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安倍首相が慰安婦問題を解決しようとしないのはなぜなのか?

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所要時間 約 9分

大統領トランプはアメリカ・ブランドの信用をかつてないほどに低下させ、世界のリーダーとしての地位は最低水準

トランプに最も近い安倍首相にも向けられる冷たい視線、従軍慰安婦問題についての謝罪を拒否して一層厳しいものに

安倍首相がヒューマンな感情に満ちた誠実な謝罪をすることなど、誰も期待していない

戦争犠牲者に対する人間的な思いやりの欠如により、安倍首相は国際社会における日本の評価を低下させている

ジェフ・キングストン / ワシントンポスト 2018年1月22日

 

ドナルド・トランプのアメリカ大統領としての務めぶりは、アメリカ・ブランドの信用をかつてないほどに低下させ、もはや世界のリーダーとしての地位も最低水準に落ち込みました。
一方で日本の首相である安倍普三氏は、そのトランプに最も近い先進国首脳であるというというだけでも世界から冷たい目で見られていますが、つい最近従軍慰安婦問題について韓国に対する謝罪を改めて拒否したことにより、向けられる視線はなお厳しいものになりました。
1930年代から1945年まで数万人の女性たちが日本軍によって売春婦として扱われ、悲惨な体験を強いられたとされるのが従軍慰安婦問題です 。

 

日韓関係については「その場所にいたことがある、それをしたことも認める」という側面があります。
互いとって敵でもあり味方でもあるという日韓関係は、両国の過去の時歴について相互に受け入れ可能な合意に達したことは一度もありません。
今日、真の和解は韓国の民主化が進むとともにさらに難しくなってきています。

1990年代まで韓国政府は1910年から1945年まで続いた日本の植民地支配のもとで被った屈辱的待遇や虐待に対する『暗黙の補償』として受け取ってきた経済援助の方を重要視し、日本政府とは飽くまで良好な関係を維持しようとしてきました。
そのため歴史的な論争を避けてきたのです。
しかし自由に選出された政府の出現は国民の中に根強く残ってきた憤りを表に噴出させ、韓国の人々はこれまで黙って耐えてきた問題の存在を認めるよう要求するようになったのです。
こうして韓国の政治家は、自らの政治的利益のために未解決のままくすぶり続けてきた問題に向き合うようになったのです。

 

日本側の事情も変わりました。
不都合な部分は曖昧にしたまま自国の歴史が無傷のものであるとの見解を捧げ持つ安倍首相のような修正主義者の登場は、日本政府と韓国政府との関係を複雑なものにしています。
日本の保守派も歴史という題材を使って自分たちの支持層を煽り立て、1931年から1945年まで続いた大日本帝國によるアジア侵略と植民地支配を正当化し、太平洋戦争を西欧列強の帝国主義からアジアを解放した戦争として定義し直そうとしています。
少なくともアジアの1,500万人の戦争犠牲者の霊は、この自分たちにだけあまりにも都合の良い解釈の変更に草葉の陰で怒っていることでしょう。

2015年末アメリカ政府からの圧力を受け、日米韓の3カ国の同盟関係を強化できるように歴史問題を克服するため、日本政府と韓国政府間で慰安婦問題を解決するための合意が成立しました。
合意について「最終的かつ不可逆的」との宣言が行われましたが、この外交的な欺瞞に対しては韓国国民から圧倒的に拒否感情を突きつけられただけでなく、戦争被害者へのいたわりもなく、破局に至ることが運命づけられていました。

 

日本政府は従軍慰安婦の生存者のために約900万ドルを支払うことを約束しました。
当時の生存者は46人いましたが、韓国政府はこれ以上外交問題として取り上げないことに同意しました。
さらに韓国政府は、ソウル在日本大使館と向かい合わせに市民団体が建てた慰安婦像の撤去を確実に実行することにも同意しました。
しかしこの彫像の移転は失敗し、釜山の日本領事館に隣接して設置された慰安婦像と同様、日本側を激怒させました。
この資金提供によって日本側がどのような見返りを得られるのか明確な規定はありませんが、韓国政府からの見返りはあるはずだとの見通しのもと、日本政府は資金調達を進めています。

しかし結ばれた協定は死亡した元慰安婦が補償対象に含まれず、合法性に欠けています。
さらに安倍首相は当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領に電話をしただけで公式の謝罪はしませんでした。
安倍首相がウィリー・ブラント元西ドイツ首相のようなヒューマンな感情に満ちた謝罪をすることなど期待もしていませんでしたし、膝を折って謝罪するとも思っていませんでしたが、日本の植民地主義の最も苦痛に満ちた負の遺産については、遺憾の意を私的な会話の中で示すよりもはるかに壮大な規模のジェスチャーが必要なはずです。

 

2017年5月の大統領選挙で韓国大統領に選出されたムン・ジェイン氏は就任直後、この協定の見直しを求めました。
2017年12月27日、韓国政府が新たに任命した委員会は次のように結論づけました。
「戦争中の女性の人権に関する国際基準はすでに確立されており、そこでは被害者となった女性の救済を何より優先すべきであるとされている。しかし今回の日韓両政府の交渉過程にはその原則は十分反映されていない。」
確かに歴史的にみて極めて不当な扱いを受けた人びとの救済に真摯に取り組むという努力は見られず、秘密のミサイルの取引のように、交渉は国民の目の届かない場所で進められました。。
正確に言えば、これがムン・ジェイン大統領が交渉プロセスと合意内容の両方に欠陥があると繰り返し不満を述べている理由です。

2018年1月4日、元慰安婦と会ったムン・ジェイン大統領は前任の朴政権の『裏切り』について謝罪しました。

日本を含む世界中の多くの人々が慰安婦たちの過酷な運命に同情するムン・ジェイン大統領の見解に同意していますが、もっとも許せないし感じているのは、欺かれたり強要されたりして軍の売春宿で働かされた女性たちが耐え忍んでいた悲惨な試練について、彼女たちの沈黙をカネで買おうとしたその姿勢です。

 

2018年の初頭、初め、ムン大統領は締結された協定を尊重することに同意したが、安倍首相に対しては心からの謝罪を行う等、問題の解決に向けもっと努力するよう促しました。
しかし 1月12日、安倍首相はこれを拒否し、東京は協定は法的にすでに成立したものだという立場をとっています。

 

日本政府は交渉プロセスを公の場ですべて明らかにしてしまったことは、協定そのものを弱体化させるものだとしてムン・ジェイン大統領への怒りを露わにしました。
日韓両政府が再び反目し合い、互いが互いを批判する形に戻ってしまったことは別に驚くべきことではありません。

しかし安倍首相は政治屋から政治家へと脱皮できる機会を自ら逃しているようなものです。
安部首相は韓国と協力して、慰安婦問題についてすべてを公にし、何より被害者の救済を優先し、その家族と支援者たちの擁護者のニーズに応える必要があります。

国際社会は戦争で女性だけが抱えなければならない苦しみがこれまで無視されてきたことを、これまでになく切実に理解するようになっています。
そして被害者にされた女性たちのトラウマに対処するための新しい規範を確立しつつあります。

 

現在日本は自分たちとすべての韓国人が無理なく受け入れることが出来る正しい歴史認識のもと、世界中の国々が戦争犯罪について適切な対応を促すことが出来る機会を得ています。

しかし残念なことに日韓の同盟関係にとって最も重要なはずの信頼関係は棚上げにされたまま、安倍首相は戦争犠牲者に対する人間的な思いやりの欠如によって日本に対する国際社会の評価を低下させ続けています。

 

 

※ジェフ・キングストンは、テンプル大学日本校のアジア研究部門の責任者です。

https://www.washingtonpost.com/news/democracy-post/wp/2018/01/22/japans-prime-minister-could-solve-the-comfort-women-issue-once-and-for-all-so-why-wont-he/?utm_term=.bfb40b404378

 

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