ホーム » エッセイ » 男女平等について日本は『衝撃的』なほどの後進国《後編》
安倍政権の『ウィメノミクス』、派手な広告宣伝をする前にまずは地道な基本的取り組みを始めなさい!
国内にはびこる偏見、政権発足当初よりもなお一層後退した安倍政権の『女性が活躍する社会』
山森菜々子 / ガーディアン 2019年6月13日
「安倍政権のウィメノミクス(Womenomics)なんて、でたらめもいいところです。彼らがまずやらなければならないのは、女性の社会的地位を引き上げること、その取り組みを始めることです。」
「でもそのことを公の場で議論することは、この日本ではとても難しいことなのです。女性たちは口々に不満を言っていますが、ほとんどの場合男性が支配している公の場では口にすることすら許されない雰囲気があります。決定権を握る女性はほとんどいないため、みんなこう考えてしまうのです。『自分の能力が足りないということだけが、地位が向上しない理由なのか?それとも他に原因があるのか?」
こうした弊害や偏見は国政の場でも幅を利かせています。
桜田佳孝元オリンピック担当大臣は先ごろ、すべての日本の女性に対し「最低でも3人の子供」を生むように求め、ソーシャルメディアを使って日本の出生率の減少は子供を産もうとしない女性に責任があると非難しました。
そして安倍政権がこれ見よがしに打ち出した政策にもかかわらず、現実には日本の下院に当たる衆議院議員の中、女性議員はたった10人しかいません。
さらに20名からなる安倍内閣の閣僚中女性閣僚はたった一人であり、安倍首相の再任当初と比較すると現実は明らかに後退しています。
2017年のOECDのレポートによれば日本では女性の就業率は70%と過去最高になっていますが、男性との賃金格差は25.7%と依然として極めて高い状態のままです。
東京の国際基督教大学の文化人類学者でジェンダー問題を研究する加藤惠津子教授が、女性に優しい職場環境を作り出すためには日本社会の根本的な変化が必要であると語りました。
「私たち日本人は価値観を変える必要があります。短時間で多くの仕事をこなせる人が才能のある労働者と言えるのであれば、長時間働いたり、まして出勤さえすれば良いというのでは質の良い労働とは言えません。」
「さらにいつどこで仕事をするかを選ぶことができることが上手な働き方だと考えることができるようになれば、体制の変革を効率的に進めることが可能になります。」
「インターネットの進歩により、多くの産業界でこうした体制の変革が可能になるはずです。」
こうした変革は現実になりつつあります。
寿司職人のような伝統的に男性の職業とされたきた分野に女性が進出することは困難とされてきました。
伝統を重んじるな専門家の中には魚を新鮮に保つには女生の手は暖かすぎると言う人がいます。
さらには長時間労働が女性進出の妨げになっているという指摘をする人もいます。
都市部で7店舗の寿司店を経営する阿部寿司の阿部ひろし氏は、性別を気にすることなく積極的に女性の職人を募集しているという珍しい寿司店経営者です。
「業界の成長が続いているので、女性男性両方の職人にとって大きなチャンスがあります。男性職人が気づかないような細かいところに気を配ることができるので、女性の職人は高く評価されています。」
日本国内には女性の役割は家庭内のことに限られるという抜きがたい偏見があります。
伝統的に家計のやりくりと育児が女性の役割であるとされ、夫が一家を支える収入を稼ぎ出し、妻はそれを貯蓄と月々の夫の小遣いを含めた消費に割り振ることに専念すべきだとする考え方です。
おうちのリサーチ研究所によれば10世帯のうち7世帯がこうした考え方に則って運営されています。
こうした旧態依然としたやり方が続く現実がある一方、国際基督教大学の加藤教授は過去30年間男女格差は一貫して縮小してきていると語りました。
日本の男性優位の産業構造が何年にも及ぶ経済的停滞によって信用を失い、そのためにその傾向は加速していると語りました。
https://www.theguardian.com/cities/2019/jun/13/there-are-almost-no-women-in-power-tokyos-female-workers-demand-change
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私が卒業した高校は男子校でしたが、何十年も経ってから同窓会名簿を使って署名を求める文書が郵送されてきました。
「(私が卒業した県立高校について)男女共学化の動きがあるが、けしからんことである。」
そして共学化は東北でトップの進学校としての伝統(かつては間違いなくそうでしたが、その当時はすでに県内で2、3番目に順位が下がっていました)を損ねることにつながる云々の文章が続いていました。
ここだけの話ですが、私の最初の感想は
「正気か?!」
というものでした。
「男女共学が良いか悪いかは、今通っている子供達が決めれば良い問題。卒業して20年も30年も経つ現実に関係のなくなった人間が口出しすべき問題じゃないだろう。」
そう妻に言ったことを記憶しています。
差別をしたがる人間の最大の動機は劣等感だと思っています。
伝統云々と騒ぎたがるのもそれに近いものだとも思っています。
人間でも文化でも、真に優れているものなら自然に認められるようになります。
その時、周囲にいる人間に求められることはその邪魔をしないこと。
故意に貶めようとするなど、最低の人間のすることです。