ホーム » エッセイ » 福島第一原発事故:第一原発に隣接する土地への帰還と現実のリスク
日本政府が安全宣言を行った福島第一原発の周辺地域で高レベルの放射線が測定された
安倍政権による福島第一原発事故の印象操作により、多くの人々の命と健康が危険にさらされている
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年4月10日
大熊町の一部地域では生活のための様々な活動が再開されましたが、帰還した住民の数は数百人にとどまっています。
数十万人の住民が避難しなければならなかった福島第一原子力発電所の3基の原子炉がメルトダウンした巨大事故から8年あまりが過ぎた4月10日、隣接する町の一部の避難命令が解除され、住民の生活が再開されることになりました。
福島第一原発のすぐ西隣りにある大熊町の約40%の地域が除染によって放射線量が著しく減少し、再び居住が可能になったと宣言されました。
しかし日本国内の報道によると、2011年3月巨大地震とそれに続いた巨大津波によって引き起こされた福島第一原発事故の前には10,341人いた住民のうち、大熊町への住民登録をしたのは367人だけに留まりました。
大熊町の大部分は放射線レベルが高いため依然立ち入り禁止のままであり、自宅の管理や維持のため昼間短時間の訪問が許可されています。
しかし共同通信の報道では夜間も大熊町に留まっているのは21世帯、48人の住民だけです。
大熊町役場の担当者は、5月にオープンする新しい町役場の庁舎や他のインフラ・プロジェクトの完成により、より多くの人々が帰還への決心を固めることにつながることを願っています。
福島第一原発周辺の住民、特に幼い子供たちがいる家庭の放射線被ばくによる健康被害への懸念は依然高いものがあります。
除染作業は成功したと公式には発表されてはいますが、朝日新聞と地元の放送局の調査によれば、元住民の3分の2の放射線に対する懸念は払拭されてはいません。
数万人の元住民が再び元の場所に住めるようにするため、福島第一原発の周辺市町村では空前の規模で除染作業が行われましたが、それによって数百万立方メートルの放射能で汚染された土砂が排出され、現在大熊町の一部がその中間貯蔵場所として使われているのです。
日本政府はこれらの汚染廃棄物を2045年までに福島県外に移動させると公約していますが、そのための最終処分場建設のための具体的目処は全く立っていません。
東日本大震災発生の際、福島第一原子力発電所の6基の原子炉のうち3基がメルトダウンして大量の放射線漏れが発生し、16万人の地域住民が避難を余儀なくされました。
現在では事故直後立ち入り禁止区域とされていた地域のほとんどで避難命令が解除されたものの、福島第一原発に近接する場所では依然立ち入りが厳しく制限され、大熊町のほとんど、そして双葉町の全域で人間の居住は不可能です。
今年3月の時点でこれらの場所に住居がありながら戻ることのできない住民の数は約40,000人に上りますが、安全宣言が行われた場所でも元住民の多くはもう戻らないという決心をしています。
安倍晋三首相は4月13日日曜日に大熊町の一部地区の避難命令解除を記念する式典に出席する予定です。
安倍首相は福島第一原発事故により全国すべての原子炉が稼働を停止した後、各地の弦の再稼働を推進してきましたが、5年ぶりに福島第一原発を訪問する可能性があると共同通信社が伝えました。
安倍首相は2020年の東京オリンピックに先立ち福島における日常生活が着実に回復しつつあることを内外に宣伝することに熱心ですが、本当の現実について原子力発電に反対あるいは被災者の救済などに取り組んでいる運動家たちからの批判が集中しています。
2019年3月、日本が東日本大震災発生の8周年を迎えた際、グリーンピースの調査により日本政府が安全宣言を行った地域で高レベルの放射線が測定された事実を明らかにし、帰還する避難者と除染作業員が直面しなければならないリスクについて国際社会を誤解させているとして日本政府を非難しました。
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福島第一原発事故に関わる全てのことは、私たちが決して忘れてはならないことのはずですが、残念なことに私たち日本人の思考回路はそうはなっていないようです。
今もし、次のうち今あなたが最も関心があるのは何ですか?という質問を行ったらどうなるでしょう。
あれほど日本社会に激震を走らせた2. が最大多数にはならないような気がします。
その国の伝統や文化というものは歴史上の事実の一つ一つとどう向き合い、どう対処したかということの積み重ねだと思います。
都合の悪い事実を隠蔽したり歪曲したり誇張したりしたのでは、とてものこと国内外のあらゆる立場の人々から尊敬を集めることなどできるはずがありません。
福島で起きたことの全てをいまの自分の立場にとらわれることなく科学的に客観的に評価する。
その根底にあるのはなにより人間を大切にするというヒューマニズム。
世界史を振り返れば、結局はそうした姿勢を失わなかった国が衰えることなく発展を続けてきたことがわかります。
最近のアメリカはトランプの横暴ぶりばかりが目立ちますが、一方で絶えず厳しい目を向け続け、その政治に疑問をつきつき続けている人々も力を衰えさせてはいません。
私たち日本人も福島第一原発事故について、謙虚な反省と事実に対する厳しい目を失ってはいけないのだと思います。