ホーム » エッセイ » テロ、そして戦争 : 史上最大の隠ぺい《1》
政権に不都合な真実を隠すため、政府高官・諜報機関の幹部・大手メディアの幹部が秘密裏に会合していた
一度は情報提供を決心しながら数ヶ月間ためらい続けた内部告発者が明かした国家ぐるみの陰謀
どんな手を使ってでも手に入れろ!強欲、権力、そして終わらない戦争 - アメリカを支える影のメカニズム
デモクラシー・ナウ 2018年1月5日
今日は元ニューヨークタイムズの記者ジェームズ・ライゼン氏においでいただいています。
ジェームズ・ライゼン氏は2017年8月にニューヨークタイムズを退社し、アメリカ合衆国のインターネットメディアである ジ・インターセプトに国家安全保障問題の特派員として参加しました。
そしてこの度15,000語からなるドキュメント『史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生』と題するドキュメントを発表しました。
この衝撃的な内容のドキュメントは9/11以降の主要な国家安全保障上の問題を報道するための闘いと、ブッシュ政権が令状なしで国民を対象に盗聴を行っていた事実を含めた真実の報道を、彼自身が編集に関わっていたニューヨークタイムズとアメリカ政府の双方が抑え込もうとしたことなどが綴られています。
彼は後にこの報道で国内報道部門のピューリッツァー賞を受賞することになりました
ライゼン氏は、CIAとホワイトハウス両方の高官とニューヨークタイムズの幹部編集者が秘密裏に会合を行っていたことも暴露しました。
ライゼン氏は一連の報道について情報源を明らかにすることを拒否し、裁判所に告発され最高裁まで争い、刑務所に収監される寸前まで行きましたが、オバマ政権が事実上黙認したことにより刑務所行を免れました。
エイミー・グッドマン:
今日、私たちはニューヨークタイムズで長年調査報道を担当してきたジェームズ・ライゼン氏をお迎えしています。
今週、彼は「史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生」と題する著作を発刊しました。
ドキュメントは9/11以降の主要な国家安全保障上の問題を報道するための闘いと、ブッシュ政権が令状なしで盗聴を行っていた事実を含めた真実の報道を彼自身が編集に関わっていたニューヨークタイムズとアメリカ政府の双方が抑え込もうとしたこと、そして政府高官とニューヨークタイムズの編集部の幹部がつながっていたことなどが語られています。
ライゼン氏は一連の報道で2006年にピューリッツァー賞を受賞することになりました。
ライゼン氏は、もしこれらの報道が2004年時点で発表できていれば、ジョージ・ブッシュ対民主党のジョン・ケリー候補の一騎打ちとなった大統領選挙の結果を変えた可能性があったと語っています。
しかしアメリカ政府の圧力を受けたニューヨークタイムズ紙は、ライゼン氏が真実を暴露した著作を自らの手で出版するまで、1年以上にわたりライゼン氏が取材制作した記事を発表することを拒否しました。
ジ・インターセプトの新しい記事では、ライゼン氏は、CIAとホワイトハウス両方の高官とニューヨークタイムズの幹部編集者が秘密裏に会合を行っていたことも暴露しました。
ライゼン氏は、ブッシュ政権とオバマ政権の両方から刑事告発を受け、彼の著書「戦争国家:CIAの秘密史」にまとめられることになった6年間の機密情報のリーク元を明らかにするよう要求されました。
しかしライゼン氏は取材源を明らかにすることを拒否したためこの裁判は最高裁まで争われることになり、刑務所に収監される危険性が現実のものとなりました。
しかし最終的にオバマ政権が実質的な告発の取り下げを行ったため、ライゼン氏は収監を免れました。
打ち続いた試練に対するライゼン氏の答えは、さらに別の著作を書きあげることでした。
『どんな手を使ってでも手に入れろ!強欲、権力、そして終わらない戦争』
そして今、ジ・インターセプトの彼の最初の大作である
『史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生』
を発表しました。
ジェームズ・ライゼン:今日はお招きいただき、ありがとうございます。
エイミー・グッドマン:まずはブッシュ政権による捜査令状なしで行われた大規模な電話盗聴事件についてお話をうかがいます。
アメリカ国民のほぼ全員を対象とした大がかりな盗聴については、10年ほど前にエトワード・スノーデン氏も暴露していました。
この当時、つまりジョージ・ブッシュ大統領の2期目の選挙直前、なぜニューヨークタイムズは事実を確認した時点での公表をしなかったのでしょうか?
結局あなたが著作によって公表せざるを得なかった事実についてお話しいただけますか?
ジェームズ・ライゼン:
あれは2004年の春の事でした。
私はこの情報をもたらした内部関係者と一緒に事実の確認していました。
話が進む中、情報提供者はこう語りました。
「私がつかんでいる情報は、多分現政権にとって最大の秘密のはずだ。その内容を今ここであなたにすべて話してしまうのは、さすがに恐ろしい。」
私はこのまま口を閉ざされてしまったらどうしようと内心焦り、この情報提供者に対し詳細について話すように説得しようとしましたが、彼はその場では話そうとしませんでした。
そこで私はその後数ヶ月にわたってこの情報源との会合を続けようと決心したのです。
しかし数か月たっても彼は隠された事実について話そうとはせず、私も半分あきらめかけていました。
そして最終的にこの件について断念する前に、再度彼にこう語りかけました。
「あなたが今まさに関わっていることについて、何とか話してはくれないだろうか?」
この時になってやっと、この情報提供者は知っていることについて語り始めたのです。
結局彼が語ったのは約10分から15分の間でしたが、明らかになったのはブッシュ政権の下で始まった国家安全保障機関(NSA)による国内での非常に規模の大きなスパイ活動についてでした。
全アメリカ人の電話での会話を捜査令状なしで盗聴すること、すべての電子メールの収集と会話記録の収集でした。
後に分かった事ですがこの大規模な機密収集のコードネームは『ステラー・ウィンド(恒星風)』というものでした。
そして、私はこの内部告発の内容の裏づけができる他の人間を見つけました。
さらにニューヨークタイムズ・ワシントン支局で私の隣にデスクがあったエリック・リッチブラウ記者も同様の情報をつかんでいました。
そこで私たちは一緒に仕事を始めたのです。
そして2004年の秋までに主要な取材を終わらせ、資源の概略について執筆を終えました。
次に私は国家安全保障機関(NSA)の正面玄関を入って長官のマイケル・ヘイデンに接触することにしました。
そこでまず私はNSAの報道官に電話をし、多少はったりをかけてこう言いました。
「今すぐヘイデンと話をする必要があるんだ。」
ところが驚いたことにはったりが効いて長官本人が電話に出たのです。
そこで私はエリックと一緒に書いた原稿を一番初めの部分を読み上げたのです。
電話を通して長官がはっと息をのみ、ぎょっとした様子がはっきりと伝わってきました。
しかし彼はこう言って電話を切りました。
「何であれ我々がやっていることは合法的であり、国家の安全を守る上で、気も解っているはずだが、有益なことしかやっていない。」
そして次のできごとが起きました。私が電話した直後の事だと思っています。
国家安全保障機関(NSA)長官のマイケル・ヘイデンはニューヨークタイムズのワシントン支局長だったフィル・トーブマンに電話しました。
それが多分、私たちが制作した記事を公開すべきかどうかというニューヨークタイムズとアメリカ政府の間の長い秘密交渉の始まりだったのです。
《2》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis
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この記事を翻訳していて、確かにアメリカという国家を支えている要因の一つに『終わらない戦争』があることに気がつきました。
イラク、アフガニスタンはもちろん、シリア、イエメン、スーダン…
ベトナム戦争は戦争という手段が、現代においてはもはや何一つ解決しないことを教訓として残しました。
そして現代における戦争が、10年や20年という単位では解決不可能な極めて深刻な問題を作り出すことも教訓として残しました。
ベトナム戦争でアメリカが行った『枯葉作戦』の後遺症により、戦争終結から50年が過ぎた今も枯葉剤による障害児の出産が続いています。
現代においては戦争というものが何も解決しないどころか、解決不能の問題を次々と作り出すという事を私たちは肝に銘じなければなりません。