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変わる日本の顔:移民労働者への扉を開く労働力不足

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所要時間 約 12分

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かつては世界で最も均一的社会のひとつであった国、大規模移民に反対する伝統的政策を緩め始めた日本

日本の若い人の間では外国人労働者受け入れに肯定的な人が多い

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2018年11月8日

 

インドネシア移民ムハンマドさんとムナディさんはホタテの貝殻を一つずつ細い金属棒に通す作業を黙々とこなしています。
2人は時折母国語のジャワ語で低い声で会話する時だけ、単調な静けさが途切れます。

この貝殻は間もなく西日本西部のこの地域の特産品である牡蠣の養殖に使われます。

 

今年4月広島県東部の小さな港町である秋津に来る以前、今は瀬戸内海を見下ろす小屋の床に座っているこの男性たちはカキを見たこともありませんでした。
人口減少、高齢化、一向に改善されない低出生率のという問題の解決策として日本の政策立案者は外国人労働力の受け入れを立案し、彼らはその一員として日本にやってきました。

 

数十年来続く厳しい労働力不足に直面する企業側の圧力を受け、日本政府はこれまで採ってきた厳しい移民政策を緩和せざるをえなくなりました。

11月初旬、安倍首相は2025年までに一気に50万人という数の外国人労働者を受け入れる法案を可決、大規模な移民を否定する日本の伝統的な政策に終止符を打つことになりました。
この法案は今年末までに議会を通過し、来年4月に発効する予定です。

日本は世界で最も均質な社会の一つです。
教育、医学、工学、法律などの専門職は例外としても、外国人労働力の受け入れには長い間抵抗してきました。

 

ムハンマドさんとムナディさんは日本政府が主宰するする外国人技術研修生プログラムの一員として来日し、開発途上国から5年後帰国してその技術を母国に持ち帰る技能を習得できるとされています。

 

しかし現実には雇用する側が安い労働を確保することを目的にこのプログラムを乱用し、多くの労働者に支払われるべき賃金が支払われず、しかも長時間労働を強いられているという批判があります。

昨年26万人を超える外国人労働者を受け入れたこのプログラムですが、人員不足に苦しむ業種の分野の技術を習得しようとする人は必ずしも多くありません。

 

日本国内の6,600万人の労働者のうち、外国人労働者の数は2017年は128万人となり、2012年と比べるとその数は2倍になりました。

しかしその大半はムハンマドさんとムナディさんのように期限を限って滞在することを許されてる大学生や技術研修生です。
日本の失業率は2018年9月にはわずか2.3%に低下しましたが、これは100人の求職者ごとに163件の求人があるということであり、この40年年間で最高の求人倍率になりました。

▽「従来の移民政策とは異なる」

 

新しい法律の下で、外国人労働者は2つのカテゴリーに分けられることになります。
労働力不足の分野でのスキルを持つ人は最長5年間働くことができますが、家族を同伴することは許されません。
高度なスキルを持った人は、家族ともども無期限にビザを更新することができ、最終的に永住権を申請することができるようになります。
いずれも日本語の所定の試験に合格することが条件です。

 

安倍首相は日本の厳しい移民政策を事実上放棄するという解釈を否定しました。
「誤解しないようにしていただきたい。」
と述べ、労働力不足は日本経済の緩やかな回復軌道への障害だと警告した。

 

安倍首相は国会での答弁で「従来の入国管理制度にこだわり続けるわけではない」と語った上で、ほとんどの外国人労働者が限られた期間だけ滞在するのであり、不況業種や特定の産業で労働力不足が生じた場合に都度制度について見直すことになるだろうと付け加えました。
「我々の価値観を強制するのは間違いです。代わりに、人種は違っても人々が幸せに共存できる環境を作り出すことが重要です。」

しかし反対する見解を持つ専門家もいます。
「事実上移民を受け入れる政策への転換だと思います。」
元出入国管理局長の坂中秀則氏がこう語りました。

 

移民労働者数が大幅に増加するという見通しは、野党からも反発を受けることになりました。
右翼政党の日本維新の会は外国人労働者の大量流入は福祉サービスの質の低下を招き、犯罪発生件数の増加につながると主張しました。

国民民主党の玉木雄一郎氏は、賃金の低下や社会サービスへの質の低下に対する懸念を表明しました。
一方で玉木氏は日本人外国人であるとを問わず平等な賃金体系を実現させ、家族を連れて日本に来ることができるEU方式の移民政策を支持する最初の政党党首になりました。

 

右翼雑誌Sapioの最新号は移民の増加は暴力、性犯罪、生活習慣の違いによるトラブル発生件数が増加するという記事の特集を行いました。
民間放送者のフジテレビは滞留期限を過ぎて日本に留まり続ける外国人を批判し、悪者扱いする番組を放映しました。

 

しかしこれらに比べ日本の一般国民はもっと寛容なようです。
テレビ東京と日本経済新聞が行った調査では、日本人有権者の54%は未熟連外国人労働者の就労を認めており、反対は36%でした。
特に若い人の間で外国人労働者受け入れへの支持が高いこともわかりました。

リベラル系の朝日新聞はかつて安倍首相が「外国人労働者数を急激に増やすという急進的な政策転換には懸念がある」という趣旨の発言を繰り返し行っていました。

「移民という呼び方をするかどうかが問題なのではなく、政府は外国人労働者と日本人が協力し合いながら安心して暮らすことができる日本社会の未来について、実行可能で説得力のあるビジョンを掲げる責任がある」と述べ、その変化が「日本社会において広範囲に大きな影響が及ぶことになる」と付け加えました。

 

こうした変化は、労働者6人中1人が外国人(日本の産業界では最高比率)という広島県の漁業分野ではすでに現実のものです。
20代と30代の漁業関係者ではその比率は2対1になっています。

 

▽「ここでの漁業はもう外国人労働者なしでは存続していけません。」

 

秋津では海外からやってきた若い漁業労働者が日本の高齢者を3割ほど上回っています。

秋津漁業協同組合の芝孝敏組合長は67歳ですが、それでも組合員の中では比較的若い方です。
彼は冗談まじりにこう語りました。
「ここで技術を習得し生活に慣れてきた時点で、外国人研修生の滞在年弦が切れて故国に戻らなければならなくなります。それではせっかくの機会が無駄になってしまいます。」
「日本政府に多くの選択肢があるとは思えませんが、できるだけすぐに行動すべきだと思います。この場所はもう外国人労働者なしで生き残ることは不可能です。」

 

ムハンマドさんもムナディさんも日本の僻趨の地での生活にはもう慣れたと語る一方、3年を超えてこの地に留まるつもりはありません。
彼らは休日は近くの広島市で買い物をしたり、バドミントンをしたりして過ごしますが、現地のスーパーマーケットでもハラル料理の材料を購入することができます。

ほんの数ヶ月で彼らは近隣の住民に加え、中国、フィリピン、マレーシア、ベトナムからやって来た他の研修生とコミュニケーションするのに十分な日本語会話能力を身につけました。

「職場での日本人の同僚や上司との関係も良好です。」
妻が初めての子供を産んだ直後の4月にジャワを発ったムナディさん(27歳)がこう語りました。
「インドネシアにいるよりも、ここではずっと多い報酬を受け取ることができるのです。」

 

この話にムハンマドさんも同意しました。
「仕事には問題はありませんが、やっぱり家族が恋しいです。」
「でも、ここでは幸せです。」

 

https://www.theguardian.com/world/2018/nov/09/the-changing-face-of-japan-labour-shortage-opens-doors-to-immigrant-workers
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私もかつての職場で外国人労働者の方々と一緒に働いた経験があります。
ただ、いずれも東北大留学に関係した方々で、本人は故国に戻れば医師の中国人、大学教授や一流シェフのモンゴル人といった方々だったので、この記事に登場する人々とはちょっと違うかもしれません。

担当する単純な作業の進め方について、一度中国人医師の男性がモンゴル人大学教授に恐ろしい見幕でクレームを言っているのを見て驚いたり、モンゴル人の教授が大げさに肩をすくめるのを見て微笑ましく思ったり、何かと楽しかったことを覚えています。

このうち中国人医師の男性とは生涯の友人になりました。

男性は今や浙江省の大都市の病院長ですが、今はその息子さんが名古屋大の理系学部に留学中で、来春大学院に進むべく一生懸命勉強を続けています。

 

私の人生はこの中国人の親友を得たことで大きく広がり、家族もまた得難い経験を重ねてきました。

こうした個人的立場から日本の入国管理政策を云々することはできませんが、問題があるとすればそれは国籍ではなく人間の方でしょう。
記事中、外国人労働者の受け入れを批判する雑誌や放送局の話が出てきますが、犯罪率云々とは言いながらその実、発想の基本は『鬼畜米英』です。
この人たちの頭の中は70年以上進歩していないのでしょう。

 

もう帰国されましたが、妻がやっている薬局にガーナ人のご家族が顧客になったことがあります。
こちらも東北大に関係する方でしたが、ご夫婦ともに見るからに理知的な方々で、生活する上でとても興味深いお話を教えていただくこともありました。

 

出会いによって世界が広がる楽しさ、体験してみる価値は十分にあるはずです。

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