ホーム » エッセイ » 残虐な対人兵器を次々とつくり続ける世界《前編》
戦場として徹底的に破壊された国土に残された地雷や不発弾が、なおも人々の殺傷を続けている
大量殺戮目の当たりにした恐怖と衝撃が、以後の戦争における化学兵器や生物兵器の使用禁止条約を生んだ
軍縮こそは人類が急ぎ取り組まなければならない課題である
アンナ・ニグマチュリナ、シャキーブ・アズラル / アルジャジーラ 2017年10月28日
何世紀にも渡り血まみれの紛争を繰り返す中で、軍の指導者たちはいくつかの兵器は人間に対して使用するにはあまりにも残虐であることを認めました。
しかしその事に気が付きつつも尚、軍隊はそうした兵器を使用することを止めることはありませんでした。
第一次世界大戦において史上初めて化学兵器が大規模に使われ、その『効果』が確認されました。
戦場や塹壕の中で何百万人もの兵士が死亡しました。
その恐怖と衝撃は、1925年に締結されたジュネーブ議定書において、各国が以後の戦争において化学兵器や生物兵器の使用を禁止する条約に署名させる原動力となったのです。
これまで数世紀に渡り、筆舌に尽くしがたい苦痛を与える到底『正当化することのできない』武器、そして『予測不能の脅威をもたらす可能性のある』無差別攻撃兵器については、常に問題にされてきました。
そしてこうした武器については多国間条約によって使用や所有を禁止するとともに、その所有が明らかになれば国際的圧力によって武装解除してきました。
一部の人びとは脅威を内在させている国々を武装解除するというこうした取り組みの効果について疑問視し、軍縮の取組に対しても懐疑的かもしれません。
しかし世界で積み上がっている武器の数を減らし、製造や所有を規制するための中心的役割を担っているのがそれぞれの軍縮条約です。
同時に実験や紛争地帯における特定の種類の武器の使用についても、制約する役割を果たしています。
こうした取り組みがあって初めて、禁止されている兵器の使用が戦争犯罪の構成要素となり得るのです。
[過去100年間の兵器の種類ごとの軍縮条約(上の表)]
▽ 2017国連軍縮週間
10月24日から30日まで、国連は軍縮週間を開催しました。
この間加盟各国は、「軍拡競争の危険性を強調し、軍拡競争の停止の必要性と緊急性を伝え、軍縮が人類が急ぎ取り組まなければならない課題であることに対する一般の理解を高める」よう勧奨されました。
軍縮を進めるべき対象とされているのは、核兵器、化学兵器、生物兵器などの大量破壊兵器(WMD)に加え、通常兵器に分類されるレーザー兵器、焼夷弾、地雷など一般の人々が危険を認識しにくい種類の兵器などが含まれています。
以下の兵器の種類ごとの5項目は、国際条約が果たす役割とどのようにしてこれらの兵器の使用と生産を規制しようとしているかを説明するものです。
▽ 生物兵器(大量破壊兵器)
生物兵器は、第一次世界大戦以来、1925年にジュネーブ議定書が締結された後、戦場で使用した国家はありません。
1972年に発行した生物兵器禁止条約は、戦争での使用を禁止する内容をさらに厳格なものにしました。
しかし一方でこの条約はいかなる調査制度も検証するための仕組みも具体的には構築していなかったため、多くの国々が研究を続け実際に備蓄もされているのが現状です。
武器として使用される有害生物は、バクテリア、ウイルス、真菌などです。
これまで戦時戦場で実際に使用された具体例としては、ペスト、天然痘、大腸菌、炭疽菌、コレラなどがあります。
[生物兵器 : 歴史上生物兵器が実際に使用された例と、使用禁止に至るまでの年表]
▽ 化学兵器(大量破壊兵器)
第一次世界大戦中に戦場で使用された化学兵器による大量殺戮と後遺症の悲惨な実態を見た世界各国は、1925年のジュネーブ議定書の締結の際、戦場における化学兵器の使用を禁止する条約に署名しました。
しかしナチス・ドイツは第二次世界大戦において化学兵器による大量殺戮を行いました。
悪名高いガス室です。
ナチス・ドイツは毒ガスを使い、数百万人に上るユダヤ人を殺害しました。
その後も多くの戦争、武力紛争において化学兵器が使われてきました。
1993年の化学兵器禁止条約に署名した各国はそれまで備蓄していた化学兵器を廃棄する作業に取りかかり、その結果それまで世界中で備蓄されていた化学兵器の93%が廃棄されることになりました。
しかしながら化学兵器の使用は戦争犯罪であると明確に規定されている現在も、一部の国々や政治勢力の中には秘密裏に化学兵器を所有する一方、その備蓄を否定しています。
[化学兵器 : 世界の73,000メートルトンの化学兵器用薬品のうち、93%がすでに廃棄処分となりました。870万発の化学兵器爆弾・弾頭の57%が廃棄されました。
下段は第一次世界大戦からシリア内戦に至る化学兵器の犠牲者数です。]
※掲載されているグラフィック・データが小さくて見づらい場合は、下記URLのアルジャジーラのサイトでご覧ください。
《後編に続く》
http://www.aljazeera.com/indepth/features/2017/10/disarming-world-171024071441249.html
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みなさんはいわゆる『北朝鮮の危機」について、どのような解決方法が望ましいとお考えでしょうか?
現在、北朝鮮への経済制裁は中国が加わったことにより、かつてない強力な効果を発揮し始めていると言われています。
軍や政府関係者を除く国民への食糧配給が途絶し、この冬には農民や底辺に近い市民に大量の餓死者が出るとも言われています。
ここまでくれば普通の国なら反政府運動が頂点に達し、政権の崩壊につながっていくところですが、北朝鮮は普通の国ではありません。
元自衛隊員の知人は、アメリカと中国が共同でキム・ジョンウン政権を崩壊に追い込み、当人とその関係者をロシアに亡命させるというのが最も実現性の高い、そして危険の少ない方法だと話してくれました。
中国にとって北朝鮮は、日米韓といういわばアメリカ同盟陣営に対する緩衝地帯として重要な意味を持っています。
ここが消滅するのは何としても面白くありません。
だからと言って、最近のキム・ジョンウン政権は狂気じみたところがあり、血迷ってサイルを中国に向け発射する可能性も絶無ではない。
だとすれば、アメリカにとっての日本や韓国のように、中国の半傀儡、いや4分の1傀儡政権が北朝鮮の主になることが理想的なはずです。
核ミサイルの標的になりかかっているアメリカと中国の利害が合致すれば、上記のような血を見ずに解決する方法が可能になります。
しかしアメリカにはそれでは面白くないという勢力がいます。
前回もご紹介した軍産複合体です。
彼らは戦争をすることによって自分たちのフトコロを潤わせ、権力基盤を強化してきました。
イラクやアフガニスタンで名状しがたい混乱が続き、どれだけの市民が殺されようと軍産複合体はなんとも思っていないでしょう。
安部政権になって日本が武器を大量に購入するようになったのも、政治的復活の後押しの見返りにそうしている、私はそう思っています。
日本における政権交代が、取って代わる政治勢力の誕生と成長によってしか実現しないのと同じように、北朝鮮もまたキム・ジョンウン政権を追い払った後のことまで構想しないと、物事はなかなか前には進まないでしょう。
そのために日本が大量の武器を購入し装備することに、どれだけの意味があるでしょう。
北朝鮮がミサイルを発射した瞬間、レーザーバリアによって日本列島をすっぽりと覆ってしまう装置でもない限り、「日本の国民との生命と財産を守りきる」ことなど不可能です。
そんな装置は我々が生きている間に実現が可能なのか?という話ですし、その開発が進むのと同時にそれを破壊する武器の開発も進むでしょう。
この記事にもありますが、武力行使による解決などというものは互いに大量の血を流すということが前提の話です。
そういう意味で、安部政権が掲げる『軍隊を所有し戦争をすることができる、それは国家として当たり前の権利だ』などという主張は最低の俗論であり、この国の国民でいたかったらいつでも命を差し出せという、傲慢この上ない考え方です。