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飢餓・失業・アルコール中毒、それでも誇り高き少女は『風に向かって立つ』

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所要時間 約 7分

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【 平原の子どもたち - 隠されたアメリカ 】


アメリカABCニュース 10月14日

12歳の少女ルイーズ・クリフォードは、パインリッジ居留地から丘を登ったところにあるグローリー・ビーで乗馬を楽しんでいます。
ここは彼女が愛する土地へとつながる、神聖な道なのです。

「ぜんぶ神聖なものなの。サルビア、スウィート・グラス、踊り、耳飾り、馬、そしてバッファロー。
ひとつひとつが強いものだし、私の血の中に流れている。だから私と関係がありものばかり。」
ルイーズが話すのは、ヨーロッパ人がこの地を支配する一万年前、ラコタの地で栄えていた彼女の祖先たちの伝統と儀式についてです。

かつてサウスダコタ州の山々と猛吹雪にもたじろぐことの無かった人々は、現れた白人の入植者たちに対し、最後に降伏しました。
しかし今は別の試練に直面しています。
報告によれば、80パーセントにのぼる成人がアルコール中毒であり、自殺率も高くなっています。
ルイーズ自身、うつ病と闘っています。

「私は絵を描くのが大好きだし、文章を書くことも大好き。私が文章を書く時は、ほとんどが自分宛の手紙なの。私が今何を感じ、どうしたら悲しい時をやりすごすことができるのか。」
と彼女は話します。

まだ中学2年生でも、ルイーズはすでに絶望の世界に耐えています。居留地の多くの子どもたちと同じように、彼女の家族はアルコールの害を受けています。
彼女は今のルイーズと同じ年齢で飲酒を始め、今やアルコール中毒になってしまった母親のことをいつも心配しています。

ルイーズと彼女の母親は、サウスダコタ州マンダーソンの老朽化した公営住宅に住み、ルイーズが通う部族経営のウーンデッドニーの地区の学校は、そこからまっすぐ行ったところにあります。彼女は実の父親については何も知りません。
UCLAの報告では、サウスダコタ州ではアメリカインディアンの生徒の70%が高校を中退してしまいますが、ルイーズは彼女のクラスの中で際立った存在です。

「子供たちは、美しい花壇の花のように扱われる必要があります。きちんと手入れをし、水をやることを忘れず、みんなで丹誠を込めて育てなければなりません。ところがここでは、子どもたちは雑草のように扱われているのです。」
ルイーズの学校の校長、74歳のマーニー・ホワイト・ウルフは語ります。

病気がちのホワイト・ウルフですが、子供たちのためにたゆまぬ努力を続けています。
彼女の学校は運営資金が不足しており、1960年代に建設された校舎について、彼女は床下と床タイルの下にあるアスベストについて心配しています。
しかし、こうした点を改善しようにも資金がありません。
もっと多くの教師、書籍やコンピュータを揃えるための資金すら、満足に賄えない状態なのです。

この学校の子どもたちは、家庭で慢性的な栄養不良状態に置かれているため、学校給食をむさぼるように食べます。
「子どもたちは週末、自宅でほとんど食べ物を与えられないため、月曜日には飢餓に近い状態で学校にやってくることが頻繁にあります。」
ルイーズの家でも、度々食べるものに事欠いています。

祖先から受け継いだラコタの地の文化が育んだ強さが、ルイーズのその姿に現れています。
彼女の『タタイ・ヒアナ・ジュエイリ』というインディアン名は『風に向かって立つ』という意味だと、私たちに教えてくれました。
「私は自力で立ち続けようとする一本の雑草なの。いろんな試練に負けてしまう雑草が多いけど、私は違うわ。」
「私は強い。私にはたくさんの力がある。どんなことがあっても負けないつもり。嵐に出会ったとしても、私は決してあきらめない。」

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この記事のテーマでもあるインディアン居留地については、Wikipediaにも詳細な記述があり、一度ぜひお読みいただければ、と思います。

私たち日本人と同じ黄色人種であるアメリカ・インディアンの歴史は、アメリカ大陸の地平線に白人入植者が現れた時から一変します。
以後のアメリカ・インディアンの歴史には絶滅、強制移住、収奪、貧困、飢餓などの言葉が頻出するようになります。
「今年、我々がたくさん殺せば殺すだけ、来年殺す分が少なくて済む。彼らはすべて殺されなくてはならない。でなければ、一種の貧民として養われるべきである」
南北戦争で活躍した北軍軍人ウィリアム・シャーマン(1820-1891)の言葉ですが、その後も扱いに著しい改善などは無く、現在に至っているようです。
そうした事実がこの記事の『隠されたアメリカ』という、サブタイトルを導き出すことになったのでしょう。

ところで冒頭に掲げたダイアン・ソイヤーさんの写真には、彼女のジャーナリストとしての決意があふれています。
がに股に立ち、あごは角張り、とてもエレガントとは言えない姿ですが、少女たちの運命に慟哭し、何としてもこの少女たちを守りたい、というソイヤーさんの決意が伝わってくるようです。

この半年、欧米を中心に海外のニュースを訳し続けてきて、気がついたことがあります。
それは普通の人々、特に何らかの運命に見舞われ、困難な状況にある人々の姿を丹念に、丁寧に伝える、という姿勢です。
報道機関にこのような姿勢がある限り、富も権力も持たない人々が社会の闇の中に葬られる危険は減ることでしょう。

この番組は全米に反響を呼び起こし、寄付・援助・激励のメッセージがABC放送に殺到したようです。
ダイアン・ソイヤーさんは17日の放送で、満面の笑みを浮かべながら視聴者に報告し、なおも援助を募っていました。

http://abcnews.go.com/US/viewers-open-hearts-children-plains/story?id=14756399

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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