星の金貨 new

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » 【 21世紀社会が抱える深刻な課題 : ノーム・チョムスキー 】《4》

【 21世紀社会が抱える深刻な課題 : ノーム・チョムスキー 】《4》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 11分

広告
広告

紛争地帯の一方の勢力に大量の武器『援助』を行うアメリカ、大規模な人道的危機が発生

「アメリカは世界中の暴力の最大の後援者」

国際紛争の場で次々に発生する残虐行為、そこに見え隠れしているある大国の影

 

デモクラシー・ナウ 2017年5月29日

 

イランにも北朝鮮同様、核開発疑惑が持ち上がっています。

マティスのような米国大統領に近い立場の高官たちは、イランはテロリストの最大のスポンサーであり、そのことが平和への最大の脅威であり続けていると語っています。

ではテロリストのスポンサーとはどういう意味でしょうか?検討してみましょう。

 

たとえば、イエメンではイエメンの反政府勢力である部族、フーシ族にイラン政府が援助を提供していると主張しています。

いいです、そういうことにしておきましょう。

では米国はイエメンで何をしていますか?

サウジアラビアと同盟する勢力にとてつもない量の武器援助を行っています。

供与された武器によって国土が破壊され、大規模な人道的危機が引き起こされ、膨大な数の人々が殺され、飢餓による大量の死亡者が出ています。

そしてさらにサウジアラビアの同盟勢力は、生き残った人々にとって援助を受けるために必要な場所としてたったひとつ残された港湾設備を爆破・破壊すると脅迫しているのです。

しかしテロの主な原因はイランが作り出している、それがアメリカの主張なのです。

エイミー・グッドマン:

私は数週間前の4月4日にも、チョムスキー教授にデモクラシー・ナウ!の番組の中でインタビューを行いました。

その日はちょうどキング牧師が『ベトナムを乗り越えよう』とう演説を行った日から50周年を迎えた日でした。彼はベトナム戦争に反対する理由として「アメリカが世界中の暴力の最大の後援者」になっているからだと語りました。

 

そしてその時私は北朝とイランの問題から、話題をシリアに転じようとしました。

しかしその日はシリアでガス攻撃が行なわれた日で、問題の本質については突っ込んだ議論ができませんでした。

私はチョムスキー教授がシリアの状況についてどうお考えなのか、一度詳しくお伺いしたいと考えていました。

そしてその後、シリアの問題についてはトランプ大統領は中国の習近平主席と完全に利害が一致したと語りました。

そしてトランプ大統領はアメリカがイラクへ向けたトマホークミサイルの発射に成功したと語りましたったのです。

そして、彼はインタビュアーによって誤りを指摘されることになりました。

その話は本当ですか?

ノーム・チョムスキー:

イスラム圏の情報は実に混沌としています。

しかしいくつか私たちが確実に把握していることがあります。

まずシリア国内で深刻な化学兵器攻撃が行われたとすることについて、誰もそれを疑うことはありません

状況証拠を積み上げていくと実行したのはシリア政府だったということになりますが、いくつかの疑問があります。

戦争に勝利するのがもはや間違いないというタイミングで、なぜアサド政権は敢えて化学兵器を使用したのかという疑問です。

 

この時点でアサド政権にとっての最悪の展開は、反政府勢力が間近に迫った勝利の土台を壊してしまう事でした。

その点を考えるといくつかの疑問が生じてきます。

確かにアサド政権は人を殺すことを何とも思わない残忍な体制であり、化学兵器攻撃を行うことについての動機など数え上げたらいくつでも理由があるかもしれません。

しかし、実質的に政権を支えているロシアがなぜ化学兵器攻撃を許したのか?という疑問も湧き上がってきます。

覚えておいて欲しいことがあるのですが、それはシリア政府の空軍基地は同時にロシア軍の基地でもあるという事実です。

ロシアはシリアで大きな影響力を持っています。

そしてロシア軍にとって化学兵器の使用は最終的に何のメリットも無い災厄でしかありません。

化学兵器の使用ということになると、問題はシリアに留まることなく、全世界的な問題に発展する可能性があり、ロシアにとっては何のメリットも無い選択なのです。

 

さらなる懸念があります。

ホワイトハウスは化学兵使用がシリア政府によるものであることが絶対に間違いないと確信するに至った理由を説明するために、諜報報告を提示し、アメリカ軍の行動を正当化しようとしました。

これに対し非常に誠実で信頼できるアナリストであり、マサチューセッツ工科大学の教授であり、きわめて信頼性の高い分析を長期に渡り行ってきた実績を持つテオドール・ポストル教授がこの報告書を詳細に検討しました。

ポストル教授は高く評価されている戦略アナリストであり、そして諜報活動アナリストでもあります。そしてポストル教授はホワイトハウスの報告書を、徹底的に批判しました。

この報告書はオンラインでも見ることができます。

トランプ政権下のホワイトハウスの報告書には確実にいくつかの疑問があるのです。

シリアのアサド政権が化学兵器の使用という人道上許されない行為をしかねないという点は間違いありません。

しかしここに一つの疑問が生じます。

現実の世界で何か行動を起こす前に、その結果を正確に予測することは可能でしょうか?

実際に起きたことを正確に検証してみましょう。

何かの事件が起きる可能性がある場所というのは実にたくさんありますが、それが現実になった場所は遥かに少ないはずです。

 

そして混乱の極にあるシリア国内から正確な情報を発信することは極めて難しいという事を、頭に入れておいてください。

反政府側の勢力圏に入りこみ、もしそこで彼らの発表内容をそのまま発信しないと、あなたの首は切り落とされてしまう可能性があります。

パトリック・クックバーンなど著名なジャーナリストたちが、こうした状況が存在することを伝えています。

そうした場所から客観的で正確な報道を行うことは不可能です。

そして今度は政府が支配する場所から正確な情報発信ができるのか、という事も明白な問題です。

真剣で勇敢な仕事をしている非常に優秀な記者たちもいますが、普通の人間にとっては簡単にできることではありません。

そのため、シリアについては我々は正確な状況を詳細に把握しているとは言えないのです。

 

これが59発のトマホーク・ミサイルが発射された状況なのです。

ミサイルの発射自体はかなり簡単なことです。

ワシントンにある指令室の椅子に腰かけ、ボタンを押して「さあ、やつを殺せ!」という行為自体は簡単です。

それは賞賛されるべき勇気であり、たくましさを象徴する、つまりはアメリカという国がどれほど強いかということを思い知らせるものなのです。

 

さてアメリカは実際に何をしたのでしょうか?

見た目で判断する限りトマホーク・ミサイルが攻撃したのは、飛行場の中の使われていないと思われる部分を破壊しました。

そして現実に、翌日にはこの飛行場から航空機が離陸していました。

さらなる現実は化学兵器の攻撃を受けたとされる地区は、59基のトマホーク・ミサイルによる攻撃の後、今度はアサド政権が直接行った爆撃によってなお一層激しく攻撃されてしまいました。

ですからアメリカ政府が何を企図していたにせよ、結果的にアサド政権には何の影響も無かったというしかありません。

つまるところアメリカ政府がやったのは、ニッキ・ヘイリー米国国連大使がいつもやっているトランプ新大統領のイメージアップ宣伝だと私は考えています。

「町に新しい保安官がやってきた!」

今や英雄ワイアット・アープがいつでも拳銃を抜いて、悪者どもをやっつけてくれる。もう四の五の言わせないぞ!という訳です。

強い大統領ドナルド・トランプ、そうしたはったりに過ぎなかったのではないでしょうか?

 

《5》へ続く

https://www.democracynow.org/2017/5/29/noam_chomsky_in_conversation_with_amy

+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

 

北朝鮮の核実験とミサイル開発に関する報道は国際的にも数が多く、日本においてはニュース番組などでは放送中に必ず一回は取り上げられる、という忙しさです。

NHKを始めとする国内報道では、前提条件としてアメリカの立ち位置を正義とする見解が不動のもののようですが、果たしてそうだろうか?ということを考えるようになりました。

私たち戦後に育った世代は、第二次世界大戦でナチスドイツと戦うアメリカ軍の映画を数限りなく見せられるうちに、頭のどこかに『アメリカ軍=正義の軍隊』という観念を持つようになりました。

しかし、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク、アフガニスタン、そしてチリのアジェンデ政権の崩壊への謀略等々の『本当の結末』を見るうちに、現代においては一方が完全な正義だという戦争や紛争があるはずがないという事を強く思うようになりました。

そしてケネディ兄弟の暗殺の背後には、本当は誰がいたのか?

これは特にロバート・ケネディ氏の暗殺の瞬間をとらえた報道に小学生ながらも全身が震えた私にとって、そしてジョン・レノンの暗殺の第一報に思わず叫び声をあげたた私にとって、生涯の課題のひとつです。

海外メディアにも北朝鮮を直接取り上げる記事が無数にありますが、対立しているのは何者かという視点も持っていただきたいという意味で、ノーム・チョムスキー教授の講演の続編を掲載しました。

 

広告
広告

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
最近の投稿
@idonochawanツィート
アーカイブ
広告
広告
カテゴリー
メタ情報