ホーム » エッセイ » 【 流血が続くシリア、思うように前へ進めない反乱軍 】
アメリカCBSニュース 2012年2月8日19:25(日本時間9日午前7時25分)
これが血塗られたシリアです。
市民が戦車に立ち向かっていきます。
いたるところに、独裁体制が終焉に向かっている兆候があります。
すべての人々にとって、40年間のアサド・ファミリーによる独裁体制に終止符を打つために始まった反乱は、すでに11カ月が経過しました。
170万人の人口を持つホムズ、フィラデルフィアより少し大きな都市ですが、連日にわたる政府軍の戦車、大砲による包囲攻撃が15日目を迎えました。
今夜もシリア中の都市、そして町でこのような場面が展開されています。
シリアは地理的にイスラエルとイラクに国境を接する難しい位置にあるために、数々の問題が起きやすい国なのです。
シリアでは現在、単独での取材は禁止されています。
このためCBSの特派員、クラリッサ・ウォードは市民軍と行動をともにし、最前線に取材に行きました。
ウォード特派員は農民や労働者が、自宅のすぐ近くで戦っていることに気がつきました。
市民軍はシリア政府軍が市民側への補給を立つために設けた検問所までたどり着きました。
市民軍の兵士たちがオリーブの木立を抜け、敵に接近していきます。
その直後、攻撃が始まりました。
銃撃が始まりましたが、敵の姿はここからは見ることができません。
「お前たちは包囲されている。」
反乱軍の指揮官が、敵のシリア兵に呼びかけました。
「抵抗をやめて、我々とともに戦おう!」
しかし降伏する者は無く、敵は猛烈な銃撃を持って応えました。
市民兵の多くは23歳の機械工であるフォウアド・ハッシャーンのように、若くて未熟な人々がほとんどで す。
市民軍の中にいたヘイがひときわ大きな声で「攻撃しろ!」と叫び、手りゅう弾を敵に向かって投げつけました。
しかし、敵の銃撃は弱まる気配はありません。
数秒後、ファウアドに敵の弾が命中しました。
激しい銃撃が交わされる中、指揮官がぐったりとなったファウアドの体を持ち上げようとしています。
もう一人、手助けするため男性が駆け寄りました。
市民兵たちはこの検問所を奪取しようとしましたが、いまだその企ては成功せず、負傷者も出てしまいました。
一人は重傷です。
市民兵たちはファウアドを病院に運び込もうとしています。
やっと病院に運び込んだときには、ファウアドはすでに死んでいました。
病院では負傷した人々を乗せた担架が階段を駆け上がり、次々と運び込まれてきます。
ひとりの男性が、息を引き取ったばかりの兄弟のために泣き続けていました。
「アラブの誇りは泥にまみれてしまった。」
一人の男性がそう叫び、アサド大統領を呪いました。
しばらくして銃声が響き渡り、人々が祈り始めました。
市民兵の遺体が自宅へと運ばれて行きます。
そこでは 待ち受けていた女性たちが泣き叫ぶ声が、夜の闇を鋭く切り裂きました。
「バシャール・アル・アサドは犬畜生にも劣る!」一人の女性が叫びました。
少なくとも4人の市民が、今日のこの戦闘で殺されました。
市民兵は訓練の行き届いた政府軍の兵士に、敵うはずもありません。
市民兵たちは訓練など受けてはいません。
肉体的にも劣っています。
それでも大砲や戦車を装備する政府軍に、立ち向かっていかなければなりません。
政府軍はさらに空軍による攻撃も、すぐにも始める予定です。
多くの市民兵が今ここで抵抗をやめるつもりはない、と語っています。
しかしあまりにも多くの犠牲者が出てしまいました。
多くの血が流されました。
彼らは40年間抑圧の下に生きてきました。
人々は心の底から、もうたくさんだと思っているのです。
彼らは自らの手で政権を選び、通りに出て自由に会話し合う日を夢見ています。
その日が来るまで、彼らは進んで命を捧げていくことでしょう。
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私は国連の安保理の決議を見ていて、切歯扼腕することが時々あります。
この度のシリアに 対する、安全保障理事会の制裁決議に関してもそうでした。
ロシアが拒否権を行使したのは、50億ドル(3800億円)を超える武器輸出の『得意先』を失いないたくないがためです。
中国の拒否権はもうおなじみです。
人々の権利を国権に優先させることは許さない、という『信念』に基づくものです。
こうした国連に日本は長年、アメリカに次いで世界第2位の巨額の資金供出を続けてきました。
それにより世界における発言権を確保する、という狙いがあったためですが、その狙いは実現できましたか?
IAEAの座長に日本で原発を推進してきた人物を据え、福島第一原発の調査を生ぬるいものにしてもらうのには成功したようですが.....
シリアが秘密警察国家であることは、世界情勢に少し詳しい人なら知っています。
もちろんアメリカの大義が世界の正義ではありませんが、『秘密警察国家』にはどんな言い訳も無い、と私は思っています。
その拷問は生爪をペンチで一枚一枚はがしていき、その傷口に電極を入れて電気を流し、徐々に電圧を上げていく、といった類いのものであり、絶対に許してはならないことが日常的に行われています。
私たち一人一人が事実を知り、いざとなったらきちんと自分の意見を言えるようにしておくことが大切だと思います。
しかし、このCBSの女性特派員の根性は見上げたものだ、と感心させられます。
目の前で市民軍の兵士が死んでいく、その場所にひるむ事なくとどまり、取材を続けているのですから。