ホーム » エッセイ » 安倍首相に日本国憲法を改定できるだけの国民の負託はあるか?!《後編》
安倍首相には社会の下の方で暮らしている人々の面倒をもっとちゃんと見てほしい
首相の権力が強くなりすぎて周囲にはイエスマンしかいなくなる。そんなことでこれからの日本は大丈夫なのか?
モトコ・リッチ/ ニューヨークタイムズ 2018年9月20日
公共放送のNHKが今月実施した世論調査では、今年秋に憲法改定法案が国会に提出された場合、憲法改定を支持する人はわずか18%に過ぎないことが明らかになりました
全体の3分の1がこの秋の国会にそのような議案を提出する必要はないと回答し、約40%はわからないと答えています。
安倍氏が自民党総裁として第3期の任期まで手に入れたことは、その政治的地位が劇的に転換したことの証です。
2006年から2007年まで第一次安倍内閣では不祥事が相次ぎ、選挙では致命的な敗北を喫するなど散々な結果に終わりました。
2012年に再び首相の座に返り咲くと、安倍氏はアベノミクスと名づけた経済政策の下で低金利政策と財政出動(主にインフラ整備)政策を推進し、経済再生に焦点を当てました。
二度目の安倍内閣の下で、自民党は衆参両議会における支配力を強固なものにしました。
「2012年に首相の座に返り咲く以前、安倍氏は成熟したスキルを身につけていました。」
京都大学で国際政治を専攻する中西寛教授がこう語りました。
「安倍首相の権力基盤は経済にあると考えられます。」
しかし減少と高齢化が同時に進行する人口問題、国家的経済規模の2倍以上にまで膨らんでしまった財政赤字ということを考えると、そしてもし世界規模の貿易戦争が拡大激化する方向に向かうことになれば、安倍首相の意のままになる分野は極めて限られたものになるはずです。
「ここから先には懸念材料がたくさんあります。そして安倍首相はすでにアベノミクスを通じて、広げられるだけ手を広げてきました。」
元衆議院議員で早稲田大学社会科学部教授中澤幹子氏がこう語りました。
「安倍首相はすでに使えるものはすべて使い切ったはずです。」
これまで日本の一般市民は安倍氏の経済政策の恩恵を受けてきたと必ずしも感じていません。
「何も変わりませんでした。」
東京に隣接する埼玉県在住の養護老人ホームの管理人、石森美輪さん(46)がこう語りました。
「少なくとも給料は上がりませんでした。私は安倍さんには社会の下の方で暮らしている人々の面倒をもっとちゃんと見てほしいと思っています。」
安倍首相はその経済計画の一環として多くの女性を職場に進出させ、女性たちが「輝く」社会を作り出すことの重要性を訴えてきたはずでした。
しかし批評家たちはその遅々として進まない進捗状況を指摘しました。
世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー平等性ランキングで、日本は144カ国中114位というのが現実です。
この事実についてワシントンにある外交問題評議会の日本専門家であるシーラ・A・スミス氏は次のように語りました。
「社会における女性の役割についての疑問に関し、安倍政権は私が思っていたよりもはるかに社会保守主義的傾向にあると思われます。」
野党の力が極端に弱い日本で安倍氏の政権運営が長期に及ぶことについては、安倍氏とその与党があまりにも多くの力を持ちすぎるという懸念が生じています。
「これだけ長く首相の座に留まり続けたら、もう誰も「いいえ」と言えなくなる状況に陥ってしまうのではないでしょうか?それが心配です。」
東京都内の歌舞伎劇場で助手を務める岩崎紀子(46)さんがこう語りました。
「首相の権力が強くなりすぎて、周りにはイエスマンしかいなくなる。そんなことで大丈夫なのでしょうか?」
しかし国際情勢が混沌とする中、国内的には政権が転覆するよりはましだとする意見もあります。
東京都内のデパートの生鮮食品売り場に勤務する天野進(57)さんがこう語りました。
「私たちの生活はそれほど素晴らしいとは言えませんが、悪いという程でもありません。」
「あまり急激に変わっても困りますから。」
[完]
https://www.nytimes.com/2018/09/20/world/asia/japan-shinzo-abe-election
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これから3年安倍政権が続いて本当に日本は「変わらない」のでしょうか?
心ある人々が懸念しているのは、その逆なのではないでしょうか?
平和憲法の下での日本は、ベトナム戦争のときもアメリカにどれほど圧力をかけられても『派兵』だけはできませんでした。
おかげで日本はベトナムの地で太平洋戦争で犯した過ちを繰り返すというリスクを回避することができたはずなのです。
戦場は人間の感覚を狂わせてしまいます。
ベトナムの地ではアメリカ軍はもちろん同盟各国の兵士たちも精神を壊し、現地で残虐な行為をするのみならず、狂気と荒廃を母国に持ち帰ることになってしまいました。
ベトナム、イラク、アフガニスタン…アメリカは大規模な海外派兵を重ねていくにつれ軍産複合体が影響力を強めていく一方で、心を壊し、結果的に人生まで壊してしまう人間の数が増え続けていったはずなのです。
戦争そのものに崇高さなどありません。
ドキュメンタリーではありませんが、『プライベート・ライアン』『バンド・オブ・ブラザース』『シンドラーのリスト』等々、繰り返し描かれてきたのは極限状態に置かれた人間同士が最後まで心を通い合わせる『人間としての崇高さ』であって、戦争そのものは野蛮で残酷で、しかも愚劣きわまりない行為です。
それを美化する人間を首相として据え置くことの危険きわまりなさを、自衛隊は正義軍となった以上徴兵は当然だと言い出しかねない状況を作り出すことの危険さを私は憂えています。