ホーム » エッセイ » 原子力発電はこれ程に危険であり、原子力行政と業界はこれ程に腐敗している〈第1回〉[フェアウィンズ]
『メイド・イン・ジャパン?!』
原子力発電につきまとう危険、それは日本固有の問題ではありません
▼ 監視行政と原子力産業界の癒着、それは日米共通の問題
▼ 内部告発。問題の解決より、内部告発した人間をあぶりだそうとした原子力安全・保安院
グレッグ・レヴァイン / フェアウィンズ 7月13日
先週公表された国会事故調査委員会による福島第一原発の事故調査報告書の大部分が、日本の文化的側面がこの事故の根本原因を形成した、との指摘に力点を置いていました。
委員長の黒川清博士は大部に渡る報告書の要約版の冒頭で、非常にわかりやすい表現を用い、以下のように告発しています。
このことを認めるについては非常な苦痛を伴うが、今回の事故は『メイド・イン・ジャパン』そのものである。
そしてそれを作り出した根本原因は、日本の文化にしみついている慣習にある。
すなわち条件反射的な服従精神。
権威に対し疑問を持たないようにすること。
一度作られた計画に拘泥しがちな性向。
組織優先の考え方。
そして、島国根性。
この自己批判精神に満ちた文章に、西側メディアが飛びついたことは今さら驚きに値することではありません。ましてこの300語からなる文章は、88ページの文書の冒頭に置かれているのですから。
文化的な固定観念と不十分な解釈は、非常に完成されたルポルタージュに往々にしてついて回ります。
さらに内容よりも衝撃的だったのは、この苦痛に満ちた自己分析が英語版にのみ掲載されていた、という事実でしょう。
そして議長個人の見解、という事で『メイド・イン・ジャパン』という結論が、この問題を日本に限ったものとした点に、私は問題を感じています。
日本語版において、そして英語版の要約版の本文において、日本の文化に対する批判は、原子力産業の規制を期待されていたはずの原子力安全・保安院などの監視機関と原子力産業界のなれ合いの関係に対する、数多くの厳しい批判に置き換わっています。
この『規制当局は電気事業者の「虜(とりこ)」となっていた』状況について報告書は詳述していますが、今回の事故調査委員会が発見した問題の核心部分であり、福島第一原発の事故がなぜ『人間の手によって作られた』ものなのかを理解する上で重要なことです。
しかしこのことは、日本の経済界に限った事では無いのです。
そうです、アメリカ合衆国でもこの問題にずっと取り組んできた人ならすぐ理解できるでしょうが、こうした原子力産業に対するいい加減な規制の在り方は、一般市民の安全と健康に対する脅威の核心とも言うべきものです。
しかし原子力産業界において、否、エネルギー産業界すべてに共通するものであるかもしれませんが、こうした産業界と行政側の癒着は大なり小なり、日本だけに限った問題では無いのです。
▽ 守ってはもらえない不幸な市民、守られる産業界
この国会事故調査委員会の報告書には、規制当局によってきちんと監視されるはずだった原子力産業界が、互いに癒着することにより作り出した、忌むべき関係が作り出した事実が含まれています。
閉ざされた日本の原子力産業界にあって、報告書を表面的に読んでしまうと、問題の本質は日本の文化に起因することになってしまいます。
実は違います。
今やそれが当たり前のように思われている『天下り』に、つまりは規制官庁に対する企業の立場を強めるため、企業側が中央官庁を退職した元官僚を高い給料を支払って積極的に雇い入れる仕組みに、癒着の根本的原因があるのです。
BBC東京支局の大井まりこ記者は『ワールドサービス』ニュースの中で、福島第一原発の事故の報道の中、癒着の実態について以下のような表現をしました。
「規制当局に対する内部告発が行われると、規制当局は東京電力に電話して、まずこう警告するのです。
『原子炉に何か問題が発生しているようだぞ。』と言う代わり、『気をつけろ、内部告発した奴がいるぞ!』と…。
福島第一原発の事故が発生してしまった現在においても、日本の原子力産業界の中では社会的、道義的責任などまるで無視し、「どのような裏切りも許さない!」とばかりに互いを監視する体制が続いていると見て、まず間違いはないでしょう。
〈つづく〉
http://fairewinds.com/ja/content/made-japan-fukushima-crisis-nuclear-not-cultural
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この記事はツイッター・ネーム[K_ouyorimo Yoko 反TPP 徴兵反 原発輸出反対]さんに教えていただき、8月半ばに翻訳をご依頼いただいたものを翻訳したもので、長文のため今日から3回に分けて掲載します。
ご連絡いただいた際、すぐには気がつかず、着手が遅くなってしまったことを改めてお詫びいたします。
例年にも増して暑いこの夏、せっかく大勢の方々が首相官邸前などで抗議の声を挙げておられるにも関わらず、日本国内の報道と政治の動きを見ていると、福島第一原発の本当の怖さや、原子力発電の本質と言うものを見失いがちになってしまいます。
そのような中、こうした記事が折々に現れて、発行部数世界一を標榜する原発推進Y新聞、核兵器保有すら主張しかねないS新聞などが目論む、『脱原発世論抑圧催眠』から覚醒させてくれることに、私たちは改めて感謝しなければなりません。
特にフェアウィンズの活動については、いつも頭が下がる思いでいます。
設立者のアーニー・ガンダーセン氏に、改めて敬意を表し、誤訳・ミスタイプの無いことを祈るばかりです。