ホーム » エッセイ » 【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第2回》[フェアウィンズ]
日本の人々には、これから放射線とともに生きる日々が待っている
フェアウィンズ 7月18日
松村 : アーニー、まず、このような非常に有意義な場にお招きいただいたことを感謝します。
今回私は初めてバーモントを訪問しましたが、まずはあなたと奥様のマギーさんが、福島が予断ならない状況にある事を、くりかえし啓発されてこられたことについて、お礼を申し上げたいと思います。
私のブログをご覧になっている皆さんも、フェアウィンズの取り組みを非常に高く評価されています。
ガンダーセン : ありがとうございます。
今回あなたをお招きしてお話が聞けるという事は、非常に意義がある事です。もちろん、妻のマギーもこの日を心待ちにしていました。
世界が真実を知りたいと思っている以上、私たちも最善を尽くしていくつもりです。
松村 : ところで私は、東京電力に果たしてこの巨大事故の収束能力があるかどうか?という多くの質問を読者から受け取りました。
私には判断のしようがありません。
しかし、経営陣も東京電力独力では事故処理はできないと考えている、そのような内輪話を耳にしたことがあります。
しかし私たちは素人であり、正しい判断ができるわけでもありません。
その上福島第一原発の事故については、様々な立場の科学者がまるで違う発言を繰り返しています。
そこで私は国連が核物理学者、原子力工学の科学者、地質学者などからなる独立した調査チームを編成し、改めて検証を行うよう要請する書簡を、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長あて送りました。
日本の鳩山元首相にも同様の意見を述べました。
ガンダーセン:それは素晴らしいアイディアだと思います。
わたしはこう考えます。
真に独立専門家によって構成される調査チームを編成の上、福島に派遣し、これ以上日本の人々を放射線被ばくさせないための論理的に正しい対策を策定し、急ぎ実行する必要がある。
国連には独立した機関としてIAEA、すなわち国際原子力機関がありますが、その憲章の第2項にははっきりと「原子力政策を推進する」と書かれています。
私に言わせれば、これでは独立した機関とは言えません。
独立した調査チームは、これから
1. 放射線とともに生きていかなければならなくなった
2. そしてこの放射線を取り除く取り組みをしなければならなくなった
日本の人々に信任される必要があります。
この状況を考えれば、原子力発電を推進しようとしているIAEAのような機関に調査を任せることは、馬鹿げている以上に危険でさえあります。
専門家による国際調査団が現地に入り、どうすれば事故収束・廃炉作業を前に進めることが出来るのかを日本の国民の皆さんに明らかにし、その上で東京電力以外の手によってその作業を行う、そのことが大切です。
もう一つ大切なことは、本格的な事故収束・廃炉作業が始まり、東京電力とは別の技術企業体がその作業を行う場合には、その企業はおそらくは国際的な連合企業になると思われますが、独立調査団は現地に留まり、作業の進展の監督をする必要があるという事です。
なぜなら一方では原子力発電所を建設しているような企業が、的確な事故収束・廃炉作業を行う事を日本の人々に信じさせることは難しいからです。
全ての行程を監督すること、それが専門家による独立した調査チームに課せられる使命なのです。
またこの調査チームは日本政府に対して、問題の解決に必要な費用を支出するよう圧力をかけられるようにすることも必要です。
現在日本政府はもうこれ以上、東京電力に国の予算を割きたくはないと考えていると思われます。そうである以上、東京電力は本来必要な金額を下回る予算で、あらゆる問題に対処していこうとしている、そう考えられます。
そこで必要になるのが、国際調査団が新たに契約した企業に対し正しい処理、必要な処理を行うよう指導し、その上で福島第一原発の事故収束・廃炉作業に必要な本当の金額を日本の人々に公開することです。
そうして初めて、現在福島第一原発が直面している2つの大きな課題をクリア出来ると考えています。
〈 第3回につづく 〉
http://fairewinds.org/media/fairewinds-videos/forty-good-years-and-one-bad-day
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フェアウィンズの原稿を翻訳するたび思うのは、もしガンダーセン氏が居なかったら、福島第一原発事故の解明はここまで進まなかっただろう、という事です。
氏の経歴の中で光るのはやはり、スリーマイル島の事故収束・廃炉作業に関わったという事でしょう。
だからこそ現在東京電力がやっている作業の問題点が、『わかり過ぎるほどわかる』のだと思います。
そしてカルディコット博士は、原子力、核災害が人体にどのような影響を及ぼすか、そのスペシャリストです。
チェルノブイリの被災地はもちろん、博士はイラク戦争の際アメリカが劣化ウラン弾を使用した地区にも飛び、現地の健康被害も調査されるなどし、今日の発言をおこなっておられます。
こうした方々の地道な努力により、今日私たちは原子力発電所事故の恐ろしさを実感できるのだと思います。