ホーム » エッセイ » 米国の核戦争実施計画、その立案者が告発する!《5》
核戦争によって西側同盟国が壊滅することを、アメリカは自分たちへの直接的脅威とは考えていなかった
北朝鮮の『限定戦争構想』とアメリカの『全面先制攻撃構想』、共通するのは『狂気』
デモクラシー・ナウ 2017年12月5日
ホアン・ゴンサレス :
エルスバーグさん、あなたは数年後になってはじめてフルシチョフ自身の手によってアメリカの領海内にいた潜水艦隊の指令や司令官に戦争を開始できる権限を委譲していたことが解ったとおっしゃいましたが…
ダニエル・エルスバーグ:
比較的最近の1990年代にそれは明らかになり、最終的に確認できたのは21世紀に入ってからの事でしたが、フルシチョフがやったことはキューバに核弾頭を搭載した中距離弾道ミサイルを配置しただけではありませんでした。
それはまさに今、北朝鮮のキム・ジョンウンがやっていることとまったく同じです。
フルシチョフはヨーロッパに配置した移動型の中距離核ミサイル発射装置によって、アメリカと同盟関係にある西欧諸国を破壊できると考えていました。
移動型のミサイル発射装置を発見するのは困難であり、その攻撃によって死亡するのは西ヨーロッパの市民約1億人であるとソ連側は試算していました。
フルシチョフは、MELと呼ばれるアメリカが発見することも破壊することもできない中距離ミサイルを装備して、NATO加盟国の西ヨーロッパ同盟国を破壊し、1億人以上を殺す能力を整備する決心をしていました。
それでも西ベルリンにいたアメリカを動揺させることも、追い出すこともできそうにありませんでした。
ソ連側が西ヨーロッパを軒並み破壊する能力を持てば東西の核戦争を誘発する可能性がありましたが、それはアメリカが西ベルリンの地位を維持することにこだわった理由ではありません。
いずれにしても西ヨーロッパに核兵器を突きつけてもアメリカが動揺しないと判断したフルシチョフは
「我々は米国を射程に入れる範囲内にミサイルを装備しなければならない。」
と語り、中距離ミサイルをキューバに移動させたのです。
これに対し、北朝鮮のキム・ジョンウンにはソ連にとってのキューバのような同盟国はありません。
ソ連が西ヨーロッパを破壊すると脅してもアメリカが動揺しなかったように、北朝鮮はすでに韓国や日本を破壊できるミサイルを保有しているにもかかわらず、アメリカ本土を直接攻撃できるICBM(大陸間弾道弾)の開発を急いでいるのです。
キム・ジョンウンはフルシチョフの先例に倣っているのです。
フルシチョフのキューバが極めて危険であったと同様の事態です。
当時のキューバは世界史上最も厳しい監視対象になった島でした。
U2偵察機、偵察衛星、低空偵察飛行機、アメリカは考えられる限りの偵察行動を行いましたが、フルシチョフがキューバに中戦術核兵器として短距離ミサイルを装備していた事実を発見・確認することはできませんでした。
ソ連のミサイル部隊がいたことすら把握していませんでした。
そしてフルシチョフは当時の絶対的中央集権主義のソ連の独裁者としては考えられない判断をしていました。
もしアメリカがキューバ侵攻のための艦隊を派遣した事実を確認したら、これらの戦術核兵器を使用するか否かの判断を現地の指揮官に委ねたのです。
目の前にアメリカ艦隊が現れたことを確認したら、いちいちモスクワに指示を仰ぐ暇はありません。
これに対しアメリカ側は、フルシチョフがそこまで思いきった対応を取っているとは夢にも思っていませんでした。
フルシチョフの理論も、そしてフルシチョフ自身も非常に賢明でした。
ソ連がキューバに装備したミサイルはアメリカ本土の南の外れ、マイアミまでも到達する能力は持っていませんでした。
これらはすべて戦術核ミサイルであり、短距離ミサイルでした。
目の前に現れたアメリカ艦隊を完全に吹き飛ばし、100,000人の将兵を殺す能力は持っていましたが、それでおしまいです。
それ以上事態をエスカレートさせるだけの威力は持っていませんでした。
実質的にそれ以上はやらないと宣言しているのと同じでした。
30年後、その事実を知ったマクナマラ元国務長官はこう語りました。
「馬鹿げている。アメリカが100,000人もの将兵を失ったのに、ソ連に全面報復できないなんて…」
馬鹿げているのはマクナマラの方です。
金正恩(キム・ジョンウン)もフルシチョフと非常に似通った見通しを持っているのかもしれません。
すなわち韓国に駐留しているアメリカ軍との限定戦争が可能だと。
馬鹿げています。
しかしソ連と中国に25,000発の核ミサイルを打ち込み、何億もの世界中の人々を巻き添えにして殺してしまうという冷戦当時のアメリカの『核兵器戦略』と比較すれば、まだしもまともだと言えるかもしれません。
《6》に続く
https://www.democracynow.org/2017/12/6/doomsday_machine_daniel_ellsberg_reveals_he
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ここまで読み進むと(私の場合は翻訳を進めると)、核兵器というものが所有するだけで大変リスクの高い物だという事を強く感じます。
物理的に管理保管することに最大限の配慮が必要なことは当然の話で、そこにどのような人間がいて誰が関わるのかという事が、時には致命的な事態に発展する危険性があるようです。
しかも攻撃する報復するという行為には、報復をされないようにするためにやるならとことん破壊し尽くすという、恐怖の裏側の究極の残虐性がついて回るようです。
それが生きるという事が、社会や国家が平和であるという事が大前提である世界のほとんどの人びとの考え方と決定的に異なる点だとおもいます。
[星の金貨new]では【 世界でただ一カ所、未だに核兵器を突きつけ合う場所 】(米国CNN / http://kobajun.biz/?p=32547)というタイトルで堀田絵里さんがお書きになった論説をご紹介しましたが、アメリカを仮想敵国として核兵器開発を進める北朝鮮に対し、
「こっちも危ないんだ!」
と主張して多額の軍事費を投入し、あげく核兵器の保有の意思まで見え隠れし始めた日本に、本当の意味での『安全保障』の実現はあるとは到底考えられません。
一度書いたように思いますが、戦争や核兵器についての考え方がきわめて雑で安易な政治家が日本には多すぎます。