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【 巨額の開発援助 : 日本と中国の援助競争に隠される本音 】

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中国の『一帯一路』政策に対抗する日本の『自由で開かれたインド太平洋戦略』

人権問題や相手国民の福利には無関心な中国の自国利益第一主義

 

ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ 2018年2月22日

日本の開発援助(ODA)のネット金額は国民総所得の0.2%を占め、世界で4番目に大きな金額の援助国であり、アジア最大の援助国としてその額は年間約104億ドル(約85億円)に達します。

しかし日本政府は今、その分野において中国と競合する関係にあることを認識せざるを得なくなりました。

中国はどの国を援助するかについて例えば人道的配慮に基づく選択などは行わず、援助に向けることが出来る金額もより大きなものになっています。

日本政府がODA政策を再構築することを決定した背景には、中国がアジア太平洋地域で経済力を背景に積極的に影響力を強めようとしていることがあります。

北京は開発途上国に多額の資金援助を行う『一帯一路(Belt and Road Initiative - BRI)』政策を推進しています。

中国の習近平総書記が最初に発表した際に概説したように、一帯一路は最終的に60カ国以上に及ぶ輸送・貿易ネットワークの中心に中国を置こうとするものです。

 

アジア太平洋地域における北京の経済的、政治的影響力の増大に伴い、日本は米国、オーストラリア、インドと新たな関係を築くべく「日米豪印のインド太平洋に関する協議」と呼ばれる非公式のグループを形成し、台頭する中国への対抗勢力を築こうとしています。

 

そして増大を続ける中国の影響力を行って範囲内に抑え込むためには、周辺の小国に対してさらに強い圧力をかけるのは早ければ早い方が良いと多くの関係者が指摘しています。

▽ 援助予算の目的

 

「日本を始めとする各国のODA予算と比べ、中国は自国の戦略的な目的に特化した形で援助予算を使っています。」

福井県立大学の国際関係教授の島田洋一氏がこう語りました。
「日本は伝統的に、国の経済援助は世界の未開発地域の人々が生活水準を向上させるための支援プログラムとして使われるべきだと考えてきました。」

ドイチェ・ヴェレの取材に島田教授はこう答えました。

日本の外務省によると、日本の政府開発援助の主要目標は貧困の撲滅、『飢餓をゼロに』する取組の確実な実行、健康、教育、男女平等の実現の促進、上下水道、衛生設備、クリーンエネルギー等のインフラ整備、そして雇用機会の提供です。

 

対照的に北京の対外援助は単一の目的しか持っていないと島田教授は主張します。

中国企業のための雇用を創出し、「中国のためだけの地球規模の野心」を推進することです。

島田教授は中国が国家機密だとして、実際の対外援助に関する統計を一切公表していない点を指摘しました

中国は2014年までの15年間に3,543億ドルを支出しましたが、同時期に米国が提供した3,946億ドルの経済援助にほぼ肩を並べるものだと推計しています。

 

このデータは年間ベースで中国が実際には米国よりも多額の政府開発援助を行っている可能性を示唆するものです。

中国は140カ国で4,300以上のプロジェクトを財政的に支援しているとの推計があります。

中国はロシアの極東地域の天然資源の入手を渇望、そしてアンゴラは有数の天然資源の豊かな国であり、アフリカ進出の足場としても有望です。

一方、パキスタンは中国の最大のライバルと目されるインドの宿敵とも言うべき存在であり、中国と同様インドとの間で国境線を巡って争いが続いています。

島田教授はこれらの事実と最大規模の援助は偶然の一致ではないと語りました。

▽ 機先を制する

 

そして中国政府は援助を受ける国々の事情に漬け込むという態度と無縁ではないと島田教授は主張しました。

 

スリランカの場合は中国政府から融資を受けたものの期限内に返済することができなかったため、スリランカの戦略的港を99年間租借することで事実上返済させました。

結局中国政府はこの島全体を戦略拠点の1つに変えてしまいましたが、この場所について島田教授は「中国政府が真珠の首飾り政策と呼んでいる」地域に含まれている点を指摘しました。

 

テンプル大学の日本キャンパスのアジア研究担当ディレクター、ジェフ・キングストン教授も、中国が強力な経済力使って日本を不利な立場追い込もうとしていることを認めました。

「これまで日本と長年良好な関係があった国々で、見返りを伴う経済支援を拡大しようとしています。」

ミャンマーは少数民族のロヒンギャに対する残虐行為のニュースが国際社会で問題になり始めましたが、同国はインフラ整備や開発プロジェクト、保健衛生制度の改良について日本が長く支援してきた国の代表例のひとつだとキングストン教授は述べています。
「日本にとってロヒンギャの問題はミャンマー政府に対する援助を非常に微妙なものにしています。一方の中国は人権問題に配慮するつもりなどは無いため、日本が引いた分、かわって踏み込むことになったのです。

ラオス、カンボジア、タイ、インドネシアなど、東南アジア諸国でも同様状況になっているとキングストン教授が述べました。

「これらの援助資金は無償ではないため厳密に言えば援助ではありませんが、被援助国はそれを何と呼ぼうと一向に気にしていません。」

「そしてアフリカにおける中国企業の各種の事業への入札価額は常識を下回る低さで、財務的には損失を被るものですが、中国が現地に根を張ること、そして中国の存在感を高めることが真の目的なのです。」

▽ 隠された動機

 

キングストン教授は、いくつか明確な違いはあるもの日本と中国両政府はODA予算の使用方法に「隠された動機」を持っていると見るべきだとかたっています。

「日本には開発援助資金の使途に関する原則はまだ堅持しており、仮に日本企業が契約を獲得するのに役立ったとしても、それはボーナスだと考えています。」

一方、中国は被援助国に対して質的に貢献するという点についてはほとんど考慮に入れておらず、とにかく中国企業にとって有利な状況を作りだすこと、そして中国政府の戦略的利益を拡大することが動機になっています。」
島田教授は日本が同様の戦術を採用し、同盟諸国を優先する援助政策に転換するには時間がかかると考えています。

「率直に言えば日本にできることは限られています。したがって日本はアジア太平洋地域の諸国の支援に的を絞って取り組むべきです。」

ただし北朝鮮との貿易関係を持っている国、そして日本よりも中国との関係を重視している国々に対しては、直ちにODAの提供をやめるべきです。」

島田教授はこう語りました。

 

http://www.dw.com/en/can-japan-compete-with-china-over-development-aid/a-42694035

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給与所得者の方ならその多くが税金や保険料などの『天引き』金額の多さに、ため息をついた経験をお持ちなのではないでしょうか?

自営の方でも最近、年金や保険料の『取り立て』がやけに厳しくなった、そうお感じになられているかと思います。

そのようにして国庫に入ったお金は、本当に適切に使われているのでしょうか?

富裕な国である以上、人道的配慮に基づく支援というのはあってしかるべきとは思いますが、中国と競争してまで支援を膨らませなければならない理由とは何でしょうか?

いざ企業や産業が進出する際、許認可や受注で他国より有利な扱いを受けるためという事もあるでしょう。

しかし中国というこれまでとは全く性格の異なるプレーヤーが『割り込んできた』のであれば、戦略戦術を徹底して見直す必要があると思います。

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