが、当時の社会で汚れ仕事をさせるために作り出したのが部落民という階級だったのです。

そして現代、福島第一原発の4基の原子炉が引き起こした事故の収束と廃炉作業を行うことになった施設の運営者である東京電力は、汚染のひどい現場に練度の高い正社員を投入し、過酷ではあっても単純な労働によって被ばくさせてしまい、将来必要になるはずの専門知識を必要とする作業に彼らを使うことが出来なくなってしまう事態を恐れました。

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「彼らは、使い捨ての人々です」と、広島市立大学・広島平和学会、歴史学科研究職教授田中利幸氏(ペンネーム : Yuki Tanaka)がこう語りました。
「彼らはまさに、不可触民です。」

この日本における差別の問題と、福島第一原発の放射能に汚染された環境の中で人間が使い捨てられている問題については、ニューヨークの125番街とハーレム地区の中のブロードウェイが交差するあたりにある、レストランで会話を交わすうちに持ち上がった話題でした。
レストランの頭上は高架橋になっており、決まった間隔で列車が地響きを立てて通り過ぎていました。

田中教授、東京を拠点に福島第一原発で働く作業員たちの組合を組織している君島京子氏、福島大学で公共政策を専門にし、大学の災害復旧研究所の先任研究員を勤める丹波文則准教授がその席にいて、一週間かけて行われた福島第一原発の、大規模な事故収束・廃炉作業についての集中講義と討論会に関し、ざっくばらんに意見を交わしていました。

彼らはすでに福島第一原発の事故後の対応と事故収束・廃炉作業の現状に懸念を持っている、ニューヨーク州、ニュージャージー州の住人たちと情報交換を行っていました。
ハーレム地区の40キロ北にある、インディアン・ポイント原子力発電所の廃止を求める4つの環境団体(インディアン・ポイント・セイフエナジー連合、リバーキーパー、クリアウォーター、シエラクラブ)のメンバーである彼らは、福島第一原発の状況についてもすでに多くの情報を手に入れていました。

日本には固定化されている非差別階級として、3種類の人々が存在します。
アイヌ人、部落民、そして朝鮮人です。

アイヌの家族
アイヌは北海道の先住民族で、数百年間、日本人による支配を受けていました。
しかし公式には1899年、非支配階級から「解放」され、その土地は大日本帝国の一部となり、彼ら自身も国民としての地位を保証されました。
彼らのうち大多数は日本人社会の中に同化しましたが、今なお道内の年のスラム街で、数万人の人々が苦しい生活を送っています。

第二次世界大戦前、そして戦中に「100万人以上の朝鮮人が、労働者として日本に連れてこられました。」
『隠された恐怖(米国内でYuki Tanaka名義で出版)』の著者でもある田中教授がこう語りました。
それはまさに第二次世界大戦=太平洋戦争における、日本の戦争犯罪でした。

「彼らは戦時中、石炭掘削などの重労働や火薬庫などでの危険な作業を強いられました。
しかし戦後になってもその地位はほとんど変わらなかったのです。故国に帰ることができなかったからです。
日本の社会で持つとも汚く、そして危険な労働を半ば強いられ続けたのが朝鮮人、そして部落民だったのです。」

しかしながらその中で最も数が多く、長期間差別され続け、その存在について多くの人々が認識していたのが部落民でした。
「差別のそもそもの始まりは、仏教の慣習の中にあったのです。」
田中教授がこう説明してくれました。

非人
「日本の封建時代、その仕事に従事すれば『体が穢(けが)されてしまう』とされる職業に従事する人間を確保する必要が生じました。
動物を飼育したり、あるいは捕獲して殺して毛皮をとり、皮革製品を作る職業。人間の遺体を火葬にする仕事。そして汚水の管理をする仕事などです。」

「そこで封建社会の支配者層は部落民階級を考案し、彼らを大都市周辺のスラム街に住まわせることにより、一般移民の下僕として使役する方法を考えだしたのでした。
そして江戸時代、この被差別階級が暮らす社会が日本全国に広げられていったのです。」

「第二次世界大戦=太平洋戦争の終了後制定された日本国憲法により、彼らの身分は解消されました。
しかし差別は残りました。一般の人々はスラム街の出身だというだけで、偏見の目を向けるのです。」

部落民と朝鮮人に対する職業上の差別は、戦後の日本社会で拡大していきました。
「日本における部落民に対する差別は、アメリカ国内における黒人差別と似ていました。」
田中教授がこう語りました。
「日本における問題、それは見た目だけでは部落民だとは解らないことなのです。私たちは見た目は全く同じであり、外見で部落民を識別することは不可能です。」

「しかし」
田中教授の話を受け、北島氏が続けました。
「部落民と朝鮮人はその記録、あるいはどこで生まれたか、生活している場所がどこかを確認すれば、解るようになっています。もしその人がスラム街で生まれたという記録が残っていれば、その人はたちまち素性を問題にされ、就職を断られ、その地域に住むことを拒絶されてしまうのです。
スラム街から出て行くためには、良い就職先を探す必要がありますが、部落出身であることが解れば、その就職もできなくなってしまうのです。」

〈つづく〉

Japan’s “Throwaway People” And the Fallout from Fukushima
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今日から3回に分け、ウィザースプーン氏のルポルタージュをご紹介します。
ウィザースプーン氏については、先に【実録、トモダチ作戦】をご紹介しました。

郷土史を研究したことは無いので、確かなことは言えませんが、私が暮らす東北太平洋岸、つまりは東日本大震災の被災地には差別というものはもう存在しません。
幸いというべきです。

ですから、なぜ部落の出身というだけの理由で人間が差別されなければならないのか、感覚として理解できません。

しかし現政権もそうですが、小泉首相以降の自民党政権には「弱者への視点」を感じることができません。
私個人の感想に過ぎませんが、かえって貧富の格差を固定しようという『悪意』すら疑っています。

きわめて風通しの悪い社会を築く、その意図は何なのでしょうか?

【 ニッポン株式会社、崖っぷちからの脱出 】

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所要時間 約 13分

「円安株高は、日本経済再生のための切り札では無い」

ラミー・イノセンチオ(香港特派員)アメリカCNNニュース 5月12日

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香港(CNN)-日本は、あたかも経済の回復が始まったかのような春を謳歌しています。
為替市場では円が4年ぶりに100円を超えて下がり、日経平均株価(日経225)は5年ぶりに14,500円台を回復しました。

それだけではありません。
これまでの数年間、赤字続きだった日本の輸出企業が久々に黒字を計上することになりそうです。
今週ソニーが、5年ぶりに年間を通した最終損益において、経常利益を確保したことを明らかにしました。

投資家や輸出業者は手元に現金がうなる日々の再来が近いことを感じ、手ぐすねを引いて待っている状態ですが、その実先々に潜む問題が見え隠れしています。
アナリストたちは、日本株式会社の一部はまだまだ崖っぷちにいる、そう指摘しているのです。

▼ ボールを取り損ねた?ニッポンの技術系企業

「円安は日本の製造企業にある程度の恩恵をもたらしてはいますが、だからと言ってそれらの企業が国際市場で5年前、あるいは10年前の地位を取り戻すという事ではありません。」
格付け会社フィッチ社の専務理事で、アジア太平洋TMTレイティング部門の責任者であるスティーヴ・デュロス氏がこう語りました。

「基本的に、シャープ、ソニーとパナソニックが現在投機的格付けになっている理由は、国際市場において技術力においてすでに指導的地位を失っていることにあります。いずれの企業もノートブック型パソコンや携帯電話の市場でのシェア獲得に失敗してしまいました。これからの有望市場で、ボールを受け損なってしまったのです。市場は上記の3社が決定打となるような商品の開発・発売したことを認めてはいないのです。」

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問題は今年3月に決算月を迎えたソニーの単年度の決算報告書の中身です。
当社は4億3,500万ドル(約435億円)の黒字を計上しましたが、この利益は19億ドル(約1,900億円)以上の資産売却によるものです(差引本業は1,400億円以上赤字だったことを意味する)。

「資産の売却益が無ければ、ソニーは巨額の赤字を計上しなければならなかったはずです。」
フィッチ社の企業格付け部門のケルヴィン・ホー部長がこう語りました。
「このため利益を計上してはいるものの、株主に配当を出すこともできませんし、負債の返済を早めることもできません。その上、戦略的に重要な分野で集中的に投資を行うことは、したくても出来ないでしょう。」

こうした状況からソニーは、比較的事業規模の小さい、カメラやセンサーなどの製造部門と音楽や映像制作などを含めた映像事業に特化していく必要性があるかもしれません。

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このところ続いた新作映画のヒットがソニーの業績回復に貢献しています。
ジェームズ・ボンド・シリーズの新作『スカイフォール』は、世界中の映画館で10億ドル以上を売り上げ、トビー・マグワイアが出演するスパイダーマン三部作と『アメイジング・スパイダーマン』とともに、2012年のソニーの業績回復に貢献しました。

問題はしかし、こうした分野での成功がさらに続いたとして、ソニーが世界市場での優位性を奪還し、企業グループ全体の業績回復を実現できるかという点にあります。

「簡単に言ってしまえば、これからも状況を注視しなければならない、というのがその答えです。あまり多くは無い収益性の高い商品の成功によって、ソニーが回復軌道に乗っていけるかどうか、現段階で判断するのは早すぎます。」
前出のデュロス氏がこう語りました。

「昨年のある時期、ソニーはテレビの製造事業から撤退しなければならないかどうか、真剣な議論が行われました。私自身はソニーが利益を上げられるかどうか、確信がありません。しかし最近のソニーの発表では、テレビの製造事業を継続することにしたようです。売り上げを伸ばし、利益を上げる見通しがついたという事なのでしょう。実際、それが出来れば喜ばしいことだと思います。」

ソニーのテレビ製造部門がここ数年赤字続きだったことに加え、同社が満を持して開発・発売したスマートフォン、エクスペリアZもまた成功しませんでした。

「誰に聞いても、それは素晴らしいスマートフォンです。そして市場の中で一二を争うほど壊れにくい製品でもあります。しかしエクスペリアZを実際に使っている人を、私は2人しか知りません。」
デュロス氏がそうつけ加えました。

日本の製造企業の中で、フィッチ社が格付けを行っているのはソニー、パナソニック、シャープ、この3社だけです。
そして3社ともに明るい判断材料が無いため、投機的格付けにされてしまっているのです。

▼日本の自動車メーカー『戦線復帰?』

日本の技術系企業の復活については未だまだ予断が許されない一方で、円安による日本の自動車ローカーの業績回復への期待は大きなもののようです。
世界最大の自動車会社、トヨタ自動車の最新の決算は、期首の予想の実に3倍の97億ドル(約9,700億円)の経常利益が上がったことを報告しました。

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「日本の自動車メーカーは、信頼と勢いを回復しました。 自動車産業において、勢いこそはすべてです。」『アメリカの自動車産業』『中国の道』の著者で、ダン・アンド・カンパニー社長のマイケル・ダン氏がこう語りました。
「これは一時的現象ではありません。日本の自動車メーカーは戦線に復帰したのです。」

しかしながら日本の各自動車メーカーは、その成長のためにアジアの政治情勢、世界競争、そして技術革新力という、いずれも円安によっては解決できない問題と直面しなければならない、ダン氏がそうつけ加えました。

世界最大の自動車市場を持つ中国との間で、東シナ海における領土紛争を引き起こしてしまった日本は、中国市場における日本車のシェアを大きく損なってしまいました。

「日本車メーカーは今年中国国内で300万台の販売を記録しましたが、尖閣問題が無ければその販売台数はもっと大きなものであったはずです。中国との外交紛争が解決すれば、5年以内に500万台の販売実績を作る事など簡単なことだと思います。」

「中国ではカーディーラーのショールームへの訪問者数が、良い指標になります。昨年、日中間の関係が最も緊張した10月、そして11月には、私が知っている日本車ディーラーのショールームへの来客数はそれ以前の半分にまで落ち込みました。現在はゆっくりではありますが、回復傾向にあります。」

一方、韓国、そしてアメリカ・デトロイトの自動車メーカー・ビッグ・スリー― ゼネラル・モーターズ、フォードとクライスラー各社の追い上げも急なものになっています。
ダン氏は円安の下での競争に打つ勝ち、計画的な拡大基調を維持していくためには、海外の生産拠点をよりコストの安い場所へと移転させることもひとつの方法だと語りました。

しかしここに問題が一つあります。
「かつてトヨタ自動車が生産拠点を積極的に海外に展開し始めたとき、同時に様々なトラブルが発生し始めました。日本の向上における品質の高さと仕上がりの確かさを海外の生産拠点でも再現することは、非常に難しいことでした。日本の自動車メーカーは品質の高さで世界一を保つために、最大限の努力を行っていました。」

良く知られている2009年から2010年のトヨタ最大の危機は、世の消費者の注目を集め、他の自動車メーカーの猛追を許す結果となりました。」

「韓国の現代自動車の追い上げが続いていることは、良く知られているところです。アメリカのメーカーも、品質、技術革新、そしてデザインの面で進歩を続けています。」
ダン氏がこう指摘しました。

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「一例を挙げれば、フォード・フォーカスの成功は素晴らしいものでした。それまで10年間、最大の販売数量を誇っていたトヨタ・カローラを抜いて、ついに販売台数ナンバーワンを達成したのです。」
しかし一連のリコール騒ぎが一段落し、トヨタへの信頼も徐々に回復しているとダン氏が語りました。

2012年12月、予期せぬ加速により経済的損失を被ったと主張するトヨタ車のオーナーによる集団訴訟を解決するため、トヨタは11億ドル(1,100億円)の支払いに同意しました。
その同じ月、2012年のレクサスの中の1モデルのリコールに絡み、トヨタは米国全米高速道路交通安全委員会に1,740万ドル(17億4,000万円)という記録的賠償金額を支払うことに同意しました。

世界最大の自動車メーカー・トヨタの今後の方向性に関し、同社の社長兼CEOの革新を促進しようとするリーダーシップ・スタイルについて、ダン氏は高く評価しています

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「私は、豊田彰夫氏がとても快活な技術者や社員たちの会議の席上、『いつまでも同じ場所に留まらないようにしよう。』あるいは『私たちがこれまでとは違う何ができるのか、目を見開いて行こう。』とよく口にすると聞いています。
日本人の中で、新たな目覚めが始まっている兆しではないでしょうか。」

http://edition.cnn.com/2013/05/11/business/japan-yen-impact/index.html?iref=allsearch

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この原稿を翻訳していて気がついたのが、やはり日本のマスコミの「情報操作」でした。
日本の大手報道各社のニュースでは、トヨタの大幅な業績の上方修正は「円安=アベノミクス」の恩恵、そういう報道の仕方でした。
しかしこの記事を読めば、その好業績がたゆまぬ技術革新、そして徹底した品質管理実現への努力などによるものであったことが解ります。

考えてみれば、今期2012年4月〜2013年3月の決算期のうち、円安になったのは第4四半期だけ。
しかもトヨタのように世界中に生産拠点がある場合、それほど円安にそれほどの恩恵があるとは思えません。
ただ、3月末日の決算当日、連結決算を行う際にドルやユーロの換算価値が高くなった分、円に換算された利益が膨らむことはあるでしょう。
しかしそれでも、日本のマスコミの「ほとんどは安倍政権の功績」であるかのような報道には「操作の意図」を感じます。

ところで、「経済!経済!」と騒ぐ割には、自ら自分の足元に落とし穴を掘るのが日本の「保守」政治。
否、結局のところ世界が見えていないナショナリストたちが、「敵のいない」国内で吠えた挙句、世界から反感を買って追いつめられていっているだけの話です。
韓国人には韓国人であるが故の利害があり、中国人には中国人であるが故の利害があり、アメリカ人にもまた、アメリカ人であるが故の利害がある。
それは日本人には日本人であるが故の利害があるのと、何ら変わるところはありません。
だからこそ互いに議論し、駆け引きをする必要があり、それが外交というもののはずです。

金をばらまいたり、ひたすら軍備を増強することを外交というのかどうか、日本の『保守』政治家は、『真正の保守政治家』であるディズレーリあたりに教えを乞うと良いと思います。
もっともディズレーリは故人ですが…

それを韓国人だから、中国人だからと言って罵倒していたのでは、ひたすら敵を作り続けるだけで益することなど何もありません。

つまるところ、ライバルは自分自身という事ではないでしょうか。
少なくともトヨタ自動車はそう考えているようです。

IAEAが警告【 福島第一原発の廃炉まで40年、その数字に根拠無し! 】

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所要時間 約 8分

「福島第一原発のようないくつもの問題を抱える、混乱した現場の事故収束・廃炉作業が40年は非現実的」

アメリカCBSニュース 4月22日

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津波をきっかけに大事故を起こした福島第一原発の事故収束・廃炉作業については、先に日本政府が示した40年という時間よりも長くなる可能性が高く、東京電力は現場の安全性・安定性をもっと向上させなければならない、国連核監視機関IAEAがこう警告しました。

国連の調査団を率いて先ごろ来日した、国連核監視機関のホアン・カルロス・レンティホ氏は、現時点で福島第一原発の事故収束・廃炉作業がいつまでかかるか予測することは『不可能』だと語りました。

「福島第一原発の事故収束・廃炉作業に必要な期間については、机上でその期間を予測するのはいかようにも可能です。しかし私の見る限り、福島第一原発のようないくつもの問題を抱える、混乱した現場の事故収束・廃炉作業を、日本政府が言うように30年から40年で終わらせるのは、とてものこと不可能です。」

先に日本政府と東京電力は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業に必要な期間を最高40年と見積もりました。

しかし溶け落ちて、人間が近づけない程のきわめて高い放射線を発し続けている核燃料の位置と状態を確認した上で、それを取り除くための方法と技術を開発するのは、これからの課題なのです。

事故現場では破壊された原子炉内の低温状態を維持し、原発内の各施設を安全な状態を保ち、福島第一原発全体を安定させておかなければなりません。
しかしそのために、作業行程にはすでに遅れが生じています。

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「働いている人々を始め、全てにおいて安全を確保するために、事故収束・廃炉作業においては慎重の上にも慎重にすべてを進めていく必要があります。」
レンティホ氏がこう指摘しました。

未だに福島第一原発内では多くの設備が間に合わせのものであり、度々トラブルが発生しています。
広い範囲に渡る電源喪失に始まり、地下貯蔵タンクからの高放射性汚染水の漏出まで、わずか数週間の間に1ダース近いトラブルが発生しました。

4月22日は、電源トランスが入ったケースの中で死んだネズミが2匹見つかったため、使用済み核燃料を収納した核燃プールの冷却システムを停止させなければなりませんでした。
同月始めには、1匹のネズミが配電盤に入り込んで、電源をショートさせ、広い範囲で停電が発生し、最大30時間冷却機能が失われるトラブルが発生しました。

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これら一連のトラブルは、事故収束・廃炉作業が完了するまで、2011年の東日本大震災によって破壊された福島第一原発の安全を保ち続けることが可能なのかどうかという疑問を突き付けることになりました。
こうした問題が続出したことは日本政府と東京電力に対し、事故収束・廃炉作業そのものの見直しと、危険を減らすための対策の集約化を求めています。

核燃料サイクルの専門家であり、核廃棄物の専門家でもあるレンティホ氏は、今後さらなる問題が発生することを警告しました。

「福島第一原発のような複雑な構造を持つ原子力発電所では、正常な状態で運営されていても数々のトラブルが発生するものなのです。まして福島第一原発の現状を考えれば、これからもトラブルが繰り返される可能性は高いと言わなければなりません。」
レンティホ氏がこう指摘しました。
「これから起きる可能性のある事故とトラブルについて、予めその内容を想定し、可能な限り迅速な対応を行うため、事故対応体制の構築と補償基準を定めておく、そのことが重要です。」

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IAEAの調査チームは以下の事を東京電力に対して求めました。
「発電所内の施設が安全確保が完全なものかどうか、確認を行うためのシステムを改善すること。そして外部からもたらされる脅威に対し、防御機能を強化すること。」
そして現在の急場の間に合わせの各装置・設備を、もっと信頼性の高い恒久的なものに交換すること。

12名で構成される今回の調査団は今年5月、詳細な報告書を公表することにしています。

福島第一原発については、最近報道された主だった問題の中でもっとも重大だとされたのは、地下に7か所作られた汚染水貯蔵プールの内の3か所から高濃度汚染水が漏れ出したトラブルでした。
東京電力も規制当局も、漏れ出した汚染水が海にまでは到達していないという見解で一致しています。
東京電力は地下貯蔵施設内の汚染水を、地上の鋼鉄製のタンクに移さざるを得ませんでした。

増え続ける汚染水については、事故直後から問題視されていました。
しかしこれ以上保管する場所の確保が困難になって来た今になってやっと、東京電力はこの問題が『危機的』状況にある事を認めたのです。
東京電力は可能な限り早く、信頼性の高い鋼鉄製のタンクを建設し、地下のタンクは使わないようにする方針です。

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しかし汚染水の移送作業が完了するまで、漏出は続くことになります。

溶け落ちた核燃料の温度が上昇しないよう絶えず送り込まれている冷却水の一部と、破壊された原子炉建屋の基礎部分に入り込む地下水によって、高濃度の放射性を帯びた汚染水が毎日400トンずつ増え続けています。

東京電力によればすでに280,000トンに上る汚染水が福島第一原発内に貯蔵されており、2~3年以内にはその量は倍になるものと見られています。

http://www.cbsnews.com/8301-202_162-57580704/fukushima-nuclear-plant-shutdown-may-take-japan-longer-than-predicted-40-years-warns-u.n-agency/
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この記事を読むと、次のような感想を持たざるを得ません。
「福島第一原発の事故は、全く収束などしていない。」
そして
「原子力発電所というものは、一度事故を起こしてしまうとどこまで面倒なのだ…」

折しも原子力規制委員会が敦賀原発について結論を出し、活断層の存在が『公式に』認められました。
これに対し、敦賀市長が以下の発言を行いました。
「調査委員会の人選は偏っている。」

暴言というべきでしょう。

この国では、人間として当たり前の見識を示すと『偏向している』と言われるようです。
なぜでしょう?
言っている側が、近代の民主主義を基本的に理解していないからだと思います。

公共に関わる問題については、議論を尽くし最大公約数にとって最良の結論を得る努力を続けるのが民主主義のはず。
ところがこの国では、各首長が「やりたいようにやる」ために、対立する見解を封殺しようとする。
対立する人間を「偏っている」「偏向している」と罵倒し、時には公権力を用いて脅す。

さらには『原発が無いと地域経済が回らない』という発言。
これなど自らが行う自治政治の無能を、自分から宣言しているようなものだと思っています。
全国には原発の無い過疎の市町村の方が多いはずです。

地域経済活性化の切り札が原発である、そんな人間にあなたや家族、子供たちの未来を任せて大丈夫ですか?

【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第4回》巨額の廃炉費用は国民負担

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所要時間 約 5分

「廃炉に掛かる本当の費用はいくらにまで膨らむのか神のみぞ知る、見当もつかない」
「負担を求められるのは一般国民、それだけは明らか」

山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム / アメリカNBCニュース 3月5日

Jビレッジにて
今、日本の原子力産業界は、福島第一原発の廃炉作業、そして寿命を迎えた他の原子炉の廃炉作業にあたる現場の作業員が不足している中、今後どう確保していくのかという問題に直面しています。

安倍首相が率いる自民党の保守政権は、前政権が打ち出した2030年代に国内の原子力発電所を全廃するという方針を捨てただけで、それに代わる基本エネルギー政策を策定してはいません。
日本国民の間に原子力発電に対する懸念は根強く、最新の世論調査ではいずれ原子力発電は全廃すべきだという意見が70%を占めており、原子力産業界の思惑との兼ね合いがどうなるか、先行きは不透明です。

こんな現象が起きています。
東京大学の先進的原子力発電技術科への願書の提出数は、前年と比較し30%低下しました。
東京都市大学でも同様の傾向が見られ、工学部の原子力関連部門への願書が2010年と比較し、2012年4月には明らかにその数が低下しています。

「福島第一原発の事故収束にたずさわるのはいったい誰でしょうか?私たちのような若い世代の人間ではないでしょうか?」
東京都市大学の原子力研究所の大学院生である25歳の新藤祐太氏がこう語りました。
「これからの数十年間、廃炉作業に携わるのは私たちの世代になります。」

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事故収束・廃炉作業の実際の中身は、破壊された4基の原子炉及びその関連設備の完全な解体と無害化、そして未だ方法が見つからない放射性核廃棄物の処分です。
しかしこの最後に上げた放射性核廃棄物の処分については、周辺市町村の反対が予想されます。

日本は福島第一原発の廃炉について、チェルノブイリで行われた、破壊された原子炉全体をコンクリートで覆ってしまう「石棺」方式を採用しませんでした。
石棺の中の原子炉の状態を確認することが困難になってしまう、それが石棺方式を採用しなかった理由のひとつだと、事故収束・廃炉作業を所轄する経済産業省の舟木健太郎氏がそう語りました。

「現在明らかにつれている事故収束・廃炉費用など、推定に過ぎません。」
中央大学の安念教授がこう指摘しました。
「ほんとうのところ?それは神のみぞ知る、見当もつきません。」

最終的な金額が一体いくらにまで膨らむのか、いずれにせよ、そのほとんどを負担させられるのは一般消費者、ということになりそうです。

日本政府が対応に苦慮する莫大な負債、高齢化社会を維持していくために必要な多額の費用と併せて税金で、そして高額な電気料金という形で、日本の一般国民はその費用を負担しなければなりません。

線量調査の列
誰もが望まない選択ですが、避けることのできない事態なのです。

「こうした作業の経験は、これまで一度もありませんでした。」
元衆議院議員で、事故収束・廃炉のための研究開発を管掌していた政府のタスクフォースを率いていた北神圭朗(きたがみけいろう)氏がこう語りました。
「必要な技術も、必要な手段・資金調達方法、いずれもが全く未着手の状態でした。すべての問題について、私たちは暗闇の中を手探りで進むしかないのです。」

(追加取材 : リンダ・シーグとアーロン・シェルドリック、マキ・シラキ、編集 : ビル・タラント)

〈 完 〉

http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/#.UYxHJ0r0cnV
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理不尽だと思うのは、無定見な原発政策の結果発生した福島第一原発の事故の重い負担を背負わされるのは、今の子供たちであるという事です。
中には、事故による放射線の被ばくをしてしまった子供たちも含まれます。
彼らは自分たちを傷つけ、将来を不安にしてしまった相手のために多額の負担を求められる事になります。

事故の原因を作り出した人間たちは、億の単位の退職金を受け取って姿を消した東京電力の元会長、元社長を始め、いくつあるかわからない原子力発電関連機関に天下ったゲンパツ官僚、電力ムラ、原子力ムラの頂点に座るゲンパツ議員、誰も責任を取ろうとはしていません。

理不尽もここに極まれりと言わなければなりません。

【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第3回》傷ついていく戦士たち

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所要時間 約 6分

いまだに1時間あたり1,000万ベクレル、放射性セシウムの漏出
「福島第一原発の作業員には、ベトナム戦争の帰還兵士を苦しめた、戦場後遺症に教われる危険がある」

山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム
/ アメリカNBCニュース 3月5日

4号機付近
▽傷つき続ける戦士たち

福島第一原発は東北地方の太平洋岸、東京の北東から240kmの場所にできたガン細胞です。
事故直後は破壊された原子炉から1時間あたり800兆ベクレルの放射性セシウムが漏出、現在はよほど減ったとはいえ、それでも一時間あたり1,000万ベクレルの放射性セシウムの漏出が続いています。
放射性同位元素は崩壊の過程で、一定のエネルギー量を持つ放射性物質を放出しますが、これは人間の各器官を透過する能力があり、細胞を傷つけ、ガンの発生原因を作り出します。

人間の健康に対する放射線の脅威をできるだけ小さいものにするため、日本政府は福島第一原発の周囲20キロメートルを立入禁止地帯にし、一般の人々が入ることを厳しく制限しています。

そんな環境の中に、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の拠点となっているJ-ビレッジがあります。

毎日、立ち入り禁止区域のすぐ外側からおよそ3,000人の労働者が、このJ-ビレッジに集まってきます。
彼らはこの場所で全身を覆う防護服を身に着け、ゴム手袋をはめ、靴にもビニール製の覆いを被せます。
いったん福島第一原発の中に入れば、彼らは放射性物質が体内に入らないよう、防護マスクをつけたままにしなければなりません。

CB06
第一線で働く作業員の一人が匿名を条件に、ロイター通信社に作業の様子を語りました。
重い防護スーツを着たままの作業は息苦しく、そして孤独であり、精神的ストレスも相当のものであるにも関わらず、その報酬は不当に安い、彼はそう不満を述べました。

この辺りの日払いの建設作業員などは時給1,500円支払われているにもかかわらず、昨年末東京電力が調査したところでは、福島第一原発の緊急作業員の7割が、時給837円をかろうじて上回る賃金で働かされていました。

昨年、東京電力の財政上問題を扱う委員会で議長を務めた中央大学の安念潤司(あんねんじゅんじ)教授は、同じような条件の下、福島第一原発からは離れた場所にある市町村で除染作業を行ったり、復旧建設工事などに携わる労働者よりも、その賃金は低いものだと語りました。

「福島第一原発の緊急作業員の賃金条件は、増々悪くなっています。一体誰が、そんな条件で働きたいと思うでしょうか?」
福島第一原発から40km離れた場所にあり、急ぎ拡張された作業員宿舎がある広野町の居酒屋でくつろぎながら、40代の重機オペレーターがこうこぼしました。
「私は胃痛に悩まされっぱなしです。そしていつもストレス漬けです。宿舎に戻ってすることといえば、翌日のことを考え、憂鬱になることだけ。」
彼は零細な下請け会社に雇用されています。
「雇い主は、私たちに勲章をくれるべきです。」

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精神衛生学の専門家は、彼らが受けているストレスを、前線で戦う兵士たちと同様のものだと指摘しました。
一般の人々の東京電力に対する憤りが、ともすれば前線で働いている作業員に向けられる傾向があるのです。

「福島第一原発で働いた緊急作業員には、ベトナム戦争の帰還兵士を苦しめた戦場後遺症に襲われる危険性があります。彼らの帰還を喜ばない社会によって追いつめられ、ホームレスの境涯に落ち、自殺を図ったり、アルコール中毒、薬物中毒になったりといった危険があるのです。」
福島第一原発の1,500人の作業員たちに対する無償奉仕の医療活動を行った、防衛大学医学部病院、精神医学科講師の重村淳医師がこう語りました。

経産省と東京電力がまとめた廃炉計画書は、充分な数の作業員の確保はこれから先の数十年間、保証されていると主張しています。
しかし。潜在的な不足は徐々に明白な事実となりつつあります。
その原因のひとつに、被爆線量の限界に達してしまった『燃え尽きてしまった』作業員の存在があります。

2012年12月末現在、146人の東京電力職員と21人の緊急作業員が、5年間で100ミリシーベルトと決められている被ばく限度の上限を超えて被ばくしてしまったことを、東京電力の資料が明らかにしました。

これまで8名の職員、あるいは作業員が福島第一原発の現場で死亡しました。
このうち2名は津波が襲った当日に死亡しましたが、放射線被ばくによる死亡は正式に報告されてはいません。

《第4回・最終回に続く》
 
http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/#.UYtDCUr0cnV
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これまで何度もその危険性が指摘され、作業員の人々の環境の劣悪さについて警鐘が鳴らされているにもかかわらず、福島第一原発の緊急作業員の人々の多重下請構造の問題は改善されません。
何重もの下請け構造の中、緊急作業員の人々に渡るべき報酬は次々にピンハネされていきます。

ピンハネされた資金はどこへ行くのでしょうか?
『反社会勢力』、そしてゲンパツ政治家、ゲンパツ議員などへの資金の還流は無いのでしょうか?
この問題の解明もまた、海外メディアに頼るしかない、それが『日本の現実』なのでしょうか?

【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第2回》遅すぎる現状把握

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所要時間 約 7分

廃炉技術の未熟、それは日本の原子力業界の思い上がりが原因
「今になってやっと、彼らはどのような問題がそこにあるのかを理解した」

山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム / アメリカNBCニュース 3月5日

クインスが撮影した福島第一原発内部の写真

クインスが撮影した福島第一原発内部の写真


東京の東郊にある千葉工業大学の緑の多いキャンパスの中にある、未来ロボット技術研究センターは福島第一原発の事故現場で使われるロボットの開発拠点になっています。
そこでは学生たち、技術者たちが、ここに居る誰も足を踏み入れたことが無い現場に投入されるべきマシーンの開発に全力を挙げています。

ロボットの部品が置かれた雑然とした空間には、隅の方に簡易ベッドが置かれ仮眠を取っている人、さ音を立てながらカップヌードルをすする人、スマートフォンの上でせわしなく指を動かす人、そしてコンピュータモニターにじっと見入る人の姿がありました。

細身の20歳前後の技術者がゲーム用のコントローラを使い、行方不明になったクインスの改良型のロボットに階段を昇らせたり、狭い空間で方向転換させたり、様々な操作を行っていました。

初代のクインス・ロボットが始めて事故現場に投入されたのは事故発生から3カ月後の6月でしたが、以来10月に東京電力が操作不能に陥るまで、原子炉のうちの一基の詳細な調査を行っていました。
何度も機能を回復させるための試みがなされましたが、ことごとく失敗に終わりました。
研究者たちはいつの日かこの初代クインスを回収し、エレクトロニクス機器が長期間放射線にさらされることによる影響について、解明するための研究材料にすることを考えています。

『桜』と名づけられた新型は、初代と異なり、より狭い空間でも前進可能であり、自ら充電ステーションに戻り、充電を行うことが出来ます。

廃炉・配管 2
しかしながら最も基本的な第一歩を完遂させるべき、技術開発を行う必要があります。
がれきや破片が発する放射線から生身の人間である作業員を守るために、原子炉について放射線が漏れ出している個所を特定し、修理した上で、再び原子炉内を水で満たす能力です。

「それは、戦場を覆い尽くす霧のようなものです。」
アメリカに拠点を置き、原子力発電所内で汚染された水を浄化するため、一時的に設置される装置を供給するクリオン社のジョン・レイモン社長がこう語りました。
「今になってやっと、彼らはどのような問題がそこにあるのかを解るようになったのです。」

これまで東京電力にできたのは、内視鏡に似た遠隔操作ができるカメラを原子炉核の容器の中、ただし圧力容器の外側にまで入れることだけでした。
しかしこうした試みでは、廃炉のためにまずやらなければならない事、溶けだしてしまった核燃料を取り除くため、その状態を確認することまではできませんでした。
現在検討されている装置は、ドーナツ状の原子炉の圧力抑制プール内の水の中を魚のように自由に泳ぎ回り、詳細な図面を作成するロボットです。

このように事故が発生してから必要となる技術開発が著しく遅れてしまった理由は、日本が原子力発電所事故の可能性について、頭からそれを否定していた思い上がった態度にありました。

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原子力発電所事故に対応するための技術開発を行うことは、原子力発電の安全神話を自ら否定することにつながったからでした。
1999年の東海村原発事故の後開発された災害対策ロボットは、研究そのものが打ち切られてられてしまい、本体は科学博物館行きとなり、文字通りお蔵入りになってしまったのでした。

「日本政府はそれ以上金を出そうとしませんでした。国民が気づいてしまう事を恐れたのです。
『ちょっと待って、人間が入ることが出来なくなるような、そんな危険なことが起きる可能性があるの?』」
未来ロボット技術研究センターの小柳栄次副所長がこう語りました。

原発内に一番最初に投入されたのは、アメリカ製の『パックボット』で、事故直後、放射線量が高すぎて人間が入っていけない場所に配置されました。

東京電力にとって緊急を要する最大の課題は、今なお1,500本以上の使用済み核燃料が入ったままになっている、4号機を始めとする核燃料プールからの核燃料の取り出しです。
事故直後、原子炉建屋の爆発によって吹き飛ばされ、この核燃プール内の核燃料が空気中に露出する事態となり、大量の放射性物質を環境中に放出する主原因のひとつとなりました。

核燃料プールがある原子炉建屋の最上階付近は辺りは極めて放射線量が高く、人間が近づけないため、クレーンやその他の重機などを使って、苦心惨憺しながら作業の邪魔になるがれきの撤去などを行わなければなりません。

しかし、一刻も早く解決しなければならない重大な懸念があります。
もう一度巨大地震がこの事故現場を襲ったらどうなるのか、ということです。
東京電力はこの問題について、原子炉建屋の補強工事が完了し、東北太平洋沖地震と同等の巨大地震が襲っても、倒壊の恐れは無いとしています。

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もうひとつ、どうしても解決しなければならない問題は、破壊された1〜3号機の各原子炉の温度を100以下にするために、毎日大量に使われ、汚染されてしまう大量の汚染水の保管です。
汚染水は原子炉建屋の基礎部分を水浸しにしている状態で、いつ海洋中、あるいは地下水の中に入り込むか、予断を許さない危険な状態にあるのです。

〈 第3回につづく 〉

http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/#.UYxHJ0r0cnV

【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第1回》日本に突きつけられた疑問

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所要時間 約 8分

「現在の廃炉作業は竹槍を持っての戦い」
「廃炉作業40年は楽観的に過ぎる」

 

山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム / アメリカNBCニュース 2012年3月5日

4号機フロア構造
開発に6億円をかけた災害対策ロボット『クインス』は、地震と津波によって破壊された福島第一原発の事故現場に投入されて数か月後、入り組んだ現場で罠に落ちるようにして操作不能になってしまいました。
操作不能になってからすでに17カ月が経ちますが、最新技術を駆使したハイテク・ロボットは未だに回収されていません。

『クインス』はある意味、今回の事故を象徴する存在です。

何十年もかかると見られている、気がめいるような福島第一原発の事故収束・廃炉作業、それは膨大な数の人間と、巨額の資金、そして未だ開発途上にある技術無くしては、実現が不可能なのです。

「まるで竹槍を持って、戦いに行くようなものです。」
福島第一原発を運営する東京電力に36年間勤め、現在は日本原子力産業会議の理事長を務める服部拓也氏がこう語りました。

 

その戦いは2011年3月11日にマグニチュード9.0の巨大地震が日本の東北地方を襲った瞬間に始まりました。東京の北方にある福島第一原発を、高さが13メートルの巨大津波が襲いその電源供給を停止させた上、非常用電源設備も破壊し、原子炉の冷却装置を稼働不能に陥らせました。
そして3基の原子炉でメルトダウンが発生、同時に一連の水素爆発が起きました。

事故に続く数週間の間、何百、何千という緊急作業員、自衛隊員、消防隊員などが危機の拡大を防ぐため、懸命の作業を行いました。
しかし彼らの装備は時に間に合わせのものであり、最新とは言い難い上に、威力も不足していました。
ヘリコプターが原子炉の真上から放水を行いましたが、バケツを使っての作業でした。
何キロも離れた場所から電気を引いてくるため、電気技術者たちは現場でおそらくは世界最長となった延長ケーブルの接続と敷設に忙殺されました。

廃炉作業01
チェルノブイリの事故から25年後に発生した世界最悪の原子力事故は、世界最高水準の先端技術力、そして能率的な官僚機構を持つという日本の看板に、大きな疑問を突きつけることになったのです。

2011年12月、日本は国家として福島第一原発内の原子炉について、『冷温停止状態』を宣言しました。

しかし専門家は以下のように指摘します。
福島第一原発内の原子炉を廃炉にし、事故を収束させるための前例のない作業を行うための費用として、最低1,000億ドル(約10兆円)かかる。
そして避難民となった人々対する補償と、福島第一原発の周辺の市町村の除染には4,000億ドル(約40兆円)の費用が掛かると。

昨年11月、東京電力は近隣住民への補償と周辺市町村の除染のための費用が、当初予想した10兆円の倍にまで膨らむ可能性があると公表しました、
その金額に、福島第一原発の事故収束・廃炉のための費用は含まれていません。

事故発生から2年、周辺市町村の除染も無計画のそしりを免れるものではありません。

仕事の多くはこうした作業にはほとんど経験が無い、日本の建設会社の手に渡りました。
福島第一原発の周辺市町村の関係者が、除染作業は予定より遅れていると証言しました。

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作業によって取り除かれた、放射能に汚染された汚泥やがれきの類が、政府による最終的な処分方法が決まらないまま、道端になどに放置されています。

東京に拠点を置く公益社団法人の日本経済研究センターは、福島第一原発周辺の市町村の除染費用だけで6,000億ドル(約60兆円)に達するという試算結果を公表しました。

そして建設から40年が経った福島第一原発の廃炉作業は、他に例を見ない難しいものになります。
東京電力と日本政府が作成したロードマップによれば、廃炉作業はもっとも損傷のひどい施設である、7か所の使用済み核燃料プールから、11,417本の使用済み核燃料棒を取り出すことから始められます。
開始は今年後半の予定です。
そしてメルトダウンした原子炉の核燃料の除去に着手できるようになるのは2021年になってからであり、全体の廃炉作業の完了には30年~40年の歳月を必要とするとしています。

東京電力、日本政府、双方の関係者共に進行状況はほぼ計画通りであり、安倍首相率いる自民党政府はスケジュールをさらに早める様望んでいると語りました。

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しかし複数の専門家は、そのようなスケジュールは現実離れしていると批判しました。
「そんなスケジュールは夢物語です。」
昨年、一般社団法人日本原子力技術協会の最高顧問を退任する直前、40年というスケジュールについて石川道夫氏が、こう語った上で、さらに数十年の歳月が必要だと指摘しました。

ロイター通信社は最初の包括的な報道記事を作成するため、2012年2月から3回福島第一原発の現地を訪れ、数十人の専門家、政府関係者、記述者、労働者と産業界の役員などと面談を繰り返しました。
インタビューの中で、彼らの多くが以下の深刻な懸念について語りました。

すなわち、必要な技術の欠如、現場作業員が不足する危険性、そしてただでさえ莫大な負債を抱える日本政府にのしかかる、膨大な額の費用について。

 

〈 第2回につづく 〉

http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/
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私たちは怒らなければなりません。

福島第一原発周辺の市町村の除染費用だけで、60兆円かかる。
これに福島第一原発の廃炉の費用を、ガンダーセン氏の予測に基づき40兆円とすると( http://kobajun.biz/?p=5248 )、福島第一原発の事故収束・廃炉にかかる費用は総額100兆円になる計算です。

それを負担させられるのは結局国民である私たちです。
日本の人口を単純に1億人とし、100兆を1億で割ると100万円。
国民1人当たりなんと100万円、4人家族なら400万円負担「させられる」ことになります。

ゲンパツ政治家、ゲンパツ官僚と電力会社を始めとする日本の原子力ムラの『ズブズブ』を見逃して来た、その責任がある私たちが払わなければならないツケがこの金額なのです。

トルコ原子力協定
そして今、同じく『ズブズブ』の首相が、あろう事か世界に向け「日本の原子力発電技術は、信頼性が高く、非常に優れている」と胸を張っています。

トルコもまた、日本同様世界の中の『地震大国』です。
『優れた日本の原子力発電技術』によって建設されたトルコの原子力発電所が、将来もし事故を起こしたら、私たち日本人はそのツケを払うよう求められるのではないでしょうか?

福島の100万円(×あなたの家族数)に加え、そのツケも支払うおつもりはおありですか?

隣国への配慮も、思慮も足りない、靖国参拝国会議員団

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所要時間 約 7分

【 誰がために鐘は鳴る?! 】
「これ以上悪いタイミングは無かった…」

Yasu01
エコノミスト 4月27日

4月末に予定されていた尹炳世韓国外相と日本の岸外相との会談は、両国の緊密な関係について改めて確認するものになるはずでした。
ところが日本の麻生副首相兼財務大臣が4月21日に東京の靖国神社に参拝し、韓国が尹外相の訪日を取りやめ、会談はキャンセルされました。

神道の聖地である靖国神社には240万人の第二次世界大戦(太平洋戦争)の日本人犠牲者とともに、14名のA級戦犯が合祀されています。

このため日本の隣国にとって、靖国神社に詣でるという事は、そのまま戦争責任に対する反省の欠如に直結するものとなっています。

麻生副首相が参拝をした同じ日、日本の安倍首相は水から赴く代わりに祭壇を飾るための供物を捧げました。
さらに週末、現職の2人の閣僚が参拝しました。

しかし神社関係者さえ驚いたのは、例年であれば100名程度の規模になる国会議員による参拝が、今年は168人という規模で行われたことでした。
4月23日、彼らはまるで軍列を組むようにして靖国神社にやって来ました。
その様子を見て、中国も韓国同様、非難の列に加わりました。

Yasu02
そのことはこの問題に関する他国の感情に対する配慮の無さに加え、これから日本が孤立化に向かおうとしていることを暗示しているかのようでした。

これ以上悪いタイミングは無かったかもしれません。

日本は中国との間で5つの小島からなる尖閣諸島、中国名ダイユー諸島をめぐって、本格な紛争に発展しかねない緊張した駆け引きを毎日行っています。
アメリカの観測によれば、中国との間に領土問題を抱え、北朝鮮の脅威に直面する日本は、何より良好な日韓関係を構築する必要があるはずでした。

日本政府の当局者は、麻生氏の参拝は個人的なものであると語りました。

しかし非公式ながら中国側の見解としては、日本の首相、官房長官と外務相が靖国への参拝を行わない限り、関係をこれ以上悪化させるつもりは無いはずだと、上智大学の中野晃一準教授が語りました。
2001年から2006年にかけ、当時の小泉純一郎首相が毎年参拝を行いましたが、それ以降は靖国に参拝した首相はいません。
しかし副首相兼財務相の麻生氏の参拝は、こうした両国の黙契をもう少しで破綻させるものでした。

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かつての小泉首相が率いていた自民党による政権を引き継いだ安倍首相は、就任当初韓国、そして中国との関係修復に動きました。
しかし一部の識者は、安倍氏が率いる自民党がその本性を露わにし始めたことに、危惧の念を抱いています。

株価の急上昇と世論調査による支持率の上昇により、自民党はその国家主義的な行き方を思う存分進めようと考えている可能性があります。
安倍首相が自分の代わりに麻生副首相を靖国に参拝させた、あるいは黙認したという事実は、安倍政権の傲慢さを端的に表している、かつて外務大臣をつとめた民主党の岡田克也氏がそう指摘しました。

事態をさらに悪化させたのは、安倍首相が議会の委員会の席上、かつての政権が行った隣国への謝罪を取り消そうという意思を明らかにしたことでした。

彼が行った諸問題の定義づけは、まさに屁理屈でした。

しかし靖国参拝については、4月よりも8月15日、日本人にとって思い入れの深い敗戦記念日の方が重要な意味を持ちます。

ある自民党の年配の議員は、麻生氏の参拝は、安倍氏があたかも靖国からは距離を置いているということを、政治的に装うことが目的であったと語りました。
彼によれば、そうしなければ自民党内の右翼勢力が、安倍氏は外国の圧力に屈して節を曲げたとして、一斉に反発する恐れがあったと語りました。

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麻生氏がかつて提案した、靖国神社の問題性に関する緩和策に期待する人々もいます。
麻生氏は首相だった2006年、問題の根本的解決を図るため、合祀されているA級戦犯をどこかほかの場所に祀る考えを示しました。

しかし当面は、改めて損なわれてしまった外交関係の方に目が行くことでしょう。

※『誰がために鐘は鳴る』(たがためにかねはなる、For Whom the Bell Tolls)は、スペイン内戦を舞台としたアーネスト・ヘミングウェイの長編小説。
ファシスト党の残酷さを語る一方、内部抗争に明け暮れ自滅していく自由主義勢力の様子を描いている。

http://www.economist.com/news/asia/21576724-visit-controversial-yasukuni-shrine-upsets-neighbours-whom-bell-tolls
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【星の金貨】を継続する中で、自民党が目指す社会とは何かという事を考えざるを得ませんでした。

今思っていることは、日本を垂直統合社会にしたいのだろう、という事です。

電力ムラ、原子力ムラ、マスコミムラ、そんなものを作って自分たち自民党議員がそれぞれの村長(ムラオサ)に収まり、この国を思い通りに運営する。
その方が『効率的な国家運営ができる』そう考えているのではないでしょうか?

彼らにとってまず大切なのは、ムラの存立であり、国家や国民の存在は二の次でしかありません。

そう考えれば、原発問題も、TPPも、憲法改正も、その根っこはすべて同じだと気づきます。

そしてそれを束ねた頂点に立つものが、自民党であり、靖国神社であるのでしょう。

そんな彼らにとって何より目障りなのは、市民が自発的に、『勝手に』横につながっていくことです。

国土が狭く、資源も少なく、人口ばかりが多いこの国をどう食べさせていくか。
戦前日本は、アジアを植民地化することにその答えを求め、自滅しました。

今度は一億総企業化し、効率的に人間という資源を『使って』国を富ませようとしている、そう考えられます。

「旨い物を食わせてやる、いい服も着れるようにしてやる、快適な家にも住ませてやる。その代り人権や自由を多少制限されることぐらいは我慢しろ。」

もちろん、村長たちだけには様々な制約はありません。

私たち人間は、物質的豊かさを極めるためにこの世に生を享けたのでしょうか?

時はまさに風薫る5月、自然がその美しさを輝かせる季節になりました。

答えを出さなければならないのは、私たち自身です。

【 福島第一原発の事故収束、業界利害を優先し、危険な状況 】〈後篇〉

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所要時間 約 9分

東京電力は汚染水発生の根本対策の実施を拒否
経産省は汚染水の問題の存在自体を無視

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月29日

東京電力・広瀬
しかし福島第一原発の事故の収束について深刻な問題を抱えているのは、東京電力だけではないのです。

福島第一原発の事故以前は国の監査機関というよりは、明らかに原子力業界の警備員のような役割を徹底して演じていたのが日本の原子力行政機関です。
事故後、原子力安全・保安院を改変した原子力規制委員会は、福島第一原発の3,000人の作業員の管理監督を行うため、9名の職員を現地に派遣しています。

そして福島第一原発の事故収束作業を共に管理監督する、別の政府の委員会のメンバーは業界内部の人間、原子炉メーカーの日立や東芝の社員、そして原子力業界のずさんな経営を許してきた経済産業省などの職員により構成されているのです。

こうした有り様について、批判的立場の人々はこう述べています。
今回、福島第一原発で深刻さを増す汚染水の問題は、福島第一原発の事故が起きて尚、原子力発電の安全管理の問題を業界任せにしてきた、その当然の報いである。
2011年後半、東京電力と日本政府が福島第一原発の全原子炉の廃炉を決定した時点で、莫大な量の汚染水の問題がすでに明らかとなっていました。

福島第一原発は付近の山地の地下水が太平洋の流れ込む、その水路の上に位置しています。

CNN02
しかし東京電力の首脳部も、日本政府の担当部局もこの問題を重視せず、放射性物質を取り除いた上で廃棄するまで、安全に保管できるかのように装ってきました。

これまで政府による事故収束作業に協力してきた専門家は、外部の専門家が関わっていれば、この問題の深刻化を予測できたかもしれないと語りました。

しかし東京電力も日本政府も、収束作業・廃炉作業により精通した外部の専門家や専門企業を参加させるという提案を、厳しくはねつけてきました。
飽くまでも日本の原子力発電業界内部の共同謀議によって、この問題にあたろうとしてきたのです。

東京電力はまた、原子炉と原子炉建屋に地下水が入り込むのを防ぐため、地下に18メートルの防水壁を建設する提案も退けました。

そして福島第一原発の廃炉計画にたずさわった専門家や監視機関によれば、経済産業省は汚染水の問題が存在すること自体、取り上げようとはしなかったのです。

代わりに東京電力がやったことは、急場の対策としてビニールと粘土で覆った地下貯蔵施設を作り、そこに汚染水を収納することでした。
結局、この施設からは汚染水が漏れ出す結果となりました。

そして東京電力の事故収束・廃炉作業を監視する委員会に、原子力規制委員会が正式なメンバーとして加わることが認められたのは、この事故が起きてからの事だったのです。

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しかし最大の問題は別にある、専門家がそう指摘しました。
すなわち、東京電力自身、そして換気委員会のメンバーのほとんどが、汚染水からストロンチウムを含む62種類の放射性物質を取り除くことが出来る、強力な汚染水浄化装置がいったん稼働すれば、最終的には貯まり続けた汚染水を海に放出できるようになる、そう考えていることです。

しかし多くの専門家がこの浄化装置の稼働は容易ではないと考えていましたが、結果はその予想通りになり、浄化装置は未だに稼働できずにいます。
しかし仮に稼働できた場合、今度は一般市民はトリチウム(三重水素)の問題と向き合わされることになります。
トリチウムは比較的弱いベータ線を発しながら崩壊する放射性同位元素ですが、水から取り除くことはできないという特性を持っています。

トリチウムは体内に摂取した場合にのみ人間にとって有害ですが、正常に機能している原子力発電所から環境中に常時放出されています。
福島第一原発の場合は正常に機能している原子力発電所の100倍のトリチウムが環境中に放出されている、東京電力でさえその事実を認めています。

「私たちは破壊された原子炉と使用済み核燃料の問題に集中するあまり、結果的に汚染水の問題を軽視してしまったのです。」
原子力委員会の鈴木達治郎委員長代理がこう語りました。
東京電力が当初の廃炉計画を作成する際、協力したのが原子力委員会でした。
「原子力発電業界以外の専門家であれば、この問題の発生をいち早く予見できたのかもしれません。」

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東京電力自身は汚染水の増大を防ぐためには、破壊された原子炉建屋の亀裂をふさぐしか方法は無いと主張し、増え続ける地下水の問題に対する判断と処理を誤ったという批判を否定しました。
何十センチもの深さの非常に毒性の高い放射能汚染水の中に入り、放射線量が危険な程高い原子炉建屋の中に入ってそうした作業を行える会社など、世界中のどこにも無いと主張しています。

「福島第一原発を運営してきたのは私たちです。福島第一原発の事は私たちが一番よく知っています。」
東京電力の広報担当、小野氏がこう語り、目に涙を湛えながら次のように付け加えました。
「こうした混乱を収束させ、社会の信頼を回復させるためには、これまで私たちがとった方法以外に途は無いのです。」

しかし今のところ、そのゴールははるか遠くにしかないように見えます。

トリチウムを含む『浄化済み』の汚染水を海洋に投棄することについては、強い抗議が寄せられています。
2011年、東京電力は公にアナウンスする事無く、福島第一原発の汚染水の海洋投棄を行い、大きな批判を浴びました。
こうした事態を受け、安倍首相は個人的見解だと断った上で、
「安全が確認されないうちに、汚染水を海洋投棄することはしない。」
とコメントしました。

事態の推移に関係なく、汚染水の増加は途切れることなく続いています。

汚染水流出
「汚染水を海洋に投棄するためには、事前に了解を取り付けることが必要だという事に、どうして東京電力は気づくことが出来なかったのでしょうか?」
福島第一原発の事故収束・廃炉作業について、これを専門に行う会社の設立を提案した、東京大学の公共政策を専門とする諸葛宗雄教授が語りました。
「これらすべての事実が、福島第一原発の事故収束・廃炉作業は東京電力にとって荷が重すぎるという事を証明しているのです。」

《 完 》


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文中、東京電力の広報担当者が「福島第一原発を運営してきたのは私たちです。福島第一原発の事は私たちが一番よく知っています。」と語るくだりがありますが、果たしてそうでしょうか?

『群盲像を撫ず』ということわざがあります。
出しい知識を持たない人間たちがいくら集まって物事を検証したところで、正しい結論が出るはずが無い、といった意味で使われます。
原子力発電所は、核に関する完璧な知識が無くても建設・運営はできます。

そして人類は未だ、核分裂、放射性物質などについてすべてを解明した訳ではありません。
核に関する知識が実用化されてから、たかだか100年にもなっていません。
プルトニウム239の半減期は2万4,000年だそうですが、それを実地に検証した人類は存在しないのです。

福島第一原発では、不完全な知識と経験しか持たない人間が、何より安全と環境保全を重視するのではなく、東京電力がこれ以上不利にならないよう、日本の原子力産業界の利害を損なわないように作業しているわけです。

そうした態度に対し、自然と科学は次々と危機的事態を持って報いている、それが現在の福島第一原発だと思います。

【 福島第一原発の事故収束、業界利害を優先し、危険な状況 】〈前篇〉

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所要時間 約 8分

深刻な危機、莫大な量、福島第一原発の放射能汚染水

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月29日

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3基の原子炉がメルトダウンし、世界史上2番目に最悪の原発事故を引き起こした福島第一原発が、今新たな深刻な問題に直面しています。
高濃度の放射能を帯びた汚染水を、安全に貯蔵することが難しくなっているのです。

毎分約280リットルの地下水が、事故により破壊された原子炉建屋の下に流れ込んでいます。
原子炉を冷却するために送り込まれる以前、この地下水は建屋の地下に流れ込むだけで高濃度に汚染されてしまっているのです。
かつては芝生や駐車場だった約17ヘクタールの土地に立ち並ぶ、灰色と銀色に塗られた巨大な貯蔵タンクの中にこれらの汚染水を安全に貯蔵し続けることに、今、福島第一原発の汚染水の管理を担当する職員や労働者が大変な思いをしています。
これら貯蔵タンクは、オリンピックプール112個分の汚染水の収容能力を持っています。

しかし、それらをもってしても原発内のストロンチウムを含む汚染水をすべて収容するのに充分ではありません。
汚染水の総量について東京電力と当時の監督官庁である原子力安全・保安院が、2011年の事故の規模からその規模を想定し、その設備を準備しましたが、結局はその場しのぎの対策に過ぎなかったという批判があります。

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しかし汚染水の圧倒的とも言えるペースでの増加に直面し、東京電力は数百基の貯蔵タンクを増設するスペースを確保するため、福島第一原発の敷地の南端のちいさな小さな林の木をすべて切り倒すことを決定しました。
最近になって収容しきれなくなった汚染水を一部貯めておく目的で作られた地下貯蔵施設から汚染水が漏れ出していることが判明し、貯蔵タンクの増設は喫緊の課題となりました。

「汚染水は分刻みで増え続けています、私たちが食事をしている間も、寝ている間にも。」
東京電力・広報部長の小野正行氏がこう説明しました。
「増え続ける汚染水と、いつも競争しているようなものです。しかし少しでも汚染水に先回りして対処できるよう、私たちは最善を尽くしています。」

東京電力は汚染水の問題について、あらかじめ対処できるよう努力を続けてはいますが、汚染水を収容するための貯蔵タンクの不足は、自身『緊急事態』と呼ばざるを得ない状況に追い込まれています。
莫大な量の汚染水が増え続ける状況は、海辺に位置する福島第一原発にとっては、将来太平洋にこの汚染水が流れ込む危険性が存在することを意味します。

東京電力がこうした苦境に追い込まれていることを際立たせたのが、東京電力側の褒められない一連の誤作業によるトラブルでした。
この中には29時間電源の供給が絶たれ、最も重要な設備には含まれないとはいえ、使用済み核燃料プールでの冷却が出来なくなってしまった事故が含まれます。

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巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、3基の原子炉でメルトダウンが発生してから2年が経ちましたが、福島第一原発は今なお、何かあれば最初の事故と同等、あるいはそれ以上の事故を引き起こしかねない、きわめて脆い状況に置かれたままなのです。

事故の後、現場にした職員と作業員の不退転の決意と必死の作業により、メルトダウンした各原子炉は現在は比較的安定した状態にあります。
誰もが絶望的な思いでいた事故を直後のあの数カ月間と比べ、福島第一原発の危険性は小さくなった、それは確かに言えることです。

しかし多くの専門家が、建材の福島第一原発の安全対策設備はそのほとんどが急場の間に合わせのものであり、災害などに対してはきわめて脆い状態にある事を警告しています。

破壊された原子炉の炉心に対利用の水を送りこんでいる配管類やフィルターの類は、まるでパイプの見本のように種々雑多なものが使われ、それが発電所の地面の上を露出したまま絡み合い、曲がりくねった状態で約4キロの長さに渡って伸びています。

そして破壊された4号機原子炉建屋の5階にある使用済み核燃料プールの中には、未だに大量の核燃料が入ったままになってより、現在東京電力がより安全な場所に移し替える取り組みを続けています。

福島第一原発の事故の後、日本では原子力安全・保安院が解体・再編され、新たに原子力規制委員会が発足しました。委員長に就任したのは、長年に渡り日本で原子力発電を推進してきた一人である、田中俊一氏です。
田中委員長はインタビューの中で、福島第一原発の現状について
「もう一度巨大事故を起こしかねない、深刻な状況にある。」
と深刻な懸念を表明しました。

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東京電力に福島第一原発の事故の収束作業を一任してしまったことで、日本の政治指導者たちは、事故以前と変わらない内部関係者があらゆるものを支配する状況を再現する道を開いてしまった、そう指摘する政府関係者、そして外部アドバイザーが今、増えつつあります。

チェルノブイリ以来最悪となった原子力発電所事故の収束作業がを決めて困難な字義用であることを理解して上で、多くの科学者は東京電力が首尾一貫した作業方針も立てずに、問題が発生するたびに右往左往する有り様を見て、同社に本当に事故を収束させられる能力があるのかどうか、強い懸念を抱いています。

「明らかに東京電力はその日その日を何とか終わらせるだけで手いっぱいの状態で、あす以降のことなどは考える余裕も無いといった状況にあります。まして、来年のことなど見当もつかない状態です。」
事故収束の道筋について検討した委員会のメンバーであった原子力発電の専門家である、井上正氏がこう語りました。

しかし福島第一原発の事故の収束について深刻な問題を抱えているのは、東京電力だけではないのです。
〈後編につづく〉


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福島第一原発の事故の真相究明に、ニューヨークタイムズが果たしてきた役割は小さいものではありません。
アメリカの原子力発電の専門家であるアーニー・ガンダーセン氏の指摘にいち早く着目し、そのいちいちを独自の取材によって検証し、問題提起を行ってきました。

4号機使用済み核燃料プールの問題然り、積み上がる核廃棄物の問題然り、そしてこの汚染水の問題然りです。
いずれも日本国内の報道に先駆けて報道を行い、その正しさは後に証明されています。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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