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侵略した事実について反省せず、戦犯の名誉を讃える日本の姿を目の当たりにさせられるアジア各国
日本は「軍国主義との決別」することにより、アジアの隣人との関係を再構築する必要がある
ワシントンポスト 8月28日
日本の歴代首相の中で最も保守的な一人である安倍晋三首相が今年初め、戦争犯罪人として有罪が確定した後処刑され死亡した1,000人を超えるA級、BC級戦犯として処刑された旧日本軍人の追悼法要に「自民党総裁」名で追悼文を送っていたことが明らかになった事を受け、中国、韓国の両国は日本が歴史と真摯に向かい合い、第二次世界大戦当時の侵略主義について充分な反省を行うように改めて求めました。
これに先立ち、日本政府の菅義偉官房長官は、安倍首相は日本国首相としてではなく、自民党総裁として今年4月29日、和歌山県高野町の高野山真言宗「奥の院」で行われた法要に追悼文を送ったものだと語りました。
AP通信が主催者側から入手した追悼文には、「自らの魂を賭して祖国の礎となられた昭和殉難者の御霊(みたま)に謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げる」と書かれていました。
20世紀前半、日本の軍国主義のために様々な形での犠牲を強いられた多くのアジア諸国は、戦争中の日本の侵略主義を反省しようとせず戦犯たちの名誉を讃える日本政府の姿を目の当たりにさせられる事になりました。
今回の追悼文の中身が明らかにされた事で、歴史を歪曲する政治家として繰り返し安倍首相を批判してきた中国、韓国との関係がさらに悪化する事は避けられないかもしれません。
中国外務省は、日本は戦争中の侵略主義について真摯に反省する必要があり、「軍国主義との決別」することによりアジアの隣人との関係を再構築する必要があると述べています。
「侵略政策について真摯に反省を行い、アジアの近隣諸国と国際社会の信用を得るために確実な措置をとるとした、かつての日本政府の態度を支持するよう我々は主張する。」
中国外務省のスポークスマンは声明の中でこう述べています。
韓国外務省は、今回明らかになった安倍首相の追悼文は、太平洋戦争当時の日本の侵略主義について反省し謝罪するとしたかつての日本政府の発言に対し、深刻な疑問を持たざるを得ないとしています。
そして日本政府はアジア地区の平和に貢献し、韓国との関係を改善したいという公式声明を遵守する行動をとるべきだと語っています。
「我々は安倍首相が日本が第二次世界大戦時に犯した戦争犯罪に関し、国際社会が行った裁判とその採決を否定する趣旨の発言を繰り返し行っていることに、深い懸念を抱かざるを得ないのです。」
韓国外務省のスポークスマンは8月28日の記者会見の席上、こう語りました。
日本と中国、韓国との外交関係は、安倍首相が250万人の日本人戦争犠牲者とともに14人のA級戦犯が合祀されている靖国神社に昨年12月に参拝したことにより一層緊張したものになりました。
首相就任以来1年半以上経過しましたが、安倍首相は中国韓国の指導者との首脳会談を開催できずにいます。
今年4月に高野山で行われた法要の席上、安倍首相が送った追悼文は参列者の面前で朗読されたと、主催者の事務方を務める中辻みどり氏がAP通信の取材に答えました。
中辻氏は安倍首相からは昨年も同趣旨の追悼文を受け取ったと語っています。
この法要は戦時中日本の首相を務め、極東軍事裁判によって死刑を宣告された東条英機を始めとする14人のA級戦犯を含む、1,180名の戦犯の名が刻まれた石碑の前で営まれました。
A級戦犯は極東軍事裁判において平和と人類に対する罪を問われ、有罪判決を受けました。
この裁判結果を日本が受諾することについては、サンフランシスコ平和条約の中で条文化されており、菅官房長官は日本政府がこの条約に調印したことにより国際社会に復帰したという認識を示しました。
しかし安倍首相は極東軍事裁判において戦争犯罪者とされた人々は、日本の国内法における戦争犯罪者には該当しないと明言しています。
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/china-calls-on-japan-to-break-with-militarism/2014/08/28/546ffdbe-2e70-11e4-be9e-60cc44c01e7f_story.html
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今回の記事を訳し終え、改めてはっきりさせたいことがあります。
戦後しばらくたってからA級戦犯の『名誉回復』等については国会をはじめ、様々に取りざたされましたが、その際戦前、そして戦争中に民主主義、自由主義、あるいは社会主義などを唱えた人間を次々に逮捕、拘禁して拷問などによって死に至らしめた特高警察などの実行責任については、ほとんど顧みられることは無かったはずです。
この点については現在の安倍首相だけではなく、民主党の野田前首相も戦犯の名誉回復を強く主張していました。
これらの事実に関する参考文献を読んでいると、日本の政治の暗部にまさに暗然とさせられます。
昨日と今日、アメリカを代表するニューヨークタイムズとワシントンポストの記事をご紹介しましたが、世界の普遍的認識と最近の日本国内の認識のずれの大きさを感じないわけにはいきません。
明日9月5日(金)は掲載をお休みいたします。
よろしくお願いいたします。
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【 大量虐殺に遭遇させられる前のユダヤ人たちの暮らし 】〈2〉
ニューヨーカー 8月27日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
ウクライナにあったイェシーバー(ユダヤ教の戒律について学ぶ学校)の外庭で。1937-38頃。(写真上)
宿代を浮かすために公園のベンチで寝るセールスマンの男性。東欧、1935-38頃。(写真下・以下同じ)
廃墟となったフランスのマルセイユ。1947年。
ツェーマッハ・シャバッド(リトアニアの医師、政治家)が虚弱な子供たちのために設営した施設で。
家路につくユダヤ人のセールスマンたち。ウクライナ。1937-38頃。
1900年から1920年ごろまで使われたアンハルター・バーンホフ駅舎の内部。ベルリン、ポツダム広場近く。
ウクライナ、ウジホロドで料理の材料になるアヒルを抱える女性。1935-38頃。
http://www.newyorker.com/culture/photo-booth/roman-vishniac-digital-archive