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【 米国の東芝ゲンパツ事業の崩壊に続き、英国の展望も瓦解 】《後篇》

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計画の継続・実現が危うくなってきた英国の新たな原子力発電所建設

原発にとらわれるのではなく、電力事業の構造すべてを見直す時期が来ている

 

アダム・ヴォーン/ ガーディアン 2017年4月14日

 

技術やスキルの水準を維持するために必要なだけの原子炉建造が行なわれていないアメリカ、新世代の原子力発電所の建設に意欲を燃やす英国、しかしこの2国間には最新の技術経験と部品・部材のサプライ・チェーンに問題がある、という共通点があります。

 

サフォーク海岸にあるサイズウェルB原子力発電所が1995年に実際に稼働を始めて以降、英国では新しい原子力発電所の完成例はありません。

 

フランス国有企業のEDFは、サマセット州のヒンクリー・ポイント原子力発電所の建設事業において2基の原子炉を2025年までに稼働させる予定ですが、現場でコンクリートを注ぎ始めたここに至るまで、様々な課題を克服してきたと主張しています。

 

ヒンクリー・ポイントで建造中のEPR型原子炉は、同社がフィンランドで、そしてフランスのフラマンヴィルで建造している原子炉と同型のものですが、2か所ともすでに工期が遅れ、予算超過に陥っています。

英国内の各地で計画されている新たな原子力発電所の建設はすべて外国の企業が行なっていますが、本格的な建設作業に着手するまでまだ数年がかかる見通しです。

 

東芝はカンブリア地方にあるムーアサイド原子力発電所でウェスティングハウス製のAP1000型原子炉3基を建造中ですが、アメリカ国内の2か所の同型原子炉建設がウェスティングハウス社の経営破たんにより暗礁に乗り上げたことを受け、共同企業体の形で進めてきたムーアサイド原発の事業そのものの売却を検討していることを今週明らかにしました。

 

この発表に対し、韓国電力(KEPCO)が事業の買い取りを検討中だと2017年3月発表しました。

これを受け英国政府のグレッグ・クラーク商務長官が共同で原子力事業を行う件について話し合うため、4月早々韓国に向かいました。

 

しかし韓国が英国の原子力事業のパートナーとなれるのかどうか、確実な話ではありません。

5月に予定されている韓国の大統領選挙の有力候補2人は4月中旬、ともに原子力発電からの段階的撤退と再生可能エネルギーへの移行を支持すると表明しました。

さらにムーアサイドで韓国電力がすでに認可の下りているウェスティングハウス製AP1000型原子炉ではなく、自社の技術による原子炉製造をおこなうとすればその審査から認可までの時間を考えれば数年の遅れの発生は避けられそうにありません。

 

英国内の労働組合関係者は、ムーアサイドの問題については英国政府が直接に関与することによって、事業の継続性を担保する必要があると語っています。

英国内の組合の連合組織であるGMBのジャスティン・ボーデン書記長は

「今回の一連の騒動の根本部分にある最も大きな疑問は、この国の最も重要な電力供給の問題のすべてを、一体全体なぜ外国企業任せ、外国政府任せにしているのか?という事です。」

 

仮に計画中の原子力発電所の建設稼働が実現しなくとも、国内の電力需要を賄うだけの予備プランがあると英国政府は主張していますが、4月中旬になって東芝の経営危機がますます深刻になってきたことを受け、英国内には国のエネルギー政策そのものを見直すべきではないかという意見が強まっています。

 

「もはや別プランについて真剣に検討すべき時が来ています。」

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(英ロンドン大学の代表的なカレッジ)エネルギー研究所のポール・ドルフマン教授はムーアサイド原発の計画はもはや実現不可能だと考えていますが、今回の騒動を見てこう語り、次のように続けました。

「もはや英国のエネルギー政策全般を見直すべき時に来ており、電力網の再整備、太陽光発電システムの本格的導入、エネルギー効率やエネルギー管理システムなどに関する総合的戦略について議論すべきです。」

 

4月14日に公表された報告書はもう一つの選択肢に光をあてることになりました。

これまで風力発電所の新設を認めないとの立場を謳ったマニフェストを保守党が撤回したことです。

英国政府はヒンクリー原子力発電所建設のためフランス企業のEDFに特恵的とも言える有利な条件を与えましたが、地元のスコットランドの風力発電業界団体による分析によれば、現地での風力タービンの建設や設備費用は補助金を全く必要としない程安くなっています。

 

計画通りに原子力発電所を完成稼働させられるのかどうか判断しなければならない英国政府は、風力発電の著しい技術的進歩とコストの低下を前に、エネルギー政策の再考を迫られているように見受けられます。

 

〈 完 〉

https://www.theguardian.com/business/2017/apr/14/toshiba-us-nuclear-problems-uk-cautionary-tale

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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