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【 『新たな』3本の矢?それこそさらなる的外れ 】[ECO]

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所要時間 約 7分

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安倍首相の『新たな3本の矢』には、日本経済の閉塞状況を打開するためのどんな効果もない
安倍政権の日本経済の回復策に対する疑問を膨らませる海外の専門機関
正しい的(まと)を設定し、そこに向かって正確に矢を射る能力が安倍首相にはあるのか、疑いは大きくなるばかり

 

エコノミスト 9月26日掲載10月1日更新

日本経済04
多くの国民の怒りを買った4ヵ月間に渡る安全保障関連法案を巡る攻防が終わると時を移さず、安倍首相はそれよりはいくらか安全な場所に戻ってきました。
経済です。
9月24日、安倍首相は続行中のアベノミクス、すなわち金融緩和策、景気刺激策に広範囲な講座改革を進める政策について、意気揚々と『新たな三本の矢を放つ』と披露しました。
しかしここ一年間の日本経済に関する最新のデータは、安倍首相が一息つけるような状況では無いことを示唆しています。

第一四半期の拡大の後、第二四半期に入ると日本のGDPは年率換算で1.2%縮小しました。
現在、第3四半期についての懸念が高まっています。
鉱工業生産指数は8月も連続して下落し、第三四半期は『不況』局面に入ったかもしれないことを示唆しています。
加えて物価はアベノミクスがスタートした2013年4月以降初めて、わずかではありますが再び下落に転じました。
インフレに関する重要な指数のひとつであるコア消費者物価指数(CPI・生鮮食品を除く消費者物価指数)は8月には0.1%下落しました。

Abenomics 2
これは日本銀行にとっては最悪のニュースになりました。
日銀は来年秋まで、1年につき2%ずつ物価を上昇させる政策を実施に移すと宣言していました。
日銀が重視するインフレ指標は『コアコア』CPIと呼ばれるもので、エネルギー価格と食品を除外したものですが、この2品目の価格は現在上昇しています。
しかし他品目に渡るインフレ予想は、現実のデフレーションへの回帰のニュースに影響を受ける可能性があります。
10月末に新たな経済予測を発表するにあたり、日銀は現在行っている金融緩和策の一層の拡大についてさらなる重圧がかかることは間違いありません。

安倍首相の『新たな3本の矢』には、こうした閉塞状況を打開するためのどんな効果もありません。

安倍首相は日本の名目国内総生産を22%増やし600兆円にまで拡大すると宣言しましたが、具体的にどのような内容で、いつまでに達成できるのか一切明らかにはしておらず、概要すらつかめない発表に対しては当初より強い疑問が呈されています。
安倍首相が政権に返り咲いてからの2013年以降、名目国内総生産は継続的に増加していますが、これまでの実績は年率2.3%というものであり、22%という数字の根拠が問われています。

新しいGDP目標を掲げたことは日本の莫大な公的負債の改善に取り組むのではなく、飽くまで経済成長を追求する安倍政権の意思を強調することになりました。
日本の公的負債は現在GDPの246%もあります。

しかし安倍政権のこうした方針は、信用格付機関を納得させられるものではありませんでした。

女性賃金
その結果は日本の国債の信用格付けの引き下げとなって現れました。
9月16日、スタンダード&プアーズは日本の信用格付けをさらに引き下げたのです。
日本の国債は国内の機関投資家や一般投資家が保有し、さらには新規に発行される分はその大半を日銀が買い入れていると見られるため、格付けによる利率の大きな変動はありませんでした。

しかしこうした動きは、安倍政権の日本経済の回復策に対する疑問を一層大きくしています。

今回安倍首相が発表した『第二の矢』と『第三の矢』は、国内の有権者の受けを狙ったものであり、旧アベノミクスの中の構造改革について再度広告宣伝を行ったに過ぎず、人々の失望を買っただけでした。

安倍首相は高齢者のための介護態勢の充実に加え、日本人の出生率の低さを改善するために、これまで以上の財政的援助を約束しました。
現在1億2,700万人の日本の人口は、2060年までに8,700万人にまで減少すると予測されていますが、安倍首相は一億人以下にならないよう対策を取ると繰り返し約束しました。

しかし改革派の人々は今度の『新たな3本の矢』が、実際には約束していた根本的な構造改革を先送りするための方便に過ぎないものであることを懸念しています。
特にこれまで日本の中で政治的影響力を振るってきた農民、医師、薬剤師などの特権的な地位に踏み込むことはうやむやになりそうです。

アベノミクス01
かつて首相の顧問を務めたコロンビア大学の伊藤隆敏教授は、今やアベノミクスは大衆の人気取り政策に変質してしまう危険に陥り、当初掲げていた構造改革による日本経済の立て直しという野心などはどこかに吹き飛んでしまっていると懸念しています。

安倍首相は9月末、ニューヨークに集まった国際的な投資家の前でより大胆な発言を行いました。
コーポレートガバナンスで更なるステップアップを約束しましたが、じつはその多くはすでに達成済みのものです。
さらに野心的な自由貿易協定であり、域内の経済の自由化を目指すトランス太平洋パートナーシップ(TPP)の合意も間近に迫っていると胸を張って見せました。

しかし実際に求められる大胆な決断、そして縮小を続ける人口問題を解決するために実現可能な政策は、非常にきびしい日本の出入国管理政策を緩めることです。
人口動態を安定させると公約しているにもかかわらず、安倍首相はこの点まで踏み込むことには全く意欲を見せていません。

Syr20
9月末国連総会における演説で、安倍首相はシリア、イラク難民問題に関する資金援助を昨年実績の3倍にまで増やすと誓いましたが、難民の受け入れについてはただの一人も受け入れるとは口にしませんでした。

正しい的(まと)を設定し、そこに向かって正確に矢を射る能力が安倍首相にはあるのかどうか、その点に関する疑いは増々大きくなっています。

http://www.economist.com/news/asia/21668283-japans-new-three-little-arrows-shinzo-abe-tweaks-his-economic-programme-japan?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227

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