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【 いよいよ始まる最も危険で、困難な作業 – 福島第一原発 】

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数十年の年月、そして数十兆円を要する、事故収束・廃炉作業の最序盤
福島の仮設住宅「東京電力を信頼している住人など、一人もいない…」

アーロン・シェルドリック / ロイター通信 / 米国NBCニュース 11月12日

4号機核燃取り出し
福島第一原子力発電所では、高濃度の放射線を発する400トンに及ぶ核燃料を取り出すという、非常に難しい、そして先例のない作業が始まろうとしています。

損傷を受けやすく、しかもすでに損害を受けてしまっている可能性のある1,500個以上の核燃料アセンブリを、事故によって不安定な状態にある原子炉4号機の設備から取り出すという、最大限の慎重さを求められる作業は1年以上かかると見られています。
福島第一原発全体の事故収束・廃炉作業を完了させるには、数十年の年月、そして数十兆円の費用が掛かると見られています。
果たして東京電力にはその事業を前進させる能力があるのか、今回の核燃料の取り出しはその事を問う作業となるでしょう。

1本の燃料棒は重さが約300キログラム、長さは4.5メートルありますが、これが50本から70本挿入されているのが核燃料アセンブリです。
この燃料棒が直接空気に触れると、膨大な量の放射性物質が環境中に放出されることになります。

この危険な核燃料の取り出し作業について、経験を積んだ核技術者であり、現在はフェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションを主宰するアーニー・ガンダーセン氏は、つぶれたパッケージからタバコを引き抜く動作に例えました。

さらには原子炉1号機から3号機の核燃料の取り出しについては、炉心のメルトダウンが起きたため周辺の放射線量が極めて高く、作業は一層困難になることが予想されます。

第一大破壊
特に原子炉1号機と3号機は、4号機と比較するとさらに深刻な損傷を受けています。
2011年3月の地震と津波により電源と冷却機能が完全に喪失したことが、3基の原子炉のメルトダウンを誘発し、大量の放射性物質が環境中と海洋中に放出されました。

4号機の施設から核燃料アセンブリを取り除かなければならない、その緊急性は明らかです。
核燃料アセンブリは現在、地上18メートルの高さの使用済み核燃料プール内に収納されていますが、そのプールは鉄骨が折れ曲がり、傾いてしまっている原子炉建屋の中にあり、もう一度巨大地震が発生すればとても持ち堪えられないように見えます。

さらにその地震により核燃プールが損傷し、プール内に水が無くなってしまえば、収納されている核燃料が火災を起こし、2011年3月の事故の時以上の大量の放射性物質が放出され、南へ約200キロの場所にある東京までもが危険にさらされることになります。

「原子炉4号機の核燃料が完全に露出し、いかなる制御も出来なくなったばあにいには、今日までで最悪の放射性物質の放出が起きることになります。」
独立したコンサルタントであるマイケル・シュナイダー氏とアンソニー・フロガット氏は最新の『世界の原子力産業の現状』報告書にこのように書きました。

▽ 困難な試練

4号基構造物
東京電力は2011年に起きた爆発により屋根を失った4号機の原子炉建屋を支えると同時に核燃料を取り出すクレーンを設置するため、全体を覆い尽くすように巨大な鉄骨構造を建造しました。
東京電力は、この建造物は2011年規模の地震にも耐えられると語っています。

東京電力はこの2年半、核燃料の冷却を続けてきた使用済み核燃料プールから、爆発によって生じたがれきのうち、大きなものはすでに取り除きました。
しかし冷却は海水を汲み上げて行われたために、収納されている燃料棒が腐食してしまっている危険性もあります。

昨年東京電力は原子炉4号機の使用済み核燃料プールから、試験的に未使用の核燃料アセンブリを2個取り出しました。しかし未使用の核燃料は使用済み核燃料ほど危険なわけではありません。

核燃料を取り出す作業は原子力発電における日常的な作業ですが、福島第一原子力発電所には『日常的』だなどと言える状況はほとんど存在しません。

2011年3月の事故発生直後から数限りない種類の事故・トラブルを繰り返し、あらゆる分野から批判を受けている東京電力ですが、核燃料の取り出しについては、困難な作業になることは十分理解しているが、問題なくその作業を遂行できると語っています。

東京電力は福島第一原発の他の場所において高濃度汚染水が漏れ出している問題を解決するのに手間取っており、複数の専門家がこのまま事故収束・廃炉作業を東京電力に任せたのままにして良いのか、疑問を呈しています。

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東京電力は本格的な作業は11月中旬に始める予定だが、詳しい日時については暗然対策上明らかにできないと語っています。

「さらに難しい1~3号機の核燃料取り出しのため事前に経験を積んでおくという意味からも、最初に4号機の取り出しに着手することに、私も同感です。」
こう語るのは福島第一原発の1号機の建設にも関わった、ゼネラルエレクトリック社の元技術者・役員のデール・ブライデンボー氏です。
「今回の作業を行う事で、1~3号機の核燃料取り出しを可能にする手段について検証が可能になるはずです。」

▽東京電力をどこまで信じていいのか?

損傷した原子炉建屋を覆うように建設された鉄骨のフレームにはすでにクレーンが取り付けられており、厳重に密閉された容器に入れて、1,331個の使用済み核燃料アセンブリ、そして202個の未使用の核燃料アセンブリを核燃料プールから取り出すことになっています。
通常の作業において原子炉の炉心から核燃料を取り出す作業を行う原子炉建屋に備え付けのクレーンと付属の設備は、2011年3月の事故で破壊されました。

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核燃料アセンブリは10メートル×12メートルの大きさで、破壊された原子炉建屋の4階部分にある核燃料プールの中に収納されています。
極めて毒性が高いことで知られるプルトニウムなどの放射性物質を含む核燃料アセンブリは、このプールの水深7メートルの部分にあります。

「核燃料アセンブリは1個1個、慎重に取り扱わなければなりません。」
この作業の実施を承認した原子力規制委員会の田中委員長がこう語りました。

核燃料アセンブリはまず収納用のラックから引き抜き、一個ずつ鋼鉄製の密閉容器に移し替えられますが、再加熱を防ぐため、全て水中での作業になります。
放射線の漏出を防ぐために厳重に密閉された容器は、核燃料アセンブリが入った段階で約90トンの重量になりますが、クレーンで核燃プールから取り出され、地上で待つトレーラに積み込まれます。
そして100メートルほど離れた場所にある、損傷を受けていない建物の中の共用プールに収納されるのです。

東京電力によれば作業を行うのは、6名ずつの6チーム計36名で、それぞれが2時間ずつ3交代で目視、そして手動でクレーンを使いながら作業を行います。
東京電力スポークスマンの永井氏は、水曜日午後、重い密閉容器を移動するテストを行うと語りました。

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「2011年3月の水素爆発の際に多数のがれき・破片が使用済み核燃料プール内に落下しましたが、そのうち大きなものはすでに除去してあります。」
燃料の取り出しを担当する東京電力の社員、原氏が福島第一原発を訪れた記者にこう語りました。
「万が一、核燃プールの水位が下がるようなことになれば、核燃料の温度が急上昇してしまいます。」

正常な状態なら核燃料の取り出しに要する期間は100日程です。
東京電力は今回の4号機の核燃料アセンブリの取り出しを2年間かけて行う予定にしていましたが、緊急を要するとの指摘が相次ぎ、作業時間を半分に短縮しました。

「私たち全員が心配しています。これまで私たちは毎日福島第一原発からもたらされる、数々のトラブルのニュースに接してきました。そうした中で核燃料の取り出しが始まってしまう事を、私たちはみんな懸念しているのです。」
こう語るのは広野町で不動産業を営んでいた、61歳らなる賀沢一郎さんです。
賀沢さんは津波で自宅を失い、現在仮設住宅で暮らしています。

「みんな心配しているし、大きな事故が起きないように願っています。ここにいる全員、東京電力を信頼している人間など一人もいないのです。」

http://www.nbcnews.com/id/53534958/ns/us_news-environment/t/fukushima-now-tough-part/#.UolkvCdDFnU
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昨日掲載したニューヨークタイムズの記事とほぼ同内容で、同じように長い記事です。
ロイターはイギリスの通信社(現在はカナダの企業に経営権があります)ですが、やはりアーニー・ガンダーセン氏の指摘が引用されています。

どうやら世界は、東京電力はもちろん日本政府の発表よりも、ガンダーセン氏の指摘の方に信頼を置いているようです。
日本人としては喜べない話ですが、一方で少しでも福島の真実を明らかにして欲しいと願う立場としては、喜んでいい話かもしれません。

しかし原発停止を訴えるどの野党も、ガンダーセン氏を日本に招いて、国内の専門家ともども議論をする場を設けようとしないのはなぜなのでしょう?
原発停止の議論に力を与えるための方策を、もっとよく考えていただきたいものです。

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