ホーム » エッセイ » 過労死:日本の会社社会にはびこる『最も深刻な』問題
ひと月に最高122.5時間 の時間外労働を強いられた、『外国人訓練生』の突然死
低賃金と劣悪な労働環境を批判されてきた日本の『外国人訓練生』、安倍政権の下で増加
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2016年10月18日
故国で暮らす妻と娘との再会を3か月後に控え、フィリピン人青年ジョーイ・トチャンが抱えていた厳しい勤務スケジュールは、とうとう彼の命を奪うことになってしまいました。
2014年4月、中部地方の派遣労働者として働いていた27歳のフィリピン人青年が、会社の寮で心臓発作のため死亡しました。
10月中旬労働基準監督局は、トチャンの死が長時間の時間外労働を強いられたことに直接的な原因があるとの決定を行いました。
日本政府は今年に入り、日本の全勤労者の20%が働き過ぎによる死亡、すなわち過労死の危険にさらされていると警告し、今回の辞令もこうした時代遅れの労働慣行に原因があるとの指摘を行っていました。
10月初め、日本で初めて政府の手になる過労死に関する白書が公開され、日本の労働者の5人に一人が過労死の危険にさらされていると報告しました。
何百人もの勤労者の死は、働き過ぎに起因するものです。
脳卒中、心臓発作から自殺に至るまで多数の深刻な健康被害とともに、日本では過労死の発生が毎年報告されており、批評家によればこうした兆候は通常長時間の時間外労働を強いられ、満足に休日も取得できない労働者に多く発生しています。
過労死に関する白書は、一部の企業がより良い仕事と生活のバランスをとれるよう取組を始めている一方で、他の国々と比較して日本人の勤労者が職場で過ごす時間は遥かに長いものであることを明らかにしました。
新聞報道によれば、2015年12月から2016年1月の間にアンケート調査を受けた会社の22.7%で、その従業員の何割かが毎月80時間以上の時間外労働を行っていたと奉公しています。
ひと月に80時間以上の時間外労働は、過労死による死亡の危険性が著しく増加する基準となっていることが、公式に認められています。
白書は米国の労働者の16.4%、英国の12.5%、フランスの10.4%に対し、この数値をかなり越える21.3%という日本人労働者が、毎週平均49時間以上の時間外労働を行っていることも報告しています。
2016年3月までの2015年度、過労死に関する賠償請求件数は過去最高の1,456件に達しました。
この中で、特にその割合が高いのが健康産業と深刻な労働力不足の問題に直面している福祉産業です。
しかし過労死の犠牲者救済に取り組む弁護士団体の川人博事務局長は、日本政府は過労死をなかなか認めようとはしていないため、実際の犠牲者の数は公表されている数の10倍以上になる可能性があると指摘しました。
「政府は数多くのシンポジウムを主催し、過労死問題についてポスターを制作するなどしています。しかしそれは宣伝に過ぎません。」
川人氏はこのように語りました。
「本当の問題は労働時間を現実に減らすことですが、この点に関する政府の取り組みは十分とは言えません。」
10月初旬、東京の労働基準監督署が日本の巨大広告代理店である電通に勤務していた24歳の高橋まつりさんの自殺の原因が、長時間労働を強いられたことによるストレスが原因であるとの判断を示して以降、長時間労働がもたらす健康被害と生命への危険が大きく取り上げられるようになりました。
高橋さんは昨年12月自ら命を絶ってしまいましたが、その数週間前、ソーシャルメディアを通し当時の心境を綴っていました。
「もう、死にたい…」
投稿のひとつにはこうあり、別のものには次のように書かれていました。
「肉体的にも精神的にも、もう限界です。」
高橋さんの母親であるゆきみさんは、まつりさんの死は従業員の健康福祉を犠牲にしてまで会社の業績を追い求める企業があることを証明するものだと語りました。
「娘は一週間の睡眠時間がたった10時間しかないことを友人や同僚に打ち明け、唯一の望みは充分な睡眠をとる事だと話していました…なぜ私の娘は死ななければなかったのでしょうか?」
彼女はTBSテレビの取材にこう答えています。
昨年4月電通に入社したまつりさんはインターネット宣伝部門に席を置き、週末も含めひと月に100時間以上の時間外労働を強いられ、それが恒常化していました。
厚生労働省は仕事の重圧が直接的原因と判断できる自殺並びに自殺未遂が、今年3月までの1年間に93軒発生したことを報告しました。
しかし警察庁と総理府は、仕事が原因を形成している実殺件数が2015年1年で2,159件に上っていると報告していました。
岐阜労働基準監督署によれば、フィリピン人青年のトチャンの時間外労働時間は1ヵ月につき78.5時間から122.5時間に上っていました。
彼の仕事はスチールを切断し、溶解するための準備を行う事でしたが、決して多くは無い給料のほとんどを故国で待つ妻と5歳の娘のもとに送金し続けていました。
死亡する前日、彼は娘への贈り物を買うために買い物に行くつもりだと予定だった同僚に語っていました。
トチャンは外国人訓練生プログラムの下で日本国内で働いている210,000人のうちの1人でした。
この制度は1993年に導入されましたが、労働者としての権利がほとんど認められておらず、給与水準も極めて低いために長年組合などから批判を浴びてきましたが、現在の安倍首相下で拡大を続けています。
今回の2つの過労死事件は、日本政府に対し労働者への重圧を軽減するための対策を採るよう求める結果となりました。
保守的な読売新聞でさえ、日本には「先進国中最悪となる長時間労働の規準」があると指摘し、2014年に過労死を減らすために行われた法改正も、自分の健康や生活を犠牲にしてまで会社のために尽くすという献身と自己犠牲の日本の仕事文化を変えることはなかったと伝えました。
「従業員に対し、極端に長い時間働くことを強制する職場は、結局は生産性を向上させることは無い。」
新聞はこう伝えていました。
https://www.theguardian.com/world/2016/oct/18/death-from-overwork-japans-karoshi-culture-blamed-young-mans-heart-failure
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10月14日~21日の報道写真から
アメリカNBCニュース 10月21日
10月21日、イラクのモスルの南にある難民避難センターで食料の配給を待つ、新たに収容された難民。(写真上)
10月20日、モスルの南約55キロ地点を行く、イラク政府軍の兵士。この日、イスラム国(ISIS)に対する複数の攻撃が予定されていました。(写真下)
http://www.nbcnews.com/slideshow/week-pictures-oct-14-21-n671036