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戦う!東京新聞 望月記者 《後編》

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所要時間 約 9分

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日本記者クラブの制度を当然と考える記者の多くが、政府官僚と対決することを避けている
まるで一般常識を語るようにして望月氏の徹底追及姿勢を批判する権力の取り巻きジャーナリスト

             

                  

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年7月5日

               

日本記者クラブの制度を当然と考える記者の多くが、政府官僚と対決することを避ける傾向にあるという批判が高まっています。
彼らが言い訳として構えるのが記者クラブから追放されたくない、意図的なリークも含め政府高官から時折漏れ聞こえてくる機密情報を特権的に手に入らなくなるというものです。

              

この春それを象徴する出来事がありました。
一人の男性記者が記者クラブの特権を使って引退を決めた野球界のスターであるイチロー選手に日本政府が国民栄誉賞を与えるつもりがあるのかどうか菅官房長官に直接尋ねたのです。

             

結果的に日本記者クラブの制度は多くのジャーナリストの調査報道への意欲を奪い、日本国民が自分達の政府について知るべきことが伝えられないままになっていると、ジャーナリズムに関わる人々が指摘しています。

         

NHKの元プロデューサーで現在は東京の武蔵大学社会学部教授の永田浩三氏は、
「現在日本ではたくさんの不透明な政治家がらみのスキャンダルが発生していますが、質問することが本当に困難な立場に追い込まれています。」
「日本のメディアは今、するべきことができない重度の機能不全に陥っているのです。」

                

望月記者は記者クラブの因習を厳しくはねつけたため、参議院選挙の対応に追われる日本政府はこの問題を一時棚上げにしました。

               

昨年12月、望月記者は地元沖縄の有力者がこぞって駐留するアメリカ軍の規模の縮小を求めているにもかかわらず、日本政府が大規模な米軍基地建設事業を進めていることについて菅官房長官に質問しましたが、彼女が質問している最中に、内閣官房室は記者クラブに対し彼女が『事実を誤認している』と非難するメモを突きつけました。
メモにはそれでも望月氏が今後行われる記者会見に出席することを妨げはしないと書かれていましたが、彼女を擁護する立場の人々は彼女を黙らせようとする陰険な試みであると疑っていました。

             

望月記者が勤める東京新聞は今年2月異例の全ページにわたる社説を掲載し、その中で権力を握る側がジャーナリストの質問を妨げたり規制することはできないと宣言しました。」

               

写真上 : 望月氏は東京新聞のニュースルームで、
「現政権は常に事実を国民の目から隠そうとしているます。」
と語り、次のように続けました。
「そだからこそ私たちが突き止めていかなければならないのです。」

               

今年3月には首相官邸前に約600人ほどが集まって「真実のために戦おう」「記者への個人攻撃はやめろ」などと抗議の声をあげ、望月記者への支持を表明しました。
今年6月には望月記者を題材にとったジャーナリスト者を主人公にした映画が公開され、さらに近々彼女を主題にしたドキュメンタリーも公開される予定になっています。

                    

望月記者は子供の頃は女優になりたいと願っていましたが、政治学の学位を取得して大学を卒業した後、全国紙数社の就職試験を受けましたが、採用になりませんでした。
しかし東京新聞に新人記者として入社し、地方局の警察担当としてキャリアをスタートさせました。
彼女はたちまち頭角を現し、東京地方検事局を担当する重要なポストにつくことになりました。

               

取材のために望月記者は検事局の局長の自宅の外に駐車した黒いタクシーの中で眠り、その間タクシーメーターは回り続けていましたが相手が朝の散歩に出てくる間で辛抱強く待ち続けました。
しかしタクシー会社からの請求書を見た新聞社は、彼女の持ち場を変えることにしました。
結局望月記者は首都圏担当記者として戻ることになりました。

             

               

2人の子供を出産した後、望月記者は経済担当デスクに移動し、そこで日本企業が軍用機器を輸出している件について何本かの暴露記事を書きました。

                

そした望月記者が全国の人々から初めて注目されることになったのは2年前のことです。

            

                

菅官房長官の記者会見で、安倍首相が影響力を行使した疑いがある利益誘導スキャンダルに関係する山ほどの文書について詳細な質問を繰り返し、事実の存在を国民の眼前に描き出してみせたのです。

           

結局その事実を証明する文書を実際に入手したのは他の新聞社の記者であったため、望月記者に対して次のような批判をする記者クラブのメンバーが現れました。
望月記者は結果を出すことに失敗し、やったことは芝居じみたものだった、と。
しかしこうした発言をした記者たちは、自分たちが何者であるか一切明らかにしていません。

             

まるで一般常識を語るようにして望月氏の取材姿勢を批判するジャーナリストもいます。

            

「望月記者にはもっと自制してほしいというのが私たちの正直な気持ちです。」
時事通信社を退任した記者、田崎史郎氏がこう語りました。
「同じ質問を延々と繰り返さないことが大切です。」

             

望月記者が所属する東京新聞の編集長である臼田信之氏は、時折彼女のことが経営上の問題になる場合があると語りました。
「望月記者はしばしば上司が示した方針に従おうとしない場合があります。しかし彼女が明確な意見を持っていることは良いことであり、そしてそれは記者として大切なことです。」
「今日周りを見渡すとおとなしい記者ばかりが目立ちます。望月記者については時々うるさいと感じることがありますが、ほとんどの場合それは良い意味でのうるさいなのです。」

              

https://www.nytimes.com/2019/07/05
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この後編に登場する政権与党、つまり権力を持つ側に都合の良い記者などというものは、隠蔽や改ざんを自分たちが擁護することによってどれだけ多くの力のない人々が尚一層困難な状況に追い込まれてしまうか、そんなことは考えもしないのだろうな、と思います。
その代わり我が身可愛さばかりが先に立つ。
しかも相手も我が身可愛さでは誰にも引けを取らない人物。

                  

『さもしい』という言葉が久しぶりに脳裏をよぎりました。

                   

しかしそうした事実に気がついている私たちの発言や指摘が無力であっては、日本の劣化は悪化の一途をたどります。

300万人もの日本人を殺した太平洋戦争や軍国主義がこの国の美しさを守るために貢献したなどというのは、意見や見解と呼ぶのも愚かしいほどのものですが、それを平気で主張する人間たちをこのまま権力の座に置き続ければ、80年前の悪夢が再び現実になる危険性があります。

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