ホーム » エッセイ » 【 戦後70年、初めて日本の軍事力行使を可能にさせる安倍政権 】《前篇》NYT
太平洋戦争という侵略戦争を行った後、その反省のもとに築き上げた平和主義国家・日本の繁栄
注目される参議院の60日間の審議期間、その間の日本国民の反応
ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 7月16日
国民の多くが反対していることが明らかになり、国会周辺では連日大規模な抗議デモが行なわれているにも関わらず、安倍晋三首相は、第二次世界大戦以来初めて海外の紛争が起きている場所で、限定的ながら日本の軍隊が武力行使できるようにするための複数の法案の衆議院通過を勝ち取りました。
野党議員が抗議して退出した後、そして台風の接近により天候がしだいに荒れてきたにもかかわらず、国会の外では多くの一般市民が大声で反対を叫んでいる中、安倍首相率いる自民党と連立与党は11の安全保障関連法案のパッケージを承認しました。
この後法案は上院にあたる参議院に送られますが、そこでも安倍政権の連立与党が過半数を制しており、これらの法案が承認されることはほぼ確実だと言ってよいでしょう。
この採決は、太平洋戦争という侵略戦争を行った日本が、その反省のもとに築き上げてきた平和主義国家において、数か月にわたって議論を続けてきたその結末とも言うべきものでした。
これは日本を『普通の国』にすると呼号し、軍国主義国家が犯した数々の事歴に対する罪悪感を乗り越え、日本が世界の紛争地区における軍事行動に積極的役割を果たすべきであるとする宿願を持つ、保守タカ派の安倍首相にとって重要な勝利となりました。
安倍首相は長年この主張を続けてきましたが、一般国民の多くは反対しています。
そしてアジア諸国、特に第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦前戦中に日本による支配や非人道行為を経験したアジア諸国においても、懸念と不安を増すことになりました。
最終的にこの法案が成立すれば、戦後数十年間、たとえ防衛のためであってもその軍事行動を厳しく制限してきた立場から、日本は離れることになります。
大多数の日本の憲法専門家を含む専門家は、安全保障関連法案は戦後制定された日本国憲法に違反するものだと批判を強めています。
日本国憲法は紛争の解決手段としての戦争を放棄しています。
しかし安全保障関連法案は第二次世界大戦(太平洋戦争)の敵国であり、現在の最大の同盟国であり保護者でもあるアメリカ合衆国が支持しており、米国は台頭する中国の軍事的圧力に対抗して東アジア地区における安全保障に、より大きな役割を果たそうとする日本政府の姿勢を歓迎する意向を明らかにしました。
安倍首相は安全保障関連法案を押し通すために、かなりの有権者の支持を失いました。
多くの世論調査が、国民の3人に2人がこの法案に反対し、かつては高かった安倍政権の支持率も40%前後に落ち込んだことを明らかにしました。
安倍首相は日本を取り巻く外交的環境が厳しさを増しているとし、中でも中国の軍事的脅威の増大に対抗するため安全保障関連法案の成立が必要なのだと主張しています。
安倍首相は今年1月、イスラム国(ISIS)武装グループに2人の日本人人質殺害事件に飛びつきました。
安倍首相はもし日本が海外で軍事力を行使できていれば、彼らを救出することが可能だったかもしれないとほのめかしたのです。
「日本を取り囲む治安状況がより厳しくなっている以上、これらの法律は必要不可欠です。」
安倍首相は16日木曜日の採決の後、こう語りました。
中国は法案の通過に反発、日本の第二次世界大戦(太平洋戦争)中の侵略行為を念頭に、安全保障関連法案はアジアの平和に対する潜在的脅威だと非難しました。
「我々は日本側に対し歴史の厳しい教訓と真摯に向き合うことを求めます。そして平和主義に基づく国づくりに先進すべきであり、アジアの近隣諸国の安全保障の懸念に配慮すべきであり、さらには中国の主権と安全保障を危うくする行為は控えるべきです。」
声明の中で中国外務省の報道官がこうコメントしました。
野党側はこの採決をボイコットしましたが、安倍首相が党首を務める自民党と連立与党公明党が過半数の議席を制する衆議院を通過しました。
この後、参議院の審議を経なければ法案として成立しませんが、万が一参議院で否決されても衆議院で再可決されれば良いだけであり、安全保障関連法案の成立はまず間違いないと思われます。
参議院はこの法案を60日間審議する予定です。
この間、さらにこの問題は国民の関心を集め、反対運動が拡大する可能性があります。
「安倍政権への反発を一層大きなものする新たな材料を見つけ出す、さらなる時間が国民に提供されることになります。」
ワシントンの外交評議会の日本部門の上級研究員シーラA.スミス氏が、オンライン上でこう語りました。
《前篇》
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やりきれない思いがするのは、『戦争』を呼号する人間たちは自分たちが前線に出て塹壕掘りから始めて、敵の砲弾や銃弾にわが身をさらすとは決して考えてはいないだろう事です。
自分たちは厳重に守られた部屋の中で椅子に腰かけて命令を下すだけであり、前線に出て敵に身をさらすのは『命令された』人間たちだという土台に立って言っているとしか思えません。
そして戦場にされた場所で暮らす人々の苦しみなど、考えようともしていないのかもしれません。
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【 9.11テロ、その日の大統領 】
アメリカNBCニュース 7月24日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
2011年9月1日、テレビが中継するテロ攻撃により炎上する世界貿易センタービルを見つめるディック・チェイニー副大統領。(写真上)
2011年9月1日、9.11テロ攻撃の後、チェイニー副大統領、ライス国家安全保障担当官らと協議するブッシュ大統領。(写真下・以下同じ)
テロ攻撃後のパウエル国務長官とライス国家安全保障担当官。
http://www.nbcnews.com/news/us-news/newly-released-photos-cheney-bush-tense-moments-after-sept-11-n398251
n-pictures/week-pictures-july-23-30-n401061