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【 どこまで通用する?安倍首相のいつもの手口 】《後篇》

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所要時間 約 6分

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安倍首相の本質は右翼の国家主義者であり、実は経済問題にそれ程の情熱は持っていない
議会からほぼ一掃、戦時中の日本の事歴について安倍首相以上にいかがわしい見解を持つ次世代の党
与党内の公明党の議席増と共産党の議席倍増、支持された『徹底的平和主義』

 

エコノミスト 2014年12月20日

 

選挙前、安倍首相は次のように表明していました。
すなわち農業政策と医療分野の改革を進め、労働市場をより柔軟にすると語り、さらには売電事業を発電事業から切り離し、電力市場の自由化を約束しました。
そしてTPP - 環太平洋パートナーシップの交渉において、アメリカ合衆国との合意は目前に迫っているとも語りました。

これらは日本が構造改革に意欲的に取り組んでいるという、強力な意思表示になり得ます。

しかし安倍首相の本質は右翼の国家主義者であり、実は経済問題にそれ程情熱を持って取り組んでいる訳ではありません。

日本の経済問題は安倍首相にとって手段に過ぎません。
安倍首相が真に目的とみなすものは国家の威信の回復であり、歴史的事実の書き換えすらその視野の中にあります。

安倍首相は選挙での勝利が確定するとすぐ、1946年に戦勝国アメリカに『課された』戦後の平和憲法を書き換えることは、自民党が『結党以来温め続けてきた願い』であると言及しました。

集団的自衛権01
憲法を改正するためには、衆参の両議院の3分の2の賛成、そして国民投票による過半数の同意を必要とします。
安倍首相は平和主義の定義の変更を含め、日本人自身の手による憲法制定の必要が必要であり、この点について「国内の理解を深めていく」事を誓いました。

しかし日本を強引にそうした方向に向かわせようとする試みがうまくいくとは思えません。
選挙によって議席数を増やした連立与党の公明党は巨大な仏教徒の組織を後ろ盾としていますが、強い平和主義路線を基調としています。

主義を同じくしながら、第二次世界大戦時における日本の事歴については安倍首相以上にいかがわしい見解を持つ政党は、今回の選挙で壊滅に近い状態に落ち込みました。
日本の外交的トラブルの原因を度々作りだしてきた82歳の石原慎太郎前東京都知事率いる極右政党、次世代の党は衆議院の議場からほぼ一掃されてしまいました。
これに対し徹底した平和主義路線を主張し続けてきた日本共産党は21と、その議席数を倍以上に増やしたのです。

安倍首相の率いる与党は国会において大多数の議席を押さえてはいるものの、これらの事実、そして低下を続ける支持率は、安倍政権が国民の多くが望まない変革を強引に進めようする際の大きな障害となるでしょう。

日本にとっての望み、それは安倍首相がこうした状況をできるだけ早く受け入れることです。

一方、立法上の課題はすぐに始る臨時国会の場で、審議が開始されます。
安倍内閣は9月の改造の後スキャンダルが相次ぎ、メンバーが入れ替わったそのままの体制で国会に臨みます。
2015-16会計年度の予算はこの課題に取り組むための最初の取り組みであり、公共事業等の大規模投資、そして円安が引き起こした食料品価格高騰に苦しむ家計負担の軽減などを盛り込んでいます。

予算作成と重要な意味合いを持つ4月の統一地方選挙の後は、より難しい仕事に取り組まなければなりません。

集団的自衛権の行使、具体的には同盟国であるアメリカ合衆国の軍隊が攻撃を受けた場合、自衛隊が援護のため武力行使できるようにするための一連の立法措置がありますが、国内の激しい反発が予想されます。

国民の大きな反発が予想されるもうひとつの課題が、国内のより多くの原子力発電所を再稼働させる安倍政権の政策です。
鹿児島県の薩摩川内市にある川内原発の2基の原子炉の再稼働は、すでに原子力規制委員会の審査を通り、地元自治体の同意も取り付け、再稼働は秒読み段階に入っています。
次に再稼働が予想されるのは福井県の高浜原子力発電所です。

川内原発エコノミスト安倍政権の顧問の中には、原子力発電所の再稼働の推進はそれほど難しいことではないと語るものもいます。
しかし原子力発電に対する信頼が失われてしまった今、再稼働はそれぞれの原子力発電所において発電手段の是非に関する論争を呼び、立地する自治体と周辺自治体の見解の相違も浮き彫りになるかもしれません。

政府内の改革推進派を落胆させたのは、安倍首相が選挙期間中構造改革の重要性にほとんど言及しなかったことです。

安倍首相の支持者は、構造改革の障害の最も大きなものは官僚機構と自民党内の守旧派だと主張しています。
しかし今回の選挙戦の勝利により、官僚機構に対しても、自民党内においても、安部首相の統率力は強化されたはずです。

もうこれ以上、手をつかねる理由などはありません。

これからの3~4か月、安倍首相も、そして日本も正念場を迎えることになります。

 

http://www.economist.com/news/asia/21636792-shinzo-abe-wins-again-what-will-he-do-his-mandate-abe-habit
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エコノミストならではの『すぱっ!』という切り口、今回の記事で堪能しました。
いつもそうですが、私自身が『なる程!』と感心した部分を見出しとして使わせてもらいました。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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