ホーム » エッセイ » 【 福島における放射線被害調査、分かれる見解、衝突する意見 】《後篇》ALJ
脱原発運動家でなくとも、国連の調査発表報告には多くの問題点があると考えざるを得ない
低線量被ばくが原因のひとり一人の人間に対する、人間社会に対する、そして各種の動植物と生態系に対する悪影響の存在は現実のもの
公平な分析を約束できる独立した立場の研究者たちによる、新たな精密な福島の現地調査が必要である
ジョン・ボイド / アルジャジーラ 2014年8月30日
フクシマの放射線被害に関する調査研究の中、国連科学委員会(UNSCEAR)が意図的に除外したものとしてムソー教授は沖縄の研究者が行った『ヤマトシジミ(蝶)における放射性物質摂取による生物学的影響』( http://w3.u-ryukyu.ac.jp/bcphunit/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%9F%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E7%89%A9%E8%B3%AA%E6%91%82%E5%8F%96%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6%E7%9A%84%E5%BD%B1%E9%9F%BF.pdf )の存在を指摘し、本来であれば国連が公表した報告書の中で重要な判断基準のひとつとなるべきものであったはずだと語りました。
この研究は2012年8月9日付の科学雑誌『ネイチャー』のサイエンティフィック・レポートにおいて発表され( http://www.nature.com/srep/2014/140515/srep04946/full/srep04946.html )、事故以降福島県内の蝶々において調査期間中確認された突然変異について検証し、次のように結論づけています。
「福島第一原子力発電所から放出された放射性物質は、この種において生物学的影響と遺伝子の損傷を引き起こした。」
国連科学委員会のラーション委員長は、同委員会に対する批判を否定しました。
「この研究についても議論が行われ、研究結果が報告書の中身に反映されています。しかしこの研究結果は放射線の影響を検証するための現地調査が数回にとどまり、放射線量の測定についてさらに堅牢なデータを必要とします。」
これを言い換えれば、低レベルから高レベルに至る広範囲の放射線被ばくによって、様々な生物に突然変異が発生する、そう結論づけるためにはこの研究結果には不足するものがあるということになります。
少なくともそれが国連科学委員会の見解ということです。
「2、3の限られた研究結果に基づいて、確固たる結論を出すことはできません。」
ラーション委員長はこう語りました。
このようなわけで、国連科学委員会としては放射線被ばくにより動植物が受ける影響を明らかにするためには、より多くの研究結果を必要とする立場を強調しました。
しかしムソー教授は『チェルノブイリ+フクシマ・リサーチ・イニシアチブ(CFRI)』の調査結果を引用しながら、かつてチェルノブイリの被災地で確認されたのと同じような事態が、福島第一原発周辺の生態系の中に確認されていることを注視すべきだと語りました。
「現地調査の結果、チェルノブイリの被災地の中で放射線量が高い場所では、野鳥の数が3分の2前後にまで減少しました。」
ムソー教授がこう語り、次のように続けました。
「そして各種の昆虫類でも、同様の現象が確認されたのです。」
チェルノブイリ調査班による福島の現地調査に加わった研究者は、福島では多くの動植物に大きな変化は確認できなかったものの、鳥類については2011年7月という早い時点で放射線量の高い場所で数が減少していることが確認されたと語りました。
しかし2012年になると、より多くの動植物に放射線による被害が明らかになってきました。
そして事故以来3年以上の歳月が過ぎた現在では、放射線による影響は時間の経過とともに拡大を続け、一定の割合で野鳥の数が減少し続けていることを研究者たちは確認しています。
▽ 放射線被害に関しては、すでに豊富なデータが蓄積されている
「政府機関の報告に反して」
ムソー教授が語りました。
「チェルノブイリと福島の事故では、低線量被ばくが原因のひとり一人の人間に対する、人間社会に対する、そして各種の動植物と生態系に対する悪影響、言い換えれば彼らを被害者にしてしまっている現実の存在を証明するデータが豊富に蓄積されているのです。」
なぜその事が重要なのでしょうか?
「各種の動植物に起きている被害が、そのまま人間にも直接あてはまるとは言えません。」
京都大学の今中助教が認めました。
「しかしこれらの動植物に起きていることは、私たち人類に対する警告として受け止めるべきだと思います。それが現在、私たちが植物や動物に対する研究を行うべき理由なのです。」
もちろん動物たちに対する医学的研究には精密さが要求されます。
私たち人間は他の動物と基本的な生物学特性を数多く共有しているからです。
チンパンジーに至っては、DNA配列の99パーセントが人間と同じなのです。
「こうした事実から他の動物や植物に起きていることが、人間と無関係であるはずがないのです。」
ムソー教授がこう語りました。
ただし大きな相違点があるとムソー教授が注意を促しました。
「私たちが調査対象としている動植物と比較した場合、福島の被災者の人々の被ばく線量はより少ないものであるという事です。」
「動植物と比較した場合、人間は被ばくを回避する行動をとっており、その分被ばく線量は低くなっています。動植物に見られるような影響が人体に現れるとすれば、さらに長い時間がかかるものと考えられます。」
ムソー教授は自身が脱原発運動家でもないし、国連の中の原子力発電に関わる機関が福島で起きている現実を過少報告していると主張するつもりも無い、こう強調しました。
「もし私が活動家だとすれば、行っているのは環境中で起きていることについて、明確な証拠を基に検証することを求める運動です。」
こうした観点から彼は、国際社会が資金を供給し、幅広い分野に渡って大規模な福島の環境中の生物学的調査を行うよう求めています。
この際留意すべき点について、ムソー教授は次のようにつけ加えました。
「事態を一日でも早く鎮静化させようという目的で作られた国連や政府機関の報告に対し、新たな調査は公平な分析を約束できる独立した立場の研究者たちを集めなければなりません。そして長期にわたる生物学的影響を明らかにするという明確な目標を持ち、現在の状況について鋭い観察眼を持つ必要があります。」
〈 完 〉
http://www.nbcnews.com/science/space/month-space-see-supermoon-other-super-sights-n192001
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福島第一原発においては早くも『凍土壁』対策がほころびを見せ始めていることが報道されました。( http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201409/20140910_63009.html )。
この記事が指摘する事実も含め、最早めちゃくちゃというのが福島第一原発の現実では無いでしょうか?
明日13日(土)は掲載をお休みさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
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【 中秋の名月 】
アメリカNBCニュース 9月10日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
2014年の最後のスーパームーンはハーヴェストムーン(収穫月 – 中秋の名月)でもありました。
スーパームーンは月が地球に最も近づいた時に普段よりも大きく見える現象ですが、9月8日月曜日の満月はハーヴェストムーン(収穫月 – 中秋の名月)としても知られています。
9月22日の北半球の秋分の日にもっとも近い満月の日という位置づけになっています。
ハーヴェストムーンという名の由来は、遅くまで収穫作業に励む農民の手元足元を明るく照らしてくれる月という事から来ています。
9月8日スペインのコンスエグラの風車の後ろに昇った満月。
この地域の風車は1605年にミゲル・デ・セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」によって有名になりました。(写真上)
9月8日南ドイツのアプフェルトラングで沈む夕陽が満月の脇の雲を明るく照らし出していました。(写真下・以下同じ)
ミズーリ川を見下ろす壁の上に腰掛けるカップル。9月8日の満月は2014年度3度目、最後となるスーパームーンでした。
香港のビクトリア公園のランタンの灯りの向こうに輝く月。
ハワイ、ホノルル上空のスーパームーン。
ケンタッキー州ルイスヴィルの上空でスーパームーンの前を横切る旅客機。