ホーム » エッセイ » 【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第1回》日本に突きつけられた疑問
「現在の廃炉作業は竹槍を持っての戦い」
「廃炉作業40年は楽観的に過ぎる」
山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム / アメリカNBCニュース 2012年3月5日
開発に6億円をかけた災害対策ロボット『クインス』は、地震と津波によって破壊された福島第一原発の事故現場に投入されて数か月後、入り組んだ現場で罠に落ちるようにして操作不能になってしまいました。
操作不能になってからすでに17カ月が経ちますが、最新技術を駆使したハイテク・ロボットは未だに回収されていません。
『クインス』はある意味、今回の事故を象徴する存在です。
何十年もかかると見られている、気がめいるような福島第一原発の事故収束・廃炉作業、それは膨大な数の人間と、巨額の資金、そして未だ開発途上にある技術無くしては、実現が不可能なのです。
「まるで竹槍を持って、戦いに行くようなものです。」
福島第一原発を運営する東京電力に36年間勤め、現在は日本原子力産業会議の理事長を務める服部拓也氏がこう語りました。
その戦いは2011年3月11日にマグニチュード9.0の巨大地震が日本の東北地方を襲った瞬間に始まりました。東京の北方にある福島第一原発を、高さが13メートルの巨大津波が襲いその電源供給を停止させた上、非常用電源設備も破壊し、原子炉の冷却装置を稼働不能に陥らせました。
そして3基の原子炉でメルトダウンが発生、同時に一連の水素爆発が起きました。
事故に続く数週間の間、何百、何千という緊急作業員、自衛隊員、消防隊員などが危機の拡大を防ぐため、懸命の作業を行いました。
しかし彼らの装備は時に間に合わせのものであり、最新とは言い難い上に、威力も不足していました。
ヘリコプターが原子炉の真上から放水を行いましたが、バケツを使っての作業でした。
何キロも離れた場所から電気を引いてくるため、電気技術者たちは現場でおそらくは世界最長となった延長ケーブルの接続と敷設に忙殺されました。
チェルノブイリの事故から25年後に発生した世界最悪の原子力事故は、世界最高水準の先端技術力、そして能率的な官僚機構を持つという日本の看板に、大きな疑問を突きつけることになったのです。
2011年12月、日本は国家として福島第一原発内の原子炉について、『冷温停止状態』を宣言しました。
しかし専門家は以下のように指摘します。
福島第一原発内の原子炉を廃炉にし、事故を収束させるための前例のない作業を行うための費用として、最低1,000億ドル(約10兆円)かかる。
そして避難民となった人々対する補償と、福島第一原発の周辺の市町村の除染には4,000億ドル(約40兆円)の費用が掛かると。
昨年11月、東京電力は近隣住民への補償と周辺市町村の除染のための費用が、当初予想した10兆円の倍にまで膨らむ可能性があると公表しました、
その金額に、福島第一原発の事故収束・廃炉のための費用は含まれていません。
事故発生から2年、周辺市町村の除染も無計画のそしりを免れるものではありません。
仕事の多くはこうした作業にはほとんど経験が無い、日本の建設会社の手に渡りました。
福島第一原発の周辺市町村の関係者が、除染作業は予定より遅れていると証言しました。
作業によって取り除かれた、放射能に汚染された汚泥やがれきの類が、政府による最終的な処分方法が決まらないまま、道端になどに放置されています。
東京に拠点を置く公益社団法人の日本経済研究センターは、福島第一原発周辺の市町村の除染費用だけで6,000億ドル(約60兆円)に達するという試算結果を公表しました。
そして建設から40年が経った福島第一原発の廃炉作業は、他に例を見ない難しいものになります。
東京電力と日本政府が作成したロードマップによれば、廃炉作業はもっとも損傷のひどい施設である、7か所の使用済み核燃料プールから、11,417本の使用済み核燃料棒を取り出すことから始められます。
開始は今年後半の予定です。
そしてメルトダウンした原子炉の核燃料の除去に着手できるようになるのは2021年になってからであり、全体の廃炉作業の完了には30年~40年の歳月を必要とするとしています。
東京電力、日本政府、双方の関係者共に進行状況はほぼ計画通りであり、安倍首相率いる自民党政府はスケジュールをさらに早める様望んでいると語りました。
しかし複数の専門家は、そのようなスケジュールは現実離れしていると批判しました。
「そんなスケジュールは夢物語です。」
昨年、一般社団法人日本原子力技術協会の最高顧問を退任する直前、40年というスケジュールについて石川道夫氏が、こう語った上で、さらに数十年の歳月が必要だと指摘しました。
ロイター通信社は最初の包括的な報道記事を作成するため、2012年2月から3回福島第一原発の現地を訪れ、数十人の専門家、政府関係者、記述者、労働者と産業界の役員などと面談を繰り返しました。
インタビューの中で、彼らの多くが以下の深刻な懸念について語りました。
すなわち、必要な技術の欠如、現場作業員が不足する危険性、そしてただでさえ莫大な負債を抱える日本政府にのしかかる、膨大な額の費用について。
〈 第2回につづく 〉
http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/
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私たちは怒らなければなりません。
福島第一原発周辺の市町村の除染費用だけで、60兆円かかる。
これに福島第一原発の廃炉の費用を、ガンダーセン氏の予測に基づき40兆円とすると( http://kobajun.biz/?p=5248 )、福島第一原発の事故収束・廃炉にかかる費用は総額100兆円になる計算です。
それを負担させられるのは結局国民である私たちです。
日本の人口を単純に1億人とし、100兆を1億で割ると100万円。
国民1人当たりなんと100万円、4人家族なら400万円負担「させられる」ことになります。
ゲンパツ政治家、ゲンパツ官僚と電力会社を始めとする日本の原子力ムラの『ズブズブ』を見逃して来た、その責任がある私たちが払わなければならないツケがこの金額なのです。
そして今、同じく『ズブズブ』の首相が、あろう事か世界に向け「日本の原子力発電技術は、信頼性が高く、非常に優れている」と胸を張っています。
トルコもまた、日本同様世界の中の『地震大国』です。
『優れた日本の原子力発電技術』によって建設されたトルコの原子力発電所が、将来もし事故を起こしたら、私たち日本人はそのツケを払うよう求められるのではないでしょうか?
福島の100万円(×あなたの家族数)に加え、そのツケも支払うおつもりはおありですか?