ホーム » エッセイ » 【 非正規雇用の女性の貧困化を一層深刻にしてしまったアベノミクス 】《後篇》[IPS]
安倍首相が掲げてみせた提案も目標も、現実を無視した虚構に過ぎない
20歳から64歳の働く独身女性の、3人に1人が貧困状態に置かれている
高齢化と非正規雇用の拡大が、女性たちを貧困の中に閉じ込めてしまっている
スヴェンドリニ・カクチ / IPSニュース 9月18日
日本における既婚女性の貧困率は11%で、その大部分は夫がすでに死亡している高齢の女性たちです。
離婚した女性のほぼ50パーセントも、貧困と直面していることが解りました。
さらには調査の対象となった男女のうち、男性の貧困率が25.1パーセントであったのに対し、働く女性の貧困率は31.6パーセントに達しました。
厚生労働省は現在、日本の相対的貧困率に関する公式記録を公開しています。
2010年は人口の16パーセントに当たる209万人が公的扶助を必要とするという、この数十年間で最悪の数値を記録、政府による早急な対策が求められることを示しました。
こうした状況に基づき、NPO法人『インクルーシブシブネット』でホームレスの人々を支援する活動を行っている鈴木あきこさんはIPSニュースの取材に対し、安倍首相が掲げてみせた提案も目標も、現実を無視した虚構に過ぎないと説明してくれました。
「低収入にあえぐ人々と数年間一緒に働くことによって、私は正規雇用に代わってパートタイム労働や非正規雇用の女性の数が確実に増加し、そのために貧困に陥っていく実態をこの目で認識しました。」
たとえば介護事業は日本国内でパートタイム従業員が最も高い比率を占めていますが、その90.5%が女性です。
インクルーシブシブネットの報告によれば、経済的苦境にあって援助を必要としている女性の割合は、3年前は10%未満であったのに、現在は20%に達し毎月平均3,000人の割合で増加しています。
「日本には自暴自棄に陥ってしまっている女性たちがいます。安定した職業を持たず、家庭内暴力や職場でのいやがらせなどの問題に直面させられているのです。」
鈴木さんがこう語りました。
グラフ出典(http://twitter.whotalking.com/topic/%E9%9D%9E%E6%AD%A3%E8%A6%8F )
日本には2,000万人の非正規雇用労働者がおり、その労働人口の40パーセントを占めています。
その63%を女性が占め、給与は正社員の38パーセント未満しか受け取っていません。
国立社会保障・人口問題研究所(NIPSSR)において貧困問題を研究している阿部あやさんは、女性は男性の従属的な位置にあるとする伝統があった日本の社会において、女性の貧困問題は長年の課題であったとIPSニュースの取材に答えました。
「何十年もの間女性は収入的に不利な立場に置かれながらもなんとかやって来たのは、夫を持っていたかあるいは両親と暮らしてきたからなのです。こうした人々は質素に暮らしてきました。最近の女性の貧困問題の特徴は、結婚する女性の割合が低下していること、給与水準の低いパートタイムまたは非正規雇用の立場に追い込まれていることにその原因が求められる事です。」
安倍首相の女性の権利を拡大するとする提案の目玉のひとつは、年収が100万円以下の収入にとどまる女性の配偶者控除の税制措置を廃止することです。
この制度は終身雇用制度の下、家計が主に男性一人の収入によって成り立っていた時代の1961年に導入されたものです。
安倍首相の支持者は、こうした税制上の優遇措置を廃止することにより、女性の社会進出が促進されると主張しています。
これに対し他の人々は女性のための重要な社会的セーフティネットを無くしてしまうことになり、女性が一層不利な立場に追い込まれかねないと懸念しています。
グラフ出典(http://shakaihosho.com/state.html )
政治的な議論ばかりが先行する中、何十万人もの日本の女性たちが先行きに希望を見いだせないまま、苦労ばかりが続く毎日をどう乗り切っていくか、身も心もくたくたになっています。
インクルーシブシブネットの鈴木さんのようなこの問題の専門家はこうした現実についてこう語っています。
「高齢化と非正規雇用の拡大が、女性たちを貧困の中に閉じ込めてしまっているのです。」
〈 完 〉
http://www.ipsnews.net/2014/09/can-womenomics-stem-the-feminisation-of-poverty-in-japan/
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下に差別に憤るアメリカの市民たちの写真をご紹介していますが、上野記事に併載した2つのグラフは日本にも深刻な差別が存在していることを表すものです。
人間社会において差別程残酷なものは無く、許せないものはありません。