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【 もうこれ以上、巨大企業による電力支配を許すな!】[ガーディアン]

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原子力発電・石油エネルギー陣営と、再生可能エネルギーとの戦い
必要な全電力を再生可能エネルギーによって賄い、大企業支配に立ち向かったドイツの小さな村

ダミアン・キャリントン(ドイツ・フェルドハイム)
ザ・ガーディアン(英国) 5月30日

この国は2020年までに全発電量に占める再生可能エネルギーの割合を35%にするつもりです、たとえどれだけコストがかかっても。
ドイツベルリン近郊の村、フェルドハイムには43基の風力タービンが点々と存在し、農家の庭先にある動物たちの排せつ物や堆肥などを天然ガスに変換・発電を行う施設もあります。

澄み渡った青空の下、ドイツは先週末再生可能エネルギーの歴史に、また新たな輝ける実績を書き加えました。20基の原子力発電所に等しい量の発電を、太陽光発電によって成し遂げたのです。
それは原子力発電・石油エネルギー陣営と再生可能エネルギーとの戦いでした。
そして大企業が所有する巨大発電所と、地域のコミュニティが共同で運営する小規模な発電施設との戦いでもあったのです。
再生可能エネルギーの目覚ましい成功により大企業の利益は脅かされ、2013年の選挙で再選を目指すアンゲラ・メルケル首相にとって、エネルギー問題は争点のトップとして避けて通れないものになりました。

「私たちは尚、大企業4社によって支配されています。」
旧東ドイツ地区にある田園地帯の平原に立つ高さ85メートルの風力タービンの下に立ち、ヴェルナー・フローライター氏がこう話しました。
その4社はドイツを4分し、それぞれの場所で独占的に電力供給を行っている、RWE、E.ON、ヴァッテンファル、そしてEnBWです。

ライ麦畑の穂がさざ波を立て、狐の鳴き声が時折聞こえる森の近くにたたずむ小さな村、フェルトハイムはこの大企業支配に立ち向かっていきました。
この村の128世帯の住民たちは43台の風力タービン、ソーラーパネル、そして堆肥や下肥の類をガス化して発電を行う設備を配置し、村の全電力を賄うようにしてしまったのです。

フェルトハイムの村に点在する急勾配の屋根を持った、ずんぐりした格好の家々をつなぐ送電網の使用料金について、この大企業は法外に高額な使用料を請求しました。そのためフローライター氏自らが経営する会社、エネルジーケレは自前の送電網を建設しました。
フェルトハイムの『独立のための戦い』はついに全面戦争の様相を帯びましたが、フェルトハイムを支持する動きはドイツ全土に広まりました。
2011年、再生可能エネルギーはドイツの電力の20%を供給しましたが、その発電手段の主なものは家庭用の太陽光発電装置、農家の風力発電装置、そして地方の農家の庭先の植物を原料とするバイオマス発電装置だったのです。
そして原子力に対する国民の嫌悪感情が福島第一原発の事故により最高潮に達した時、西再生可能エネルギーへの転換はまさに雪崩を打つように早まったのです。しかし再生可能エネルギー発電設備の10分の1弱を大企業4社が握っていることも事実です。

「新しいエネルギー・システムには社会を変えて行く、という側面を持っています。そのことを人々が理解しなければ、変化は起きないのです。」
このように語るのは、ドイツ与党のCDU/CSU党の保守派の議員で、元フォレスター会(慈善団体)のメンバーであるヨセフ・ゲッペル氏です。
ゲッベル氏は所属する政党の中では「ちょっとした宗旨変え」をしたと見られていますが、氏自身はドイツでは保守主義者が環境保護論者であることは別に矛盾しない、と語ります。

「私の村では、住民たちは大企業の支配から独立したいと考えています。」
再生可能エネルギーの人気の別の理由について、環境科学財団代表のアンドレアス・クレイマー氏がこう語りました。
「人々は、4社の巨大エネルギー企業を心から嫌っています。4社がこれまでどれだけ甘い汁を吸ってきたのか、身にしみてわかっているのです。」

しかし与党連合の政治家たち、そして大手エネルギー会社や大企業はこうした考えに異論を唱えています。
再生可能エネルギーによる地域ごとの細分化された発電方法は、従来の大企業が原子力、火力、天然ガスなどを使って一か所の発電所で大規模な発電を行うやり方より、かえって費用が高くつき、しかも安定的な供給能力に問題がある、というのです。
しかし、4大エネルギー企業はドイツのエネルギー政策に関して、新たなプランを提示しているわけではありません。
「私たちは民主的手続きによる、政治的な多数意見に従います。」
E.ONの広報担当者がこのように述べました。同社は現在、大規模な洋上風力発電設備を建設中です。

野党社会民主党の議員ウルリッヒ・ケルバーはこう語ります。
「まだまだ多くの人々は、分散化されたエネルギー・システムというものを、想像できないだけなのです。私たちはすでに分散化されたシステムによって、情報提供の在り方が大きく変わったことを体験しているはずです、インターネットという名の。エネルギー政策においても、こうした効率的で民主的な分散化が必要なのです。」

ドイツのエネルギー政策の転換[Energiewende エナーギーヴェンデ]が目指すところは、大規模で野心的な変革です。
2050年までに全エネルギー消費の50%をカットし、電力の使用量も25%減らそうというものです。
一方、電力消費量がドイツの半分である英国は、2050までに電力使用量が33%から66%の間で増加する、と見込んでいます。
この時点でドイツは全電力の80%を、再生可能エネルギーにより発電する計画です。

ドイツのエネルギー政策の転換は、思い切ったものでした。
ドイツ語で「wende」は、海の上の航行で90度の方向転換を意味します。

福島第一原発の事故を受け、ドイツは原子力発電からの全面撤退を決意しました。
現在すでに半分の原子炉が停止中であり、残りについても10年以内にすべて廃炉作業に入ります。
大企業による独占を嫌う市民たちは、二酸化炭素を排出する火力発電はもちろん、天然ガスによる火力発電からも撤退することを望んでおり、残された現実的な選択肢は再生可能エネルギーしかありません。

福島ともう一つの巨大原子力災害、チェルノブイリを目の当たりにしたドイツ市民は、これからの20年間、ひたすら新たな社会の建設に取り組むことになるしょう。
1986年に発生したチェルノブイリの事故は、直接的にはドイツ初の環境省の設立につながりました。
続く1990年、ドイツは小規模な再生可能エネルギー設備に対する補助金の交付と税制上の優遇を行う[Fitsプラン]を初めて導入、これが再生可能エネルギーの普及に火をつけることになりました。
「ヨーロッパの信用不安問題に次いで、エネルギーの政策転換を成功に導けるかどうかが、アンゲラ・メルケル政権にとって、重要な問題となることは間違いありません。」
ドイツ政府のこうかん高官がザ・ガーディアンのインタビューにこう答えました。

もう一つ、懸念があります。それはドイツの再生可能エネルギーの普及に一役買った、[Fitsプラン]による経費の増大です。
この措置による納税者の負担額は、年間140億ユーロ(1兆4,000億円)に上ります。
財務省の高官は、ドイツ国民が再生可能エネルギーに関するこれ以上の税負担について拒否する態度を明らかにすることなれば、これまでの政策の転換点を迎えることになるだろう、と語りました。

しかし、そうした転換点が訪れるのはまだ先の話のようです。
[Fitsプラン]を終了させ、その支出を止めようという議案は議会を通過しませんでした。
次の戦いは2か月後、夏休みの前になる見込みです。ドイツの中国の太陽光パネルメーカーの安売り攻勢により、ドイツ国内の5社の大きな製造業者のうち、4社までが倒産してしまった問題について、徹底的な議論を行う構えです。
[Fitsプラン]は費用ばかりが高くつく、と批判する地位の高い研究者は、次のように攻撃しています。
「多額の予算を使った挙句、中国に補助金をさらわれてしまう。」

納税者の間にも、批判的な意見があります。
「貧しい人々が支払った税金で、歯科医がソーラーパネルを設備している。」
というものです。歯科医はドイツでは裕福な中間層を象徴する職業です。
しかしグリーンピースのトビアス・ミュンヒマイヤー氏は、以下のように指摘しました。
「電力を多量に使う大企業が、[Fitsプラン]に関する納税義務を負っていないことに留意しなければなりません。」
ドイツの環境行政にまつわる経済的な影の部分にも、批判が向けられています。
ヨーロッパが設定したエネルギー資源政策に反対するものです。
2050年にあらゆる建物からの二酸化炭素排出量ゼロを実現するため、ドイツが目標としているエネルギー政策には、非常な困難が伴います。
これに対しBMV、バイエル、BASFなどの巨大製造業は、自らにその厳しいノルマを課すことに難色を示しています。
「この政策がこの国の経済成長の足かせとなる可能性があり、そのことが各企業との交渉を非常に難しいものにしています。」
財務省の高官がこう語りました。

難しい課題もありますが、それでもドイツが再生可能エネルギー、持続可能エネルギー社会に向かう足取りは力強いものです。
2020年には再生可能エネルギーによる電気の供給は、現在の20%から35%になります。
国民の3分の2は、この目標は確実に達成される、あるいは予定より早く達成される、と考えています。
「それは希望的観測ではありません。再生可能エネルギーへの取り組みを一つずつ積み重ねてきた、その実績がものを言っているのです。」
ベルリンのタグシュピーゲル新聞社の特派員、ダグマー・デメルも同じ意見です。
「ドイツ国民は、ドイツの技術者たちを信頼しています。」

ドイツとは対照的に、英国の再生可能エネルギーによる発電量が全体の9.5%というのは、いかにもぱっとしません。

ドイツ再生可能エネルギー協会会長のライナー・ヒンリクス-ラールヴェスはドイツが[Fitsプラン]を導入後の2010年まで、英国には個人に対しても、地域のコミュニティーに対しても、何の優遇措置も取ってこなかったことを批判しました。
早くにこうした制度を導入していれば、各電力会社もかなりの規模の再生可能エネルギーシステムを構築していたに違いありません。個人や地域のコミュニティーに至っては、どのような配慮も受けることが出来ませんでした。
ドイツでは再生可能エネルギーシステムの所有者の65%が個人か、地域の小さなコミュニティです。
一方の英国の数字は10%未満に過ぎません。

ドイツの初の環境大臣は、クラウス・テップァー(保守派)でした。彼は[Energiewende エナーギーヴェンデ]が直面する問題について、明快な見解を持っています。
「何としても[Energiewende エナーギーヴェンデ]は成功させなければなりません。成功すれば、数限りない恩恵があります。しかしもし失敗すれば、世界におけるドイツの印象が台無しになってしまう事も覚悟しなければなりません。」

再びフェルドハイムの小さな村に目を転じてみましょう。
フローライターはこの村にも、電気代が3割も安くなったにもかかわらず、電力の独立に反対する人々がいることを冷静にとらえています。
「反対する人はどこにでもいますから。この村にも2、3軒、いまだにE.ONから電気を買っている家はあるのです。」

http://www.guardian.co.uk/environment/2012/may/30/germany-renewable-energy-revolution?INTCMP=SRCH
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/may/30/germany-renewable-energy-revolution?INTCMP=SRCH

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【フロリダ、アラバマの風景を一変させた熱帯嵐『デビー』】
アメリカNBCニュース 6月24日

叩きつける激しい雨に立ちつくす若い女性。フロリダ州セダーキー。

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