星の金貨 new

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » オリンピック・イベントの犠牲にされる人々(命を脅かす原子力の嘘)《後編》

オリンピック・イベントの犠牲にされる人々(命を脅かす原子力の嘘)《後編》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 10分

広告
広告

一度原子炉がメルトダウンしてしまった後の除染は容易ではなく、完全に放射性物質を取り去ることは技術的に不可能
福島の原発難民がいまだに現在進行形の放射線被ばくを経験させられているという事実を一人でも多くの人に認識してもらうことが重要
安倍政権の福島の原発難民の人々への扱いは実験台のモルモット並み、放射能汚染が解消されていないエリアへの帰還を強制し、世界に向け問題が解決したかのような印象操作を行っている

             

             

アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 2019年3月8日

           

ここにご紹介する3本のビデオは2017年9月に私自身が福島で撮影したもので、福島近郊で実際に起こっていることを示しています。
2020年に日本が東京オリンピックを開催するため、福島第一原発の周辺があたかも正常な状態に戻ったかのような印象を与えるために人々を帰還させ、結果的に大量の放射線を浴びさせる結果になったことを忘れることはできません。

           

かつて福島第一原発周辺で生活していた人々のうち、数万人は遥か離れた場所に避難したまま、そこでの生活再建に取り組んでいる一方、何千人もの人々は経済的に追い詰められ今や帰還を余儀なくされています。
福島第一原発周辺に存在する移動性放射性ダストは、帰還を選択した人々にこれまでもこれからも壊滅的な影響を与え続けることになりました。
この極めて高い放射線量を持つ移動性放射性ダストは、東京のように遥か離れた人口密集地でも存在が確認されています。

             

福島第一原発がトリプル・メルトダウンを起こす前と同じ状態になるよう、あらゆるものを回復させようと試みてはいるものの、日本政府は日本も周辺世界もかつてとは非常に異なる場所になってしまったことを理解できずにいます。
安倍政権は原発難民を汚染されたかつての居住地へ強制的に帰還させ、放射線のさらされた福島県産品の販路拡大に取り組んでいます。

           

一度原子炉がメルトダウンしてしまったら、その後のクリーンアップは容易なことではなく、完全に放射性物質を取り去ることは技術的に不可能です。

           

実際、どこまで問題が及んでいるかの範囲の特定、深刻度、根本的な原因を検証する代わり、あちこちに絆創膏を貼りまくり、応急措置だけを繰り返しても問題は無くなりません。
そして日本の政治家や政府高官、東京電力は自分たちの政治的地位、会社の財政基盤や個人の財産、そして原子力産業の財政基盤を守るために何千人もの日本国民の命を危険にさらしています。

          

先週号のアジアパシフィック・ジャーナル(APJ)には、シカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士、東アジア言語・文明学の日本研究における功労賞受賞者のロバートS.インガソール教授による秀逸なエッセイが掲載されています。

            

2020年の東京オリンピック - パラリンピックは当初これまでで『最もコンパクトな』で低予算での開催を約束していながら、現在はその何倍もの約3兆円の費用がかかってしまう可能性があるという予測に、私たちは凝然(ぎょうぜん)たらざるをえません。
そして日本では殊更に 『復興オリンピック』ともてはやされているのです。

          

これほど多額の予算を巨大地震、巨大津波、原子炉のメルトダウンという三重災害に見舞われた地域全体、特に原発難民にされた得難い思いをされているの犠牲者たちのために役立たら、という思いを持つのは当たり前のことではないでしょうか?

          

巨額のオリンピック予算のごく一部であっても、福島第一原発の周辺から避難者している人々 - 命令された人『自主避難』した人を問わず - が必要としている住宅支援のために使えば、人々はもっと生活の先行きを見通すことができたことでしょう。

             

しかし現実にはこれまで入ることが厳しく制限されていた福島第一原発の周辺の地区では、科学的根拠が乏しいまま避難区域の指定が解除されました。
これらの地区では広い範囲にわたって汚染されていることが懸念されているにもかかわらず、避難指定が解除され、元住民に対し無謀とも言える帰還を強制しているのです。

             

東京電力が提供しているJ-ヴィレッジは放射能で汚染された一帯の処理作業を行う作業員の防護服の着脱、仮眠、放射線量の測定場所として使われてきたため、当然放射能で汚染されているはずですが、オリンピック期間はナショナル・サッカーチームのトレーニング施設として利用される予定です。

          

アジアパシフィック・ジャーナル(APJ)に掲載されたシカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士のエッセイには、最近引退した京都大学原子炉実験所の小出裕章博士の長文の論説が紹介されています。

             

…医療ジャーナリストの藍原寛子氏が決して少なくはない皮肉を込め、こう語っています。
「確かに東京オリンピックは「災害からの復興」を世界にアピールする素晴らしい機会になるでしょう。」
しかしその一方で、
「国家の原子力政策がもたらした人為的災害の結末、その本当の状況について」も、国際社会に明らかにすることになるでしょう。すなわち長期にわたる避難を課し、一部の地域住民に犠牲を強いること。」

       

アジアパシフィック・ジャーナル(APJ)に掲載されたシカゴ大学教授ノーマ・フィールド博士と小出裕章博士の長大な論文を読むと、いてもたったもいられないような気持ちにさせられます。
それでも彼らはまだすべてを語っているわけではないのです。
3基の原子炉がメルトダウンしてからすでに8年、私が感じるのは16万人の福島の原発難民がいまだに現在進行形の放射線被ばくを経験させられているという事実を、一人でも多くの人に認識してもらうことが重要だということです。

            

この科学的事実を世界各国の政府は人々の目の届かないところに隠そうとしています。
しかし私たちが各国の政府が密接な関係がある原子力発電と核兵器の開発に巨額の投資を続けてきたという事実に焦点を合わせれば、彼らが金銭的に、政治的に、そして感情の上でも真に望むものが何であるか理解するのは難しいことではありません。

          

日本で初めて著作を刊行して以降、私は4度にわたる調査旅行中、数多くの原発難民の人々に会って話をし、情報を交換しました。
そしてフェアウィンズは彼らが被った衝撃的なまでの痛手を理解していると確信しています。

           

見逃せないのは日本政府がオリンピック開催のために多額の資金を投入していながら、福島第一原発の事故処理費用をできるだけ切り詰めようとしている点です。
そのために安倍政権は16万人に上る福島の原発難民の人々を実験台のモルモット並みに扱い、放射能汚染がまだ解決していない避難指定解除エリアに戻るように強制し、世界に向けてあたかも問題が解決したような印象操作を行っています。
そして帰還した原発難民の人々がどれだけの放射線被曝をすることになるのか、誠実な志を持った科学者が検証することを妨げるということまでしています。

             

オリンピック開催に数兆円という国費を投入するより、まず福島第一原発事故で自宅や故郷を失ってしまった人々の救済のために使う方がはるかに有効であると考えます。
帰還を強制されている家族が今まさに帰還を強制されている汚染された場所ではなく、遠く離れた安全な場所で永続的な雇用と住居を手に入れることができるよう、新たなコミュニティの建設のために資金は使われるべきです。

           

《 完 》
https://www.fairewinds.org/demystify/atomic-balm-part-2-the-run-for-your-life-tokyo-olympics
  + - + - + - + - + - + - + - +

           

福島の問題は話たしたち日本人の『良心の質』の問題かもしれません。

世界レベルの壮大なイベントを日本で開催することが、ただただ嬉しいのか?

このようなイベントに国を挙げて取り組む一方で、国としての体面と巨大企業救済のため、切り捨てられていく人々がいることを常に忘れずにいることができるのか?         


広告
広告

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
最近の投稿
@idonochawanツィート
アーカイブ
広告
広告
カテゴリー
メタ情報