ホーム » エッセイ » 米国の核戦争実施計画、その立案者が告発する!《8・完結》
トランプのように、敵性国家に対しあからさまな脅迫を行う大統領は史上初めて
アメリカ政府の安全保障担当の高官に内部告発に踏み切る勇気を求める!
核兵器はいざとなったら使った方が勝ち - 狂気に支配されている北朝鮮、そしてアメリカ
デモクラシー・ナウ 2017年12月5日
ホアン・ゴンザレス :
さて現在の北朝鮮の脅威とそれに対するトランプ大統領の対応についてのニュースを聞いていると、大統領は北朝鮮を火の海にしてやるとさかんに脅迫していますが、彼らの議論に対するあなたの正直な感想をお聞かせください。
私はアメリカ国内では現在よりも1980年代の方が、『核の冬』に対する恐怖感や核兵器に対する危機意識は切実だったように思うのですが。
ダニエル・エルスバーグ:
これまでお話してきたように、アメリカの歴代大統領は核兵器の使用に関して実質的には脅迫ともとれる発言や行動を行ってきました。
しかしトランプのように、あからさまな脅迫を行う大統領は史上初めてです。
そして核兵器保有国に対してこうした威嚇を行うのは、キューバのミサイル危機以降初めてになります。
ハリー・トルーマン大統領は67年前の朝鮮戦争当時、北朝鮮に対して核兵器の使用をちらつかせたことがありますが、当時の北朝鮮は核兵器保有国ではありませんでした。
そして、東京とドレスデン、ハンブルグを除けば、敵国を世界が見たことも無いような火炎地獄につき押さすために核兵器は必要ありませんでした。
朝鮮戦争当時、アメリカは核兵器を使わずに北朝鮮を文字通り火の海にし、人間が作ったものは柱一本残さないような攻撃を行いました。
したがってトランプと同年齢以上の北朝鮮のすべての人びとにとって、アメリカが作り出す『火の海』は現実に体験させられたものなのです。
トランプは朝鮮戦争当時4歳だったはずですが、朝鮮半島の人びとにとっては消し難い記憶です。
従ってトランプの脅迫を聞いた朝鮮半島の人びとは、「アメリカはまたあれをやるつもりなのだ」という恐怖にとりつかれて当然なのです。
そして今日、北朝鮮は核兵器保有国になっています。
もし彼らがまともな頭を持っていれば、自分たちからアメリカを攻撃することは無いでしょう。
なぜならそれは完全に自殺行為だからです。
北朝鮮のすべての男性、女性、そして子供たちは必然的に皆殺しにされてしまうでしょう。
従って北朝鮮の方から先制攻撃を仕掛けて来ることはあり得ないと思います。
ではアメリカ側の先制攻撃に対し、北朝鮮は報復攻撃をしないと考えて良いでしょうか?
少なくとも北朝鮮は韓国に対する核兵器使用に踏み切るでしょう。
アメリカと一緒に軍事演習を繰り返してきた相手に対し、報復することに専念することになると思います。
それは自殺的行為ですが、少なくともそこまでは思い切ることになると思います。
それが核兵器の使用がもたらす必然的な結果であり、回避することは不可能であり、まさに『目には目を』の論理です。
核兵器は報復攻撃よりは先制攻撃の方が効果的であり、報復攻撃はためらうよりも実行する方がましなのです。
こうした考え方は狂っていますが、それは北朝鮮だけのものではなくアメリカも70年間この狂気に支配されてきました。
エイミー・グッドマン:
あなたはかつてもっと多くの内部告発が行なわれるように求めたことがありました。
私はその点を重要視したいと思っています。
陸軍の内部告発者として有名になったチェルシー・マニングさんは現在刑務所を出ることが出来ましたが、彼女は7年間の間収監されていました。
彼女はアメリカの外交政策、イラク戦争とアフガニスタンの戦争に関する70万件以上の機密ファイルとビデオをウィキリークスに漏えいした罪に問われました。
マニングは、第一次世界大戦の際に制定された諜報活動取締法のもとで有罪判決を受け、2013年に35年の刑期の有罪判決を受けました。
今年 1月に、離任直前のオバマ大統領が彼女の減刑を行ない、やっと自由の身になりました。
しかし結局彼女は内部告発者として米国史上最も長い間刑務所に収監されたことになります。
刑務所から解放された後、マニングは米国ABCニュースなぜ内部告発者になる決心をしたのか、心の内を話しました。
チェルシー・マンニング:
当時私はすべての情報を総覧する立場にありました。
そこにあったのは、ただただ死、破壊、暴力ばかりでした。
結局私はそれ以上、報告と統計だけをまとめる作業を止めることにしました。
代わりに人間として人間を見ることにしたのです。
米国ABCキャスター:
アメリカ国民が広く正しい情報を共有することを可能にしたとあなたを賞賛する人々もいますが、一方では敵側に漏らしてはいけない情報を提供してしまったかもしれませんよね?
チルシー・マニング:そうかもしれませんが、私が責任を持つべきなのはアメリカ国民に対してだと思っています。
それだけではありません、ご存じのとおり政府職員には責任があります。
エイミー・グッドマン:これがチェルシー・マニングさんの本音だったと思います。
ダン・エルスバーグさん、あなたは最新の著作の随所でアメリカの核兵器政策に携わっている人々に、本当の危険性について警告する内部告発を行うよう呼びかけていらっしゃいます。
あなたは亡命中のエドワード・スノーデン氏にも面会されましたね。
どのような情報を今すぐ公開したいと思っていらっしゃいますか?
ダニエル・エルスバーグ:
始めに申し上げたいのは、チェルシー・マニングさんとエドワード・スノーデン氏は私にとって英雄だということです。
と同時に私にとっては同じようなプロセスを経て同じ信念を持って決断し、内部告発を行ったという点で地球上の他の誰よりも、共有するものが多い、という事です。
現在チェルシー・マニングさんとエドワード・スノーデン氏と同じような立場にいる人々、特に政府機関などで重要な立場にいる人々に伝えたいことがあります。
トランプ大統領が核保有国である北朝鮮に対しどのような武力行使を行うつもりなのか、結果としてどれ程悲惨な状況が作られるのか、どれ程の規模の破壊が行なわれるのか、これらを分析しまとめた文書が存在するはずです。
エイミー・グッドマン:
相手は北朝鮮になるのでしょうか?ロシアという可能性もあると思われますか?どうなのでしょう…
ダニエル・エルスバーグ:
そうですね、違いは…
エイミー・グッドマン:
イランという可能性も…
ダニエル・エルスバーグ:
もちろんどこが相手であっても、もしトランプが核戦争を起こす準備を進めていることが明らかにされた時点で、おそらくイランではこれまでの国際合意をを取り消し、核兵器開発計画を再開することになるでしょう。
半世紀前、私はランド研究所とペンタゴンにいましたが、その時と同じようにイランとの戦争はすぐに現実になる可能性があります。
当時アメリカ側はイランとの軍事衝突は不可避だと考え、その際に核兵器を使うまでの状況に発展した場合の対応を常に検討していました。
原因のひとつとして今日ほどロシアとの間のやり取りとりが円滑では無かった事が挙げられます。
もしこうした事実をつかんでいても、それを議会に報告したり報道機関に明らかにすることには、個人的に大きなリスクをともないということを考えてなければなりません。
私も危うく刑務所行になるところでしたし、チェルシー・マニングに至っては数年の間刑務所に収監されてしまいました。
しかしその事実には人類の生存という、きわめて大きな命題がかかっていました。
そして私が1961年のキューバ危機当時、本当にやりたかったこと、そして1964年にペンタゴンがベトナム戦争に本格的に介入してアメリカが大きな傷を負う前に、私がしておけばよかったと思っていることを考えてみてください。
待っていてはいけないのです。
マーティン・ルーサー・キングが語ったように、時すでに遅し、という事態に陥りかねないことはあるのです。
キング牧師はまさに今私たちが直面させられているような、緊急性の高い事態の事を言っていたのではないでしょうか?
現在私たちが直面している危機は、長年ひた隠しにされてきた本当の危険をペンタゴンの人間たちと私たち一般市民に思い知らせることになるのではないでしょうか?
エイミー・グッドマン:
残念ながら問題は未解決のままです。
ダン・エルスバーグさん、本当にありがとうございました。
エルスバーグさんの新しい著作『地球を終末に向かわせる装置 : 核兵器の戦争計画立案者の告白』は、アメリカ合衆国の核兵器戦争計画の最高機密文書のコピーに基づき、これまで隠されていた事実を明らかにしています。
《完結》
https://www.democracynow.org/2017/12/6/doomsday_machine_daniel_ellsberg_reveals_he
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今年最後の投稿になりました。
アメリカの核軍事政策の中枢にいたことのあるダニエル・エルスバーグ氏の長いシリーズも年内に終らせることが出来ました。
2018年1月からは新たな掲載を始めさせていただきます。
皆さんが穏やかな年末年始を過ごすことが出来るよう願っております。