生まれてはじめて、この絵を画集で見た時 - 中学生か高校生の時だったと思いますが、
「なーんだ、見た通り描いてるだけじゃないか...」
と思って、マネについては自分にとって『つまらない画家』の分類に放り込んだままでした。
大学生になって、新宿の伊勢丹百貨店本店で大規模な印象派絵画展が開催され、この『フォリー・ベルジェール劇場のバー』の実物がやってきました。展示の目玉の一つだったと思います。
私はこの絵の実物の前に立った時、その美しさと迫力に圧倒されたまま数十秒間動けなくなってしまったのです。
絵の中央に立つ女性の物憂い表情が、まさにすぐそばで息づいているような生命力がありました。
実はこの絵をはじめて見た画集というのは、美術の教師だった母が買い求めた当時世界最大の大きさと高度な印刷技術を誇る画集で、現在ではここまでの大きさのものは市販されていません。
にもかかわらず、実物と画集の間には、計り知れない程の違いがあることを思い知らされました。
以来、絵だけは本物を見ない限り解らない、と思うようになったのです。
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