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【 死んでいくロボット・潰え去る希望・福島第一原発事故から6年・衝撃の現実 】《前篇》

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所要時間 約 13分

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「前例も経験も無く、ほとんどどうしようもない」状況、「まったく現実的に乏しい、あるいは信用できない」廃炉スケジュール

『これまでの理解を超える』規模の汚染と過酷な作業、破壊された原子炉内部の探査・3号機は不可能

 

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2017年3月9日

 

やっと5回目にたどり着いたリモコンロボット・スコーピオンの任務が結局は失敗に終わったことを、福島第一原発の技術者たちが認めました。

遠隔操作のためのケーブルの先につながれた1台の最新ロボットが破壊された原子炉の中心部に送り込まれましたが、結局は操作不能に陥り、放棄されることになりました。

このロボットによる原子炉内部の状況調査は、6年前に3基の原子炉がメルトダウンした際に生成されたと思われる核燃料デブリにその行く手を遮られることになったのです。

 

先月2台のカメラと放射線濃度の測定装置を備えた長さが60cmの東芝製ロボットが溶け落ちた燃料の正確な位置と状態を確認する調査に失敗し、原子炉内に放棄されましたが、東京電力は今後さらに別の調査を計画していることを明らかにすることで、今回の失敗がさほど深刻なものではないと印象付けようとしました。

たとえ今回行われた調査が失敗に終わったとしても

「私たちが最終的に各燃料デブリを取り除く方法を決定する際に役立つ価値ある情報を入手することができました。」

と東京電力はコメントしました。

 

しかし10時間の耐用時間があったはずのスコーピオン調査ロボットが、わずか2時間で操作不能に陥ったという事実は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業が、どれ程スケールが大きなものであるか、そしてどれ程困難な作業を要するものであるかをはっきりさせました。

専門家の1人は、前例の無い困難さについて次のように発言しました。

「ほとんど想像を絶するほどのものです。」

 

最近日本の経済産業省が行なった試算では、2011年3月11日に襲った巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、3基の原子炉でメルトダウンが発生するというチェルノブイリ以来世界最悪の規模の原子力発電所事故現場では、30年から40年の事故収束・廃炉作業が必要とされ、その費用は21兆.5,000億円に上ると推定されました。

原発事故の被災者に対する補償金も含めたこの金額は、3年前に行われた試算と比較するとほぼ倍になっています。

 

3.11の津波は主に福島第一原発の北側で約19,000人の命を奪い、原子力発電所周辺で暮らしていた160,000の人々は自宅を捨てての避難を強制されることになりました。

それから6年が経過した今、政府当局が安全だと判断を下した場所に元手って暮らす人々はごく少数に留まっています。

 

福島第一原発の破壊された原子炉内の最も危険な各場所に到達し、必要な情報をすべて手に入れるだけの時間充分に機能するロボットを開発する能力は、東京電力にはほとんど期待できないことが証明されています。

折り畳み式のカメラ装着アームを装備していることからスコーピオンと呼ばれる調査ロボットは、原子炉圧力容器の下部でレール沿いに進むことが出来なくなった後、核燃料デブリやそこにあった他の破片によって『死んで』しまいました。

 

このロボットも、これまで投入されてきたロボットも、目に見えない敵によって『死』に至らしめられた可能性があります。

放射線です。

 

放棄される直前、スコーピオンに装着されていた線量計は、原子炉2号機の格納容器内の放射線量が1時間あたり250シーベルトに達していることを示していました。

同じ地点で過去に実施された遠隔操作装置による線量調査では、1分以内に人間が死亡する1時間あたり650シーベルト相当する放射線量が測定されていました。

 

福島第一原発の内田俊志所長は溶け落ちた核燃料の状態について、東京電力が把握している情報が「限られた」ものでしかないことを認めました。

「前回のロボットによる調査もうまくいかず、これまで私たちは原子炉内部の状態については何とか覗き見ることができたという程度の情報しか得ていません。」

ガーディアンを始めとする内外の記者団が行なった最新の福島第一原発への訪問取材において、内田俊志所長はこう語りました。

「しかし現段階では、他の調査方法を考案することは不可能なのです。」

 

遠隔操作ロボットによる調査がうまくいっていないという問題とは別に、調査が始まった原子炉2号機と比べると1号機と3号機の放射線量はさらに高く、現在調査には手をつけられない状態にあります。

数週間の後に小型の防水ロボットを原子炉1号機の内部調査に投入する計画がありますが、さらに損傷の激しい3号機については計画すら立てられない状況にあります。

 

升田尚宏東京電力福島第一廃炉推進カンパニープレジデントは、実際に溶け落ちた核燃料の除去方法を決定するには、もっとたくさんの原子炉内部に関する情報を欲しいと語りました。

 

こうした深刻な障害について解決の見通しが立たない状況の中、東京電力は事故発生から10年後にあたる2021年に溶け落ちた核燃の除去作業を開始すると主張しています。

しかしグリーンピース・ドイツの上席の原子力専門家であり、現在日本に活動の拠点を置いているショーン・バーニー氏は、この作業を行なわなければならない東京電力は「前例も経験も無く、ほとんどどうしようもない」状況に置かれていると語り、東京電力が公表している事故収束・廃炉作業のスケジュールについても、「まったく現実的に乏しい、あるいは信用できない」ものであると付け加えました。

 

〈後篇に続く〉

https://www.theguardian.com/world/2017/mar/09/fukushima-nuclear-cleanup-falters-six-years-after-tsunami

+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

 

電子版の週間ダイヤモンドに『廃炉について、デマと誤報を乗り越えるための4つの論点』という社会学者の記事が連載され、悲観的な展望ばかりを拡散しているとして、ここでご紹介しているような『海外メディア』の記事が批判されています。

取組を続ければいつかは何とかなる、という論調ですが、決定的に不足している観点があると思います。

それは2012年10月にご紹介した【 福島第一原発で今も続く事故、そして危険、その真実 】の記事の中、フェアウィンズのアーニー・ガンダーセン氏が指摘した『事故現場から核燃料を取り出すことが出来たとして、それをどこに持っていくのか?』という問題です。

 

現在の原子力工学が放射性物質を『無毒化』することが出来ない以上、この単位時間当たりいったいどのくらいの放射線を放出しているのか、そして1~3号機併せてどれ程の質量になっているのか、現段階では確認しようのない核燃料デブリ、これを安全・確実に保管する場所と技術が必要なはずです。

他県がその持ち込みを容認するはずもなく、福島の人々は核燃料の取り出しが成功したら、今度はこの問題に苦しまなければなりません。

 

福島第一原発で事故を起こしたのは日本人であり、事故の規模とその影響の大きさから考えて、これは日本全体の問題のはずであり、自分が受けた影響は軽微だからといって福島の人びとだけに重荷を押しつけるわけにはいかないはずです。

だからこそ私たち日本人全員がこの問題に正面から向き合い続ける必要があります。

大勢の人間が向き合えば多種多様の意見や感想が出るのは当たり前であり、それに対し『騒ぎ過ぎは非国民・悲観論を煽るのは非国民』とばかりに、全体主義的論調でそれを抑え込もうとするのは不当だといわなければなりません。

必要なのは悲観論から楽観論まで、その両方の科学的尺度を日本人全員で検証し続けることだと思います。

そうしなければ、被災させられてしまった人々に本当の未来はありません。

 

被災した人々と地域への配慮を欠いた記事が国内メディアに繰り返し登場する以上、私は『海外メディア』の記事の紹介を止めるわけにはいかないと思っています。

 

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【 メトロポリタン美術館375,000の収蔵作品をデジタル化、無料提供 】《10》

 

ニューヨーク・メトロポリタン美術館

 

ニューヨークのメトロポリタン美術館はそのコレクションをデジタル化し、無料で375,000点に上る画像データを公開しました。

いずれも公有財産として、無料で制約なしで利用することが出来ます。

アメリカNBCのサイトでの作品紹介は18点で終わっていますが、せっかくですのでメトロポリタン美術館のサイトから素晴らしい作品を直接ご紹介します。

 

クロード・モネ(フランス: 1840–1926)作[ヴェタイユの夏]油彩、1880。

ヴェタイユはパリの西北、セーヌ川東側にありますが、この絵はその対岸からの風景画です。

個々のタッチの揺らぎには、光と色彩を正確にキャンバスの上に表現しようとしたモネの工夫が見てとれます。

しかし正確な表現を目指したモネのこの手法は皮肉にも後に抽象的表現へと発展することになりました。

実際この絵の上の無数のタッチは、見るものに溶けるような印象を与えています。(写真上)

http://www.metmuseum.org/art/collection/search/437111?pos=19&pg=1&rpp=20&offset=0&rndkey=20170312&ft=*&deptids=11&when=A.D.+1800-1900

 

ポール・ゴーギャン(フランス: 1840–1926)作[イア・オラナ・マリア(アヴェ・マリア)]油彩、1880。

1892年3月の本人の手紙には、ポリネシアで数多くの作品を書き上げたゴーギャンは、その第一号としてキリスト教的題材として取り上たことが印されています。

右側の女性は聖母マリア、肩の上にいるのは幼いイエス・キリストです。

「腰を民族衣装で覆っただけの女性2人の左側には黄色い翼を持った天使の姿があります。

背景には目だたないように暗い色彩の山、花を咲かせた木々を配しました。紫色の小道とエメラルド・グリーンの前景、左手前にはバナナの木を配しました。満足できる出来栄えだと思っています。」

 

ゴーギャンはこうした作品について、所有していたジャワのボロブドゥール遺跡の写真に多くの啓示を得ていました。(写真下)

http://www.metmuseum.org/art/collection/search/438821

 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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