ホーム » エッセイ » [ 写真集 ]野生生物写真大賞2013[米国NBC]
アメリカNBCニュース
[飛行の軌跡]
コナー・ステファニソン(カナダ)エリック・ホジング作品賞
このメスのアメリカフクロウはカナダ、ブリティッシュコロンビア州バーナビーのステファニソンの自宅近くにテリトリーを持っています。
ステファニソンはアメリカフクロウが好んで止まる木の枝の近くにカメラとライトをセットし、その通り道、カメラの少し上の方にネズミの死がいを置いてフクロウがやって来るのをじっと待ちました。
「フクロウはネズミをつかむといつもの枝に戻りました。そしてつがいの相手を呼び始めたのです。野生の鳴き声を聞いて、最も興奮した一瞬でした。」
2013年の野生生物写真大賞の受賞作品が発表され、ロンドンの自然史博物館で表彰式が行われました。
今回は96か国から43,000点に及ぶ応募作品が寄せられました。
[水中の白熊]
ポール・サンダース(アメリカ)固有環境観察部門
ホッキョクグマの写真のほとんどは陸上、あるいは氷上のものであり、その事は人間にとってその生態をとらえることが、技術的にいかに難しいかという事を物語っています。
しかしホッキョクグマは概ね水棲生物であるということが言えます。
サンダースはカナダのハドソン湾で真夏、船外機付きの大きなゴムボートの上からこの写真を撮影しました。
彼は陸地から80キロほど沖合の場所で、若い雌のホッキョクグマを見つけました。
クマが水中に滑り込むと、彼は次に何が起きるのかをじっと待ちました。
「クマは氷と水しかない世界でボートの周りをゆっくりと泳いていました。ホッキョクグマが水面下から私を見上げている間、私には彼女の規則正しい、ゆったりとした呼吸の音が聞こえていました。次に彼女はどうするか、いやがうえにも好奇心が高まり続けました。」
[困難な状況]
アイザック・プレトリアス(南アフリカ)野鳥生態部門
5月になると海上で暮らしていたクロアジサシはエサを求めて陸上に集まります。同じころ、セイシェル諸島の小さな島では、固有種のジョロウグモが直径1メートル50センチほどの途方も無く強い糸で巣を作ります。
このクモの糸は絹糸と同じくらいの強度があり、最高で高さが6メートルほどの場所に巣が作られます。
この高さはクロアジサシの飛行圏内であり、その結果クモの巣に度々捕まってしまうことになるのです。
クロアジサシが巣から逃れようと羽をばたつかせればするほど、クモの糸は羽毛に絡みついてしまいます。
結局この時クロアジサシを救い出したものは、人間の手でした。
[獲物をめがけてとびかかる瞬間]
コナー・ステファニソン(カナダ)エリック・ホスキング作品賞
「獲物に飛びかかる瞬間を予測すること、それが一番難しい課題でした。」
ステファニソンは雄大な風景にもまして、野生生物の生態をカメラに収めようとワイオミング州のイエローストーン国立公園にやって来ました。
滞在の最終日、彼はこの1匹のキツネと出会いました。
キツネは獲物を探すのに夢中になっており、おかげでステファニソンは車を降り、大きな岩の影に身を隠し、カメラを構えることができました。
キツネは草原の中で前や後ろを注意深く見まわしていましたが、次にある一点を見つめたまま動かなくなりました。
そして徐々に身構えはじめ、おかけでステファニソンは次に何が起きるかを予測することが出来ました。
そして狐が飛び上がった瞬間にステファニソンは夢中でシャッターを切り、キツネは着地した瞬間に一匹の野ネズミを捕まえたのです。
[小ぜり合い]
ジョー・マクドナルド(アメリカ)哺乳類の生態部門
アメリカからやってきたマクドナルドはブラジルのスリーブラザー川のボートの上でうだるような暑さの中、川岸の下草の中から姿を現した雄と雌のジャガーが求愛行動を行うものとばかり思っていました。
メスはくつろいだ姿で休んでおり、それを誘惑のポーズと受け取った雄が近づいていくと、メスのジャガーが突然立ち上がり、唸り声をあげて威嚇しました。
雌は爪をいっぱいに伸ばし、オスがその爪を避けようとして後足で立ち上がると、そのままメスに投げ飛ばされてしまいました。オスはその間、爪を出そうとはしませんでした。
「私はわずか2、3秒の間に放出されたエネルギーの巨大さに驚くほかありませんでした。」
2匹は再び求愛の儀式を再開するため下草の中に姿を消し、後には決定的瞬間をものにしながらも驚きから冷めやらぬマクドナルドが一人残されたのです。
[ダイビング仲間]
ルーイ・ハビエル・サンドバル(メキシコ)冷血動物の生態部門
メキシコのユカタン半島に広がる海岸は、絶滅危惧種に指定されたアオウミガメの産卵場所です。
メキシコにも押し寄せた開発事業はアオウミガメの棲息地域を減少させてしまいました。
しかし幸運なことに、現在は産卵場所が保護され、産卵によって個体数が増加するよう対策が取られるようになりました。
サンドバルは最愛の野生生物の写真を撮影するため、普段はリゾートの観光カメラマンとして収入を得ています。
「この1メートルを超えるアオウミガメはいったん私の方を見たものの、特に警戒するでもなく、海草を食べていました。」
しかし近年、サンドバルハ黄色化がかった藻の繁殖がリゾート地からの汚水の流れ込みが原因である可能性に気が付きました。
[小さな頭に鈴なりになって]
ウダヤン・ラオ・パワル(インド)少年野生生物カメラマン部門
14才のウダヤン・ラオ・パワルはチャンバル川のインドガビアル・ワニの生息地の近くで、一晩のキャンプをしました。
彼女は夜明け前にカメラを持って、孵化したばかりのワニがいる岸の岩陰に忍び寄りました。
「私はワニたちがほとんど音を立てることなく、卵の殻を破って外に出る様子を見ていました。すると川面から急にメスのワニが顔を出したのです。それを見て孵化したばかりのワニたちが泳いで行き、メスのワニの頭の上によじ登っていきました。その場所が一番安心できる場所のようでした。」
ほどなくウダヤンは、そのメスのワニが孵化したばかりのすべての幼生の世話を始めたことで、
その場所のワニたちの中心的な存在であることに気が付きました。
インドガビアル・ワニはかつてインド大陸の(土)の川にもいましたが、現在はかつての生息地のわずか2パーセントの場所に、約2,000匹ほどが確認されるだけになりました。
「チャンバル川はインドガビアル・ワニにとって、最後の楽園なのです。」
ウダヤンがこう語りました。
[煮えたぎる大釜]
セルゲイ・ゴルシコフ(ロシア)自然風景部門
2012年11月29日、ゴルシコフは待ち望んでいた知らせを受け取りました。ロシアのカムチャッカ半島にあるポルスキー・トルバシクが噴火を始めたのです。
「最後の噴火以来36年ぶりでした。私はすべてを投げうって現場に向かいました。」
現場に飛ぶと、火口から200メートル以上の溶岩流が流れ出しているのを見ることが出来ました。
彼は直ちに反応し、体を開いたヘリコプターのドアに縛り付けました。
彼は速く働きました。そして、ヘリコプターの開いたドアに結びつけられました。
「私はレンズを素早く交換しながら、さまざまなアングルからシャッターを切り続けました。
こんなチャンスは早々訪れるものではないことが解っていましたから、一枚でもいいから、今目撃していることをそのまま伝えることが出来る写真が撮れていることを祈り続けていました。」
そしてそれは、本当に彼の最後のチャンスになりました。
午前1時に、新たな爆発が起き、大量の溶岩が地響きを立てて進み、ベースキャンプも危険な状態になりました。
巨大な溶岩弾がキャンプの近くにも飛んできたのです。
一面に灰と煙が巻き上がり、最早写真撮影どころの話ではなくなってしまったのです。
[雪景色]
ジャスパー・ドエスト(オランダ)創造的作品賞
地獄谷温泉で今やすっかり有名になったニホンザルの撮影をしているうちに、ドエストは時折吹きつける寒風が作り出すシュールな景色に魅了されるようになりました。
吹きつける風は温泉から挙がる蒸気を巻き上げていきます。
もし雪が降っていれば、温泉に浸かっているニホンザルの周囲で、雪片が風に舞いながら蒸気の熱で溶けていく様子は一層魅力的な景色として目に映ります。
一年後、再びこの地を訪れたドエストは今度こそ決定的瞬間をものにしようと決心を新たにしていました。
しかし温泉の水面には一面蒸気がたちこめ、見渡す限りニホンザルの姿はありませんでした。
しかし、蒸気が水より上に回り始めたので、猿が見える所にいませんでした。
「そのとき突然、1匹の大人のニホンザルが姿を現し、温泉の真ん中にある岩の上に飛び乗りました。私は急いでカメラの雪を払いのけながら、やっと待ち望んだ瞬間がやってきたことを実感していました。」
[ゾウという生きもの]
グレッグ・デュ・トア(南アフリカ)年間最優秀野生生物カメラマン
大賞を受賞したこの写真は、アフリカのボツワナ共和国の北部チェリ動物保護区のゾウたちの水飲み場で撮影されたものです。
デュ・トアは地面すれすれにカメラを構え、「巨体を持ったおとなしい動物たちの立ち居振る舞いを、そのまま画像にするため」スローシッターを切ることを選択しました。
http://www.nbcnews.com/slideshow/news/wildlife-photographer-of-the-year-2013-53286666/
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今日はいつもと違う構成です。
ここの所、安倍首相の靖国参拝について各国メディアが一斉に反応したため、そのご紹介が続いていました。
この国の未来を思い、人権迫害国家の典型のようなあの軍国主義日本がよみがえるのかと、暗澹たる思いに苛まれていました。
しかし私は国家主義者である政治家の伝記作家になったつもりも、なるつもりもありません。
ちょっと気分転換したくなりました。
そんな時見つけたのが、この写真集です。
野生の生き物たちにはどんな邪心もありません。
その姿が感動を呼ぶのでしょうか