ホーム » エッセイ » 【 巨額の税金をつぎ込む凍土壁対策、ほんとうに根本的解決策となり得るのか?! 】
地下凍土壁の建設プラン、期待通りの効果を発揮できるかどうか確信が得られない
懸念される地下凍土壁の建設による、事故現場『想定外の』事態が新たに発生する可能性
政治的意図に引きずられる事無く、福島第一原発の現場はほんとうに必要な判断を下せるか?
AP通信 5月8日
原子力の専門家が5月2日、東京電力が福島第一原発の事故現場で行おうとしている凍土壁建設による汚染水の流入防止策について、高額に昇る費用をかけただけの効果が得られない可能性について言及し、計画の実施が遅れる可能性が出てきました。
専門家と日本の原子力規制当局の職員は東京で会合を開き、2011年3月11日に襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなって福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンを引き起こした事故で、今日深刻になっている放射能汚染水の問題を根本的に解決する方法として、地下に凍土壁を建設するプランが所定の効果を発揮できるかどうか確信が得られないと語りました。
凍土壁は320億円の巨額の政府資金を投入し、メルトダウンした3基を含む原子炉1~4号機の原子炉建屋と付属するタービン建屋がある敷地の地下を凍結させ、地下水が流れ込んで溶け落ちた炉心から漏れ出している非常に高い濃度の汚染水と混じり合い、大量の汚染水が作りだされている現状を解消するために建設されるものです。
この問題を所管する日本政府の担当者は、東京電力が行った福島第一原発での凍土壁建設実験は成功しており、政府としては6月にも凍土壁の建設が開始されることを希望すると語りました。
しかし専門家が懸念を表明したことで、凍土壁の建設は遅れる可能性があります。
原子力規制委員会の委員を務める更田豊志(ふけたとよし)氏は、この場所において凍土壁を建設した場合の水文学的影響は不明であると語りました。
「私たちは凍土壁が期待通りの効果を発揮できるかどうか、事前に明快な見通しを持つ必要があります。もっと大切なことは、凍土壁を建設することにより予想外の障害が発生しないかどうか、見定めておく必要があるという事です。」
更田氏がこう語りました。
海外の専門家も同様の懸念を抱いています。
かつてのアメリカ原子力規制委員会の委員長であり、現在東京電力の外部監視委員会の委員長を務めるデール・クライン氏は、それだけ高額の費用を投入する価値のある最良の選択であるかどうか、確信が持てないと語りました。
彼もまた、東京電力と日本政府は凍土壁建設プランを実施した場合の効果と副作用について厳密な検証を行うべきであり、予算を投ずべき課題が他に無いかどうか再検討すべきであると語っています。
「決定を下す場合には、関連する最新の科学的所見を総合した上でなければなりません。さらには科学だけに偏るのでもなく、政策的意図に引きずられる事も無く、公平な判断をしなければなりません。」
クライン氏は5月1日、東京でのインタビューにおいてこのように語りました。
「結局は凍土壁の建設が最良の選択である可能性は否定しません。しかし私自身は確信を持てずにいます。」
専門家は、凍土壁は過去に実施されたことがある技術ではあるものの、今回福島で計画されているような規模で、しかも長期間継続できるものなのかどうか、そのような前例はないと語りました。
東京電力は現在、作りだされる汚染水の総量を減らす対策として、地下水が原子炉付近に流れ込む前にポンプでくみ出し、そのまま海に放出するバイパス対策のための配管工事を行っています。
東京電力はさらに、原子炉建屋の周囲に新たな地下水排水網設備の建造を行っていますが、専門家の中には凍土壁に代わる対策として、充分に機能する可能性があると語っています。
福島は2011年3月のメルトダウンから3年以上が過ぎた今も、大量の汚染水問題を解決できずに苦しみ続けています。
そして貯蔵タンクからの汚染水漏れ事故が繰り返され、その都度これから数十年かかると予想されている事故収束・廃炉作業が遅れる結果につながっています。
そしてこれ以上の環境破壊を望まない地元の漁業関係者の懸念を、一層かきたてているのです。
http://bigstory.ap.org/article/experts-question-ice-wall-japan-nuclear-plant