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【 終わっていない悲劇、終わらない苦しみ 】文字通りの艱難辛苦の中で

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津波で壊滅した小さな教会の再建[いわきジャーナル]

田淵弘子 / ニューヨークタイムズ 2013年3月10日

いわき01
すさまじい破壊音とともに何もかも壊滅させた津波が引いた後、小さな教会のメンバーたちは、破壊された福島第一原発が作り出した衝撃の波紋の広がりに伴い、いくつもの新たな問題が始まってしまったことを思い知らされることになりました。

地震が原因の津波が福島第一原発の巨大事故を引き起こして以来この2年間というもの、小さな教会の150人の教区民たちは一息つく暇すらありませんでした。

まずは福島第一原発が放出する放射性線の被害から、逃げなければなりません。
そして元住んでいた場所に戻れる見通しが立たなくなった以上、ふたたび皆が参集できる場所、できれば未来永劫よりどころにできる教会を再建しなければならなくなったのです。

混乱が続く数多くの日本国内の市町村は、とにもかくにも復興に取り組んできました。
津波が根こそぎ何もかも奪っていったため、あらゆる手段と資源を動員し、復興のための推進力としてきました。
小さな勝利の積み重ねが希望を育て、ともすればくじけそうになる心を奮い立たせることにより、生活の再建を軌道に乗せていく日々が続いています。

日曜日福島第一原発の南方約50キロにあり、原発が噴き上げた放射線に吹き払われるようにして多くの人が去って行ってしまったいわき市で、福島第一バプティスト教会が、まさにそうした努力の積み重ねと市内の信者からの寄付により再建した教会で、初めてとなる礼拝を開催しました。
しかし年配の信者の中には参加できなかった人々もいました。
そしてかつての教区民たちの多くが、日本全国に散らばったままになっています。
ある人は子供が被ばくしてしまうことを恐れ、ある人は戻っても仕事が無たいため、そして未だに県外の親類縁者の支援が無ければ暮らしてはいけない人もいるためです。

いわき05
「私たちは大切にしていたものをすべて失ってしまった、そう思ったことが何度もありました。その時、いつもこの言葉が口をついて出ました、『神よ、なにゆえに…』」
約50人の信者が集まって祈りのために頭を垂れたこの日、初級牧師の佐藤まさし氏がこう語りました。

東北沿岸が徹底的な破壊を受けてから2年、福島県沿岸の市町村は次々と持ち上がる問題と向かい合い、答えを出すことを迫られています。
懐かしい故郷の家で暮らすことは、もはや永遠に許されない事なのかもしれません。
ならば別の場所で生活を再建しなければならないのです。

福島県全体で考えれば、多くの地区でその生活は正常に戻りつつあります。
しかし福島第一原発周辺の汚染のひどい地区に住民が帰還できるようになるまでは、数十年の歳月を必要とする可能性があります。
このことについては日本政府も認識していますが、福島第一原発の廃炉作業の進行状況も住民の帰還時期に大きく影響することになるでしょう。

いったんは全面的な避難を指示され、空っぽになった市町村の中には、避難命令が解除された地区もありますが、住民の帰還については先行き不透明です。
市町村、そして家族の中でさえ、帰還するかどうかについて意見が分かれています。
福島県ではこの2年間に渡って人口の流出が続き、その数は6万人に上りましたが、現在はそのペースは緩慢になりつつあります。

もともと福島県内にあった大熊町のバプティスト教会もまた、その教区民の多くを失ったまままです。
しかし今月やっと流転に終止符を打ち、少なくとも再開にまでこぎつけることが出来ました。
2年間場所を転々としたことについては、信者自身が信仰の深さを試される試練であったと語っています。

いわき03
第二次世界大戦終了直後、アメリカのミネソタ州らやって来た宣教師団によってたてられた教会は、福島第一原発が海沿いにひろがる不毛の地にあり、貧しい寒村でしかなかった大熊町を、このあたりで最も富裕な町へと変えて行く一部始終を見てきました。

教会の発展は早いものだったと、教区民が語りました。
そして東京電力が福島第一原発の建設を始め、年の若い労働者が付近一帯に住みつくようになってからは、その成長は一層早まりました。
教区民150名という数は、仏教あるいは神道が普及しきっているこの国にあっては、少ない数字ではありませんでした。
日本にあってはキリスト教徒の存在は小さく、国勢調査によれば1億2,700万人の人口のうち、300万弱、割合で言えば2.3%を占めているに過ぎません。
人口が減り続けている日本にあっては、教会が生き残るために強いられる苦労は並大抵のものではありません。

現在60歳になった中田啓二(英文翻訳のため、表記は正しくない場合があります)さんは、東京電力が福島第一原発を建設する際の募集に応じる形で、栃木県から移住してきました。
彼は20歳で入信し、結婚式もこの教会で行い、大熊町に腰を落ち着けました。
彼とその妻は4人の子供に恵まれ、啓二さんは日曜学校の活動にも積極的に参加してきました。
中田さんは数年前に妻を亡くしました。
そして彼が東京電力を退職して一年も経たないうちに、マグニチュード9.0の地震が彼の家を激しく揺さぶったのです。

「言葉になりませんでした。建設に参加した福島第一原発はあんなことになり、心のよりどころだった教会と、そして我が家を失ってしまったのですから。」

いわき06
同じ日の朝、92歳の佐々木とも子さんは大熊町で寒さに震えながら、6時間の間自衛隊の到着を待っていました。
バスに乗って、近くの公民館に避難するためです。
彼女は一晩中教会に避難していました。
それからの混乱を極めた3週間、佐々木さんは前述の中田さんを含めた60人の教区民の人々と一緒に避難所を転々としたあげく、彼らを収容するために用意された東京西郊の避難所に落ち着きました。

佐々木さんは今東京の高齢者のための養護施設に居ますが、あの時一人だったら、今頃はもう生きてはいなかっただろうと語りました。

彼女の入信は65年前です。福島県民としては初めてのバプティスト派キリスト教信者になった彼女は、周囲から奇異の目で見られました。
わずか2、3年前には現人神としての天皇に終生の忠誠を捧げていた、佐々木さんはそう話してくれました。
「その当時のクリスチャンの数はきわめてわずかでした。でもそのせいで信者同士、互いの結びつきが強かったという事も言えると思います。」
電話での取材に、彼女がこう答えました。

しかしともすれば士気が上がりませんでした。
2011年5月、その当時海岸線に沿って絡み合うように積み重なっていた瓦礫の間から、一人の教区民の遺体が発見されました。
そしてもっと高齢の2人の信者が病院で死亡しました。
今は東京の西郊に避難している60人の信者たちは、2週間の間に3度の葬儀を行わなければなりませんでした。

しかし、新たなメンバーも増えました。
教区民の人々と一緒に避難してきた中から、ひと月の間に7家族から入信の申し出がありました。

いわき04
そして一年後の2012年6月、中田さんが再婚しました。
相手は溝口けい子さん、51歳です。彼女の夫もまた、3.11の一か月後に亡くなりました。
今中田さんと溝口さんのカップルは福島県内で暮らし、毎月車を運転して東京の西郊にある臨時の教会に通っています。

「日本で自分を見失うことは良くある事です。」
佐藤牧師がこう語りました。
「でも今回の大災害によって、私たち信者はあらゆる意味で強くなったのです。」

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【 新法王誕生、その瞬間 】
アメリカNBCニュース 3月13日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

システィナ礼拝堂の煙突から白い煙が上がった瞬間、新法王の誕生を知り、喜ぶ修道女。(写真下・以下同じ)
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アルゼンチンのホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿が新法王フランチェスコ1世の地位に就きます。
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【 教皇選出のためのコンクラーベと枢機卿たち 】
アメリカNBCニュース 3月12日

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ベネディクト16世の後継者となる法王選出のコンクラーベを行うため、システィナ礼拝堂に入る枢機卿たち。
外の世界との接触を断ち、115人の枢機卿たちは見上げるように大きなミケランジェロの手になる『最後の審判』の絵が掲げられた壁の前で、彼らは投票を行うことになります。

システィナ礼拝堂に向かって祈る修道女
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新法王が決まったかどうか、外の世界に知らせるのろしを上げるシスティナ礼拝堂のストーブ。
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3月12日に、聖ピエトロ広場にあるシスティナ礼拝堂の煙突から黒煙が上がった。
黒煙は新任の法王が決まらなかったことを伝える合図。
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システィナ礼拝堂の煙突から上がった黒煙を見つめる修道女たち。
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