ホーム » エッセイ » 福島第一原発の事故収束・廃炉作業計画を変更、重要なステップに遅れ《前編》
核燃料プール内に残されたままになっている4,700単位以上の核燃料ユニット
行き場のない120万トンの放射能汚染水
2021年に取り出し開始『予定』の核燃料デブリ、どこにどうやって保管する?
山口真理 / AP通信 2019年12月27日
日本は津波で破壊された福島第一原発の事故収束・廃炉作業のロードマップを2019年12月27日金曜日に改訂し、2011年のメルトダウン事故以降冷却用プールに残されたままになっている数千の使用済み核燃料ユニットを取り除く日程をさらに遅らせました。
使用済み核燃料ユニットを取り除いて安全な場所に保管する行程は数十年にわたる事故収束・廃炉作業プロセスの中でも重要なステップですが、高過ぎる放射線量やその他のリスクによって、予想される作業は極めて困難なものです。
しかし日本政府と発電所の運営者である東京電力は、30年から40年という作業完了目標を変更しませんでした。
福島第一原発の事故収束・廃炉作業がどのような問題を抱えているのか、改めて検証してみましょう。
1. 核燃料プール内の4,700単位以上の核燃料ユニット
2011年の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故によりメルトダウンした3基の原子炉と事故を免れた他の2つの原子炉建屋内には4,700ユニット以上の燃料棒が残っています。
建屋が破壊されたことにより核燃料プールは野ざらしも同然の状況にあり、万が一別の大災害が発生した場合、プール内の水がなくなってしまえば燃料棒が溶けて大量の放射線を放出する可能性があり、大きな危険を抱え込んでいます。
これまでも繰り返されてきた作業日程の遅延の結果、1号機と2号機の撤去は、当初の2018年の予定から最大10年延期されることになりました。
さらに放射能を減らし、デブリやその他の危険を取り除くためには、さらに複雑で困難な準備が必要です。
1号機の原子炉建屋内の核燃料プールからの核燃料ユニットの除去は、散乱するがれきなどを回収した後に放射性ダストを封じ込めるために巨大な屋上カバーが設置された後、2027〜2028年のどの時点かで始められる予定になっています。
2号機核燃プールでの除去は2024-2026年に開始されます。
3号機核燃プールの作業は2019年4月に開始されており、2021年3月までに566基すべてが撤去される予定になっています。
4号機の核燃プールについては東京電力はすでに取り出しを完了しており、原子炉も正常な状態で停止しており、問題は破壊された原子炉建屋のみになっています。
東京電力は核燃プールに残るすべて核燃料ユニットの取り出しを2031年までに完了させ、その後ドライキャスクに安定した状態で保管するとしています。
2. 120万トンの放射能汚染水
東京電力は福島第一原発の敷地内にある約1,000基のタンクに保管されている120万トンの処理済みの放射能汚染水を海洋中に放出することができずにいます。
これは地域住民の反対、そして福島第一原発の事故によりすでに大きなダメージを受けている福島県の漁業と農業に壊滅的な影響を与える恐れがあるためです。
メルトダウンした原子炉内の溶融燃料を冷却するため毎日大量の水を注入する必要があり、放射能汚染水の量は毎日170トンずつ増え続けています。
経済産業省は2019年12月、放射能汚染水を段階的に海に放出する、あるいは蒸発させる、または両方同時に行う提案を行いました。
東京電力は放射性物質について最大137万トン、または2022年夏までしか貯蔵の継続は不可能だと述べています。
放射能汚染水を海洋投棄するためには事前に準備が必要であり、残された時間は限られています。
東京電力と日本政府はタンク内の放射能汚染水が別の大地震、津波、あるいは洪水などによって漏出した場合、別の危険が生じる恐れがあると語っています。
さらに2021年から原子炉から取り出すことになっている溶融燃料の貯蔵施設を作るスペースも、敷地内に確保しなければなりません。
浄化装置によって処理済みの放射能汚染水にはまだ放射性物質が残っていますが、東京電力はさらなる処理を重ねることにより、放射性トリチウム以外のすべてを放出可能なレベルまで除去できると述べています。
専門家はトリチウムは少量であれば人間に有害ではなく、世界中の原子力発電所から日常的に放出されていると述べています。
3. 880トンの溶け落ちた核燃料 - 核燃料デブリ
福島第一原発内のメルトダウンした原子炉から推定880トンの溶融核燃料(デブリ)を除去することは、最も困難で世界にも前例のない原子力発電所事故の収束作業です。
これは1979年に米国のスリーマイル島原発で発生した部分的メルトダウン事故の後に処理された量の6倍に上ります。
除去は1〜3号機のうち、ロボットによる内部調査が最も進んだ2号機で2021年に開始される予定です。
側面から原子炉内に入り、大部分が原子炉圧力容器の底の部分に溶け落ちているとみられる溶融した核燃料に到達することができるロボットアームが開発されました。
この側面からの取り出し技術を使用すると、原子炉の上部構造として存在する核燃プール内の核燃料ユニットを同時に取り出すことが可能になります。
溶けた核燃料の除去はスプーン一杯の量から開始され、国際原子力機関の指示に従って慎重に放射能の測定と解析が行われます。
日本政府はさらなる専門知識と知見を重ね新しいロボット開発を行い、除去の規模を徐々に拡大することを可能にしたいと考えています。
2031年までの最初の10年間は将来的な進歩に影響を与える重要な段階です。
しかし1号機と3号機についてはそれぞれ放射線量と水位が高過ぎるため準備が思うように進まず、さらなる調査が必要です。
《後編》に続く
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原子力発電というものがいかに欺瞞に満ちたものであるか、そしてどれほど人間を不幸に突き落とすものであるか、福島第一原子力発電所事故をつぶさに見せつけられた私たちが痛感したことであるはずです。
しかしその日本国内にすら原子力発電推進論者、原子力発電所新設の動きがあるというのは、はっきり言ってそこに巨額の利権があるからなのではないでしょうか。
1月16日付の朝刊には『原発再稼働・維持費13兆円』「安く安定」覆る・国民の負担長期に - という見出しで、原子力発電というものが他の発電方法と比べ、文字通り桁違いの費用を要するものなのだということが伝えられました。
しかしそのことは、福島第一原発の事故以降、徐々に明らかにされてきたことであるはずであり、海外のメディアやフェアウィンズ・エデュケーションのアーニー・ガンダーセン氏などが繰り返し指摘してきたはずのことです。