ホーム » エッセイ » 【 日本の軍隊は戦争はしません 】
自衛隊を平和主義の下で活動させるという規制の廃止を狙い続けてきた安倍政権
イギリス軍フランス軍を合わせた以上の海軍力を持つ日本の自衛隊
エコノミスト 2017年2月16日
富山正樹さんはドン・キホーテ的な戦いを挑んでいるのかもしれません。
彼は自分の息子が世界最大規模の最も優れた装備を持つ自衛隊に加入した事には満足しましたが、場合によっては戦闘を行い、人間を殺すことになるかもしれないという可能性については我慢することができません。
「息子が人間を殺すための訓練を課されていると聞いた時、私は非常な怒りを覚えました。」
実際に明らかに憤慨している様子の富山さんは、現在の政権が日本の平和憲法に反する決定を行ったとして、日本政府を相手に訴訟を起こすことになった経緯についてこう語りました。
「私は息子が戦争に行くことを決して許すつもりはありません。息子の志望動機も戦争をすることが目的ではありませんでした。」
1946年の第二次世界大戦(太平洋戦争)終了直後、急いで日本という国の整備を進めなければならなかったアメリカ軍関係者によって作られた日本国憲法は、陸、海、空の軍を常設することを禁止しています。
しかし東西冷戦が頂点に達していた時代、経済的に豊かな西側先進国の一員として軍事力を全く持たないという事は非現実的に映り、さらには近隣諸国との間で領土問題を抱えていたこともあり、1954年に日本政府は「自衛隊」設立に向け動き出しました。
自衛隊は「日本の平和と独立を守る」ために存在すると規定されました。
しかしそれでもなお、自衛隊を持つことは論争の的になりました。
何十年もの間日本最大の野党は、自衛隊を廃止すべきだと考えてきました。
自衛隊の将官であった山口昇氏(自衛隊の場合は陸相、海将、空将 - 記事には記載なし)は、自衛隊員たちが一般市民の反発を避けるため、兵舎を退出する際には民間の人びとと変わらない服装に着替えなければならなかった時代があったことを覚えています。
日本の自衛隊は世界各国の軍隊の中で異色の存在となっています。
戦場で発砲したことはまだ一度もありません。
多くの日本人が認識している自衛隊の主要な任務は、災害救助です。
それでも自衛隊は4隻の巨大な「ヘリ空母」を始め、フランス軍と英国軍を合わせた以上の規模の海軍力を持っています。
日本の政権与党の自由民主党のタカ派的メンバーは、長い間自衛隊が他国の軍隊と変わらない内容のものにしようとしてきました。
2015年、安倍政権が国連などが行なっている平和維持活動などに率先して参加する「積極的平和主義」を実現させるとして日本国憲法の『解釈変更』を閣議決定し、その内容に沿った複数の安全保障関連法案を議会で成立させました。
こうした一連の動きは、日本国内で広範な抗議と激しい議会論争を誘発させることになりました。
安部首相の一連の動きの根幹にあるものが、大日本帝国が世界の強国のひとつとして君臨した時代へのノスタルジアだとの批判もあります。
安全保障関連法案の設立によって自衛隊が海外の派遣先での戦闘に巻き込まれ、結果的に大量動員などに発展してしまう危険性があるとの指摘もあります。
安全保障関連法案の可決成立から17ヵ月が過ぎ、目立つほどではありませんが自衛隊の兵力は227,000人に確実に増えました。
しかし法案の成立は一方で、防衛大学校の卒業生が実際に自衛隊員として任官する割合の急激な低下を招いたのです。
日本の人口統計も自衛隊が望むような形で推移していません。
18歳以下の日本の人口は過去20年の間、ちょうど100万人減少しました。
その結果自衛隊の新規隊員募集を難しいものにしました。
キングズ・カレッジ・ロンドンのアレッシオ・パタラノ氏は兵員数だけではなく、もっと重要なのが兵士の質であると語りました。
防衛省は一般向けの広報予算を倍増させ、ふんだんに金をかけた、時には民間の広告宣伝を上回る内容のプロモーションを展開し、漫画キャラクターやポップ・スターを動員し、学校などにも積極的にアプローチを行いました。
ある中学校の子供たちは、学校で使っているトイレットペーパーに、地元の自衛隊の新人募集事務所の電話番号が印刷されているのを発見しました。
こうしたプロモーション活動はこれまで見過ごされてきた人々にも、積極的に向けられるようになりました。
女性たちです。
自衛隊員の女性の割合は現在わずか6%に過ぎませんが、防衛省は2030年までにそれを9%にまでそれを引き上げたいとしています。
自衛隊をもっと強力にすべきだという要求が日本国内から上がっています。
自民党タカ派の新藤義孝議員は、この30年間で中国の国防費が44倍に増加したと指摘します。
自民党に近い国際政策学科研究所の新しい新聞は、ドナルド・トランプの「アメリカ・ファースト」の政策に「最も強い影響を受ける」可能性があるのが日本だと伝えました。
彼らは巡航ミサイルも含め、日本が独力で防衛能力の強化に努めなければならないと考えています。
右派の産経新聞の乾正人編集局長は、次のように主張しました。
「我々はアメリカ・ファースト主義に対し、ジャパン・ファースト主義で応えなければなりません。」
しかし日本国内では、軍国主義的傾向のあるものは、何であっても嫌悪されます。
昨年350人の自衛隊員が国連平和維持軍の一部として南スーダンに送られました。
彼らはインフラの修理・整備だけが目的であり、もし現地の武装勢力の間で戦闘が発生すれば直ちに撤退することになっています。
これまで日本政府は現地では『衝突』が起きているだけだと国会等で答弁してきましたが、これは明らかに事実と異なっています。
しかし今回、自衛隊員は一般人と国連スタッフを掩護するために史上初めて武器を使う許可を与えられました。
日本で最も普及率の高い自由主義の立場をとる朝日新聞を含め、安倍政権の方針に反対する人々は、自衛隊員の撤退を求めてキャンペーンを行っています。
「私たちが懸念するのは、自衛隊員が死傷することです。」
安部首相はもし自衛隊員が死傷するようなことになれば、自分が辞任すると示唆しました。
自衛隊員の若者たちは、地震や津波の被害で苦しむ被災者を助けるために隊員になったのだと、元自衛隊員の泥憲和(どろのりかず)氏が語りました。
「彼らは、いつか兵士として戦場に送られる可能性があるとは考えていなかったはずです。」
富山さんは、自衛隊の役割について政府と裁判で争う決心をした数人の親の1人です。
彼は自分の息子が他国における戦争に参加するためではなく、自分の国の災害救助や防衛のために自衛隊員になったのだと語りました。
「万が一攻撃された場合にのみ応戦する、それが大原則です。」
「その原則は踏みにじられてしまったのです。」
http://www.economist.com/news/asia/21717079-many-army-apparently-had-no-idea-they-might-have-do-some-fighting-japans?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
【 メトロポリタン美術館375,000の収蔵作品をデジタル化、無料提供 】《6》
NBCニュース2017年2月14日
ニューヨークのメトロポリタン美術館はそのコレクションをデジタル化し、無料で375,000点に上る画像データを公開しました。
いずれも公有財産として、無料で制約なしで利用することが出来ます。
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(オランダ:1606- 1669)作[手袋を持つ男性]油彩、1645-50年(写真上)
同じオランダのフェルメール、イタリアのカラヴァッジョ、フランドルのルーベンス、スペインのベラスケスなどと共に、バロック絵画を代表する画家の1人で、ヨーロッパ美術史における重要な芸術家の一人です。
ウィンズロー・ホーマー(アメリカ: 1836 - 1910)作[スタジオ]油彩、1867年
アマチュアと思しきチェロ奏者とバイオリン奏者が、譜面台としてイーゼルを使って音楽スタジオで練習している様子を写実的に描いた作品。
ホーマーは日常生活や自然を描くのを得意とした19世紀のアメリカを代表する画家です。(写真下)
http://www.nbcnews.com/slideshow/met-digitizes-its-collection-releasing-350-00-images-free-n719661