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意見記事:旭日旗に染みついた人々の恐怖の歴史 – 東京オリンピックでの使用を禁止せよ

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所要時間 約 12分

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極右の愛玩道具、大日本帝国の戦闘旗は、第二次世界大戦の死者の記憶を汚す
五輪会場で旭日旗を打ち振れば、太平洋戦争中の連合軍捕虜の人々が賠償を求めて立ち上がる可能性もある
日本の歴史を改ざんしてしまおうとする日本の政治家や権力者の企みに、日本の研究者や一般市民は抵抗を続けてきた

太平洋戦争の意義を「解放の聖戦」と表現してはばからない、安倍首相もメンバーに加わる『日本会議』

              

                 

アレクシス・ダッデン(米国コネチカット大学教授) / ガーディアン 2019年11月1日

               

写真 : 2019年9月、「旭日旗は太平洋戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)の犠牲者を意図的に害するものである。」
韓国の首都ソウルでの抗議集会で日本の旭日旗を引き裂く参加者

                

2028年に開催予定のロサンゼルス・オリンピックの開会式で、人種差別を象徴する南北戦争当時のアメリカ南軍の旗を振るファンでいっぱいになったスタジアムを想像してみてください。
同様に多くの人を傷つけるであろう光景が、来年夏に開催される東京オリンピックで現実になる可能性があります。

               

日本の選手やファンが日常的に使用する日本の国旗は白地に赤い大きな丸を配した日章旗です。
しかし旭日旗はそれとは異なるものです。

                 

16本の赤い光線を放つ旭日旗は、広告などで企業によって使用されることもありますが、厳密には軍旗です。
1870年から第二次世界大戦が終了するまで、大日本帝国の軍旗として使われていました。
そして1954年以降、デザインが一新された旭日旗が自衛隊の隊旗として使用されています。

                   

              

1910年から1945年まで日本の統治下にあった韓国は、来年開催される東京オリンピックの観客席で旭日旗の使用を禁止するよう日本政府に要請しました。
しかし現時点まで日本政府はこの要請を拒否し、その理由について旭日旗は「日本国内で広く使用されている」ものであり「政治的プロパガンダを象徴しているとは見なされない」と説明しています。

                

しかし日本の国旗ではないため、国際オリンピック委員会(IOC)には東京オリンピックでの使用を禁じる権限があります。
国際オリンピック委員会(IOC)の指導部も世界中のアスリートも応援する観客も、旭日旗の歴史、そして今日の日本において特定の政治的主張を行うために実際にはどのように使われているかについて注目する必要があります。

                

日本の右翼にとって旭日旗を掲げることは、第二次世界大戦中に大日本帝国が行った侵略行為の歴史的事実を美化するための共通した取り組みの一環です。
歴史的事実の改ざんを進めようとする出版活動、会員が「韓国人は虐殺されるべきだ!」などと書かれたサインボードを掲げて集会を行なっている『在特会』、アジア地区における太平洋戦争の意義を「解放の聖戦」と表現してはばからない安倍首相もメンバーに加わる『日本会議』などのグループのウェブサイトには、共通して旭日旗が掲載されています。

                 

旭日旗を日本のシンボルとして受け入れることは上記のような人間たちにとって、日本人はその軍事史に誇りを持つべきだという信念を表明することになるのです。
彼らは南軍の旗にしがみついているアメリカ人のように、本来なら反省すべき国家の戦争行為の名誉回復を謀ろうとしています。

               

ナチスのハーケンクロイツ(かぎ十字)がヨーロッパでは使用が厳格に禁じられているのとは異なり、昇る太陽をシンボライズしたデザインは日本の言論の自由を保障する法の下で自由に使われていますが、大日本帝国による支配に苦しんだ人々とその子や孫にとっては、意図的に苦しみがもたらされることを意味します。

               

韓国政府が旭日旗の使用について真っ先に異議を唱えるのは当然のことであり、その結果日本政府と韓国政府は互いに国益を損なう数カ月に及ぶ外交的対決状態へと入ったのです。

                 

2019年7月には両国の争いは貿易制限と安全保障の取り決めに波及し、互いに相手への不満は生活道路の上にまであふれ出しました。
韓国での日本のビール販売は97%以上減少し、日本では韓国をテーマにしたアートの展示がキャンセルされました。
その結果日本による韓国占領が1945年に終了して以降、両国の関係は最悪の状態に陥っているという声が至る所から挙がることになりました。

                  

                

もちろん他にも問題があるにしても、日韓関係を主に悪化させてきたのは朝鮮半島が日本の支配下にあった時代、約80万人の韓国(朝鮮)人が強制的に日本本土に連れて行かれ強制労働や奴隷労働を強いられたことについて、日本と韓国が全く対立する歴史認識を持っているためです。

               

しかし旭日旗を許せないと感じるのは韓国だけではありません。
旭日旗に象徴される大日本帝国による支配の下で何百万人もの人々が虐待を被った中国、シンガポール、フィリピン、ミャンマーなどの国々が東京2020オリンピックをボイコットする動きに対し、IOCは懸念を表明する前に自らを教育し直す必要があります。

                  

アメリカ政府もこの状況に責任を負わなければなりません。
日本と韓国は戦時中の歴史認識を巡る争いについて、米国政府は常に「当事者同士で解決する問題だ」という主張をしてきました。
しかしそれでは1945年以降の東アジア全体に悪影響を及ぼしてきた問題に正しく対処しているとは言えず、日韓の対立を続けさせることになります。

               

ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮を監視するためのGSOMIA(ジーソミア)無効化を目前に控えた今、アメリカ政府の傍観的態度は自国の不利益にもつながりかねません
日本政府はアメリカ政府が自国の方に肩入れしてくれるということに確信を持っているようですが、大切なことを見落としています。
韓国人が強いられた苦しみを見捨てているのと同様、第二次世界大戦中に連合軍捕虜に対しどのような扱いをしたのかについても故意に無視しているのです。

                

                

アメリカ兵の捕虜だけを見ても、彼らは日本国内50か所以上の場所で強制労働に従事させられ、その死亡率は40%に達しました。
戦後、少数の個人的な謝罪はありましたが、奴隷労働を強いられたり投獄されたりした韓国人、アメリカ人、中国人、フィリピン人、オーストラリア人、イギリス人、その他の連合軍捕虜に対する補償や賠償は一切ありませんでした。

               

この問題をうやむやにするためのアメリカ政府の行動は際立っていました。

              

1951年の平和条約(サンフランシスコ講和条約)と日米相互安全保障条約の締結により、アメリカ人兵士をはじめ連合国兵士の補償を受ける権利が事実上すべて犠牲にされたのです。

                 

全体を通して見れば、日本政府は奴隷労働はもちろんカニバリズムすら含まれる太平洋戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)中の侵略行為に関する公の議論を避けることにより、法的責任の問題を免れてきたのです。

                  

しかしこの間、無数の日本の歴史家、活動家、そして一般市民が遺骨を採集し政府文書の検証を続け、大日本帝国が引き起こした戦争と占領の下で苦しんだ人々の口述を記録するなどしながら、日本の歴史を改ざんしてしまおうとする日本の政治家や権力者の企みに抵抗してきました。
彼らの努力により旭日旗の下で何が起きていたのかを白日の下にさらすことになりました。

                       

                

大日本帝国による太平洋戦争中の残虐行為については被害者のうち生存する人が少なすぎて、東京オリンピックのスタジアムの一角を占領し、旭日旗が何を意味するものなのかを説明することができません。

                 

もはや証言することすらかなわない無数の犠牲者に成り代わり、国際オリンピック委員会は歴史から学ぶ必要があります。

                

※アレクシス・ダッデン氏は米国コネチカット大学で歴史学を専攻する教授です

                  

https://www.theguardian.com/commentisfree/2019/nov/01/japan-rising-sun-flag-history-olympic-ban-south-korea

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この記事を訳した後、【 日本の『旭日』旗とナチスドイツの鉤十字(ハーケンクロイツ)旗と東京オリンピック 】( https://kobajun.biz/?p=37159 )を翻訳した時点での自分の認識は、少し甘かったかもしれないと反省しました。

第二次世界大戦ヨーロッパ戦線を舞台にしたドキュメンタリーや映画で、ナチスのハーケンクロイツやSS(親衛隊)のエンブレムを見たユダヤ人が血も凍るほど怯えるシーンを見ることがあります。

太平洋戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)で虐待されたアジアの人々が旭日旗を見て同様の反応を示しても、彼らの側に責められるべき理由はありません。

やはり『加害者』であった私たち日本人が反省あるいは自省すべき問題です。

                 

なぜ今、国際社会からこの記事のような指摘がなされるのか、私たち日本人は真剣に考える必要があります。

                       

人間が本当の自分の姿を認識しなければ、客観的に見た成長などありえないのと同じように、国家や民族は歴史的事実に真摯に向き合ってこそ真の成長が可能なのだと思います。それを『自虐史観』などとは言わないはずです。

史実を歪曲・改ざんしようとする人間こそ、民族や国家を腐らせる存在であり、真のなどではありえないということを忘れるべきではありません。

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