ホーム » エッセイ » 福島第一原発事故発生から9年、日本の隠蔽は続いている《1》
史上最も深刻な人為的災害、それが福島第一・3基の原子炉のメルトダウン
世界中の人々と報道機関に対し、一貫して意図的に誤解を与えてきた原子力産業
福島第一で起きた事実を「再構成」し、真実を9年にわたり隠蔽してきた日本
マギー・ガンダーセン / フェアウィンズ 2020年3月10日
福島第一原子力発電所の6基の原子炉は、太平洋でマグニチュード9.0の地震が午後2時に発生した9年前、深刻な被害を受けました。
2011年3月11日、原子炉が破壊され、安全システムが水没した結果、3基の原子炉がメルトダウンしました。
フェアウィンズは福島第一原発で原子炉のメルトダウンが発生して9年目を迎えたのを機に、日本政府、東京電力(東京電力)、国際原子力機関(IAEA)、および世界の原子力産業が福島の悲劇の隠蔽をずっと続けてきたその方法を、改めて検証することにしました。
原子力関連企業や政府関係者や政府機関は、福島第一原発事故の本当の結果について、世界各国の報道機関、日本国民、そして世界中の人々に対し、一貫して意図的に誤解を与えてきました。
日本政府、原子力産業、およびその規制当局は、福島第一で起きた事実を「再構成」し、それによって福島の本当の情報を9年にわたり統制してきました。
「フレーミング」とは自分たちに都合の良い物語を描写し、印象をコントロールするために便利な言葉を選択することです。
ジョージ・レイコフと共同執筆者は、こうして選ばれた単語によって話の骨格を作り上げ人々が問題をどのように理解するか、それをどうやってコントロールするかを説明しています。
その内容についてもっと詳しく知りたい方は、
「象のことを考えてはいけない!:自分の価値を知り、議論を組み立てる(“Don't Think of an Elephant!: Know Your Values and Frame the Debate”.)」というタイトルの彼らの著作を読んでみると良いかもしれません。
▽ 福島第一原発のメルトダウンを『事故』というべきではない!
『事故(Accidents)』は避けられません。
事故というのは鹿が走行中のあなたの車に飛び込んできたり、竜巻に巻き上げられた木が誰かの家や車に落ちてきたりすることを表現する言葉です。
しかし原子力発電所のメルトダウンは偶然に起きたわけではなく、人為的な災害です。
日本政府当局者も、米国の原子力行政当局者も、その他の原子力および核兵器産業も各国において、福島で起きたのは『事故(Accidents)』であると言い張り、原子力産業自体も福島第一原発の人為的災害は『事故』であったとずっと主張しています。
なぜでしょう?
それは世界中の人々と主流メディアとが、福島で起きたような原子炉のメルトダウンなど滅多に起きることはなく、メルトダウンという事態が起きることは想定もされていなかったという虚偽を信じてくれれば、メディアとその影響を受ける人々の大多数は、すでに時代遅れであり安全性にも問題があるにもかかわらず、非常に高額であるにもかかわらず原子炉を再稼働させる、あるいは40年の設計寿命を超えて運転寿命を延ばす許可が与えられても、それほど問題だとは考えなくなるからです。
世界の主流メディアは、福島で起きた原子炉のメルトダウンは『事故』であるという原子力発電所の所有企業、原子力産業、日本政府による言語的な定義を受け入れ続けています。
しかしそんなことはもうやめさせましょう。
6基の原子炉を有する福島第一原子力発電所で起きた3基の原子炉のメルトダウンは、事故と呼ぶべきものではありません。
科学者、エンジニア、組立企業、機械製造会社、政府規制当局、政治家、電力会社、すべてが真実を知っています。
2012年に日本の国会の福島第一原子力事故独立調査委員会が発表した公式報告書によれば、福島県全体に被害をもたらしたメルトダウンは回避できた可能性があります。
2011年3月11日に発生した地震と津波は、全世界に衝撃を与えた程巨大な自然災害でした。
その巨大な自然災害がきっかけとは言え、その後の福島第一原子力発電所の事故は自然災害と表現すべきではありません。
福島第一原発事故は史上最も深刻な人為的災害です。
それは予見されるべきであったし、防止されるべきでした。
関わっていた人間たちがもっと的確な対応をとることによって、福島第一原発の被害規模はもっと小さくできた可能性があります。
福島第一原発で起きたメルトダウンを「事故」と定義することにより、原子力が存在する国々はこの危険でもはや持続不可能な技術を使い続けることができます。
原子力発電所が動く限り。
私は前半生において私は核兵器に強く反対していましたが、原子力産業を信じて働いていました。
核兵器には今でも強く反対していますが、大学2年生の時、原子力工学を専攻することにしました。
理由は原子力の平和的な利用が、必要とされる電力を安全に生み出す方法であると信じていたからです。
単刀直入に言って、私は間違っていました。
福島第一原発やスリーマイル島のような原子力発電所はアメリカ人によって設計され、原子炉ごとに設置されたフェイルセーフ・システムは緊急時に各原子炉を安全に停止させ、その上格納システムによって万が一放射性物質が漏れ出しても近隣の住民やコミュニティには被害が及ばないようにできるというリスク分析予測に基づいていました。
しかし福島第一原発の崩壊では、すべてのフェイルセーフ・システムが機能しませんでした。
その結果前例のない大量の高放射性微粒子が空気中に噴出し、風や気候条件(雨、雪、融雪)によって遠くまで運ばれ、コミュニティ全体、大切な農地、小さな市町村、そして広大な森林ですら丸ごと汚染しました。
その放射性物質は小川、河川、地下水を伝って太平洋に流れ込んだのです。
少し話が先に進みすぎたようです。
改めて福島第一原発崩壊後の日本で何が起こったのかを詳細に検証しましょう。
その際、原発を推進する立場の人間たちによって広められた嘘と今なお続いている隠蔽工作についても見ていきましょう。
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私事ですが、この【 星の金貨 】は始めてから間もなく10年になります。
近頃なんとなく煮詰まってきた感じがあったことに加え、様々なメディアに登場するのがトランプ、プーチン、そして安倍首相という状況にゲンナリして、WEBの世界から少し離れてみようと思いました。
海外メディアのタイムリーな記事はとりあえず目で追うだけにして、かねて翻訳したいと思っていたアーニー・ガンダーセン氏のこの稿を翻訳していました。
【 星の金貨 】を始めた2011年、アメリカの大手メディアがガンダーセン氏の論評を度々引用していたことがきっかけでフェアウィンズのサイトにたどり着き、そこに掲載されていた数々の評論を読んで『我が意を得たり!』と心が躍ったことこそ、【 星の金貨 】を10年近く続ける動機の一つになったと思っています。
自分が専門とする分野に正義を確立したいと願い、金銭的見返りを求めずフェアウィンズの運営を続けておられるアーニー・ガンダーセンしですが、このような方の思いが一人でも多くの方に伝わるように貢献したい、そう思ったことが【 星の金貨 】を始めたきっかけであったことを改めて思い出しました。
【 星の金貨 】をマネタイズすることについて様々な方から助言をいただいたりしますが、マネタイズしたいないかこそ好きな時に休止し、好きな時に再開もできるのだと思います。
35年以上のサラリーマン生活を終えて数年、不正義が大手を振ってまかり通る世界に一石を投じることを縛られることなく続けられれば。
そう願っています。
なおアーニー・ガンダーセン氏は2011年3月11日以降、 福島第一原発で発生した一連の事件を『事故』と表現すべきではないと書かれておられますが、日本ではすでに表現として定着してしまっており、『災害』という言葉は私の中ではより一層人為的ファクターが薄まる気がする上、それに変わるべき表現が思い浮かびませんでした。
この点、お詫び申し上げます。