ホーム » エッセイ » 【 個人的打算による解散総選挙を強行、日本人は尚もこの首相に国の命運を賭ける鍵を預けるのか 】《前篇》
アベノミクスの最大の特徴は、考え得る限りの美辞麗句と実情を糊塗する宣伝能力
安倍首相は自分の権力基盤を強化するため、不意撃ちの解散総選挙を決断
『私が取り戻した!』日本、多くの一般国民の家計が圧迫され、本格的な不況局面に突入
エコノミスト 11月22日
2012年、安倍首相は自分こそが経済を立て直して日本を復活させる男だと売り込み、年末の総選挙で日本の有権者は彼に地滑り的な総選挙勝利を進呈しました。
それからちょうど2年、安倍首相は衆議院を解散し、12月14日投票の総選挙実施を宣言しました。
「我々はこの機会を逃すわけにはいかないのです!」
安倍首相はこう声を張り上げました。
当然ながら日本の有権者は今後も同じ馬に乗り続けるのかどうか、再び選択を迫られることになりました。
安倍首相の政治的計算ははっきりしています。
安倍政権の支持率はかつて地球の重力をものともしない程に高いものでしたが、この秋急な転落の憂き目を見ました。
そして来年になれば安倍政権は防衛政策の見直し、すなわち憲法第9条の解釈の変更問題や現在稼働を停止している原子力発電所を相次いで再稼働させるなど、国民に不人気の政策を相次いで実行することになります。
そして与党自民党内においても安倍首相に対する不満がこれ以上うっ積する前に、新たに4年間の委任状を手に入れようとしています。
これに対し野党勢力は充分な得票を見込める候補者を立てることができず、各党は混乱の中にあります。
観測筋は今回の選挙で連立与党が30~40議席を失うと見ていますが、その程度では連立与党の基盤が揺らぐことはありません。
安部与党と呼ばれる政治家の中には自民党が議席を上積みし、公明党との連立が無くても単独で議会を支配できる体制の実現を望んでいる人間もいます。
しかし問題をうやむやにするうまい方法などはありません。
安倍政権は日本経済を復活させるという公約のもとに、政治を行ってきたはずでした。
数年前初めて政権の座に就いた時はこの取り組みに見事に失敗しており、なおさら公約は大切にすべきものであるはずでした。
安倍首相は20年近く続いている日本のデフレに終止符を打って経済を復活させると、これまで際限もなく同じことを繰り返してきました。
アベノミクスは大幅な金融緩和策、多額の財政出動と広範囲の構造改革を行う大胆な経済政策であるという言葉巧みなキャンペーンが展開され、安倍首相に有利になるイメージ作りを行った人間たちの中には経済学者も含まれていました。
安倍首相は2012年の末、政権の座に着くや否や、
「日本を取り戻した!」
という有名な宣言を行いました。
しかし11月17日に公表された日本の第3四半期間の国内総生産 – GDPの数値のひどさは、安倍首相が取り戻したのが別物であることを明らかにしました。
日本はほんとうの経済不況に、その位置を戻してしまったのです。
円安が招いた物価上昇に平均的労働者の賃金は追いつかず、一般家庭の多くは家計が圧迫されるようになったとの実感を強めることになりました。
〈 後篇に続く 〉
http://www.economist.com/news/leaders/21633820-shinzo-abe-has-called-snap-poll-consolidate-power-voters-should-give-him-one-more?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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選挙関連のニュースを見ていて青ざめる思いがしたのは、今回の解散総選挙のため私が住んでいる宮城県が10億円の補正予算を組まなければならなくなったという事実についてでした。
同様の資金を日本中の都道府県が用意しなければならない訳ですが、これを3.11の被災者の救済に振り向けたらどれだけの対応がとれるかという事を考えずにはいられませんでした。
それだけの公費がこの記事にあるように、個人的打算のために費やされるのだとすれば、日本の総理大臣というのはほんとうにエラいものだと言わざるを得ません。