ホーム » エッセイ » 【 極めて偏った教育を行う幼稚園のスキャンダルと日本の首相夫人 】《前篇》
民主主義と平和主義を基本とする現在の教育制度を否定する『愛国心』教育
日本国内で影響力を増している右翼的教育を推進する運動、その暗い側面に注目が集まる
ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2017年2月24日
今や日本の政治スキャンダルの渦中にある塚本幼稚園では、戦前の日本に生きていた曾祖父の時代なら抵抗なく受け入れられていたかもしれない類いの、極めて保守的な教育を行っています。
彼らは旧日本軍の軍歌に合わせ、軍人さながらの姿勢で行進します。
こどもたちは19世紀日本で、天皇の名の下に制定された教育勅語の愛国的フレーズを復唱させられています。
こうした意図について、学園側は「世界で最も純粋な国」の子供たちに「愛国心と誇りを育てること」が目的だと語っています。
そして今、学園を経営する塚本氏と安倍晋三首相の妻を含むその国粋主義者である支援者たちに批判が集中する事態となっています。
この学園はきわめて偏狭な立場から中国人と韓国人に対する攻撃を助長する一方、日本政府からは違法な財政的援助を受けていた可能性があり、批判が集まっています。
強まる抗議の声は、日本国内で影響力を増している右翼的教育を推進する運動の暗い側面に注目を集め、国粋主義的な教育政策を進めてきた安倍政権を守勢に立たせることになりました。
安部首相は24日金曜日妻の昭恵氏が塚本幼稚園が母体となって開校の準備が進んでいる小学校の『名誉校長』を辞任したと国会で答弁しました。
この小学校は個人の学校経営者が日本政府から不当に安い価格で購入した土地に建設されています。
この経緯の詳細は今月になって明らかにされましたが、購入した側に一方的に有利な取引実態は、背景に政治的な特別の計らいがあったのではないかという疑惑を招くことになりました。
「妻も私自身も、この学校の許認可あるいは土地の取得にまったく関与していません。」
安部首相は国会でこう語りました答弁しました。
「私や妻がこの件に関与したというのであれば、私は政治家を辞任します。」
安部首相やその取り巻きの保守派の政治家たちは、これまで日本の教育制度を自由主義に偏り過ぎていると批判を繰り返してきました。
現在の日本の教育制度の下では左翼的立場の教師によって日本の第二次世界大戦中の事歴に関する『自虐的』史観が展開され、日本の伝統的価値観を軽視して個人主義や平和主義が必要以上に重視されているとして攻撃しています。
問題の渦中の人物、塚本氏は教育制度を戦前同様押し戻そうとする右翼的人物の中でも、その最右翼に属する人物である、こう語るのは東京の学習院大学で教育学を専攻する佐藤学教授です。
「そこにあるのは、平和主義と民主主義を基本理念とする戦後の教育制度の否定です。」
塚本幼稚園にあっては旧来の愛国心の顕彰は時に偏見による攻撃と見境がつかなくなります。
学校側は先週、「外国人の方に対して誤解を招く表現があったことをお詫び致します」とウェブサイトで謝罪しました。
子どもたちを通園させている保護者によれば、PTA会費に関する問題などありきたりな苦情を呈しただけで、「よこしまな考えを持つ韓国人やシナ人」たちが面倒に巻き込もうとしているなどと、狂信的愛国主義的な極端な表現を使って痛烈に非難されることもあります。
この保護者たちは学園側に疑問を呈すると「巧妙に潜り込んだK国・C国人等の元不良保護者である」などと籠池泰典園長から攻撃されると証言しました。
籠池園長は保護者に送付した文書の中で、「問題は、外見は日本人と変わらないが外国の考え方を日本の中に持ち込もうとしている人間たちの存在」だと主張していました。
安倍首相は自身の政治家としてのキャリアの中で、日本の教育制度を改めることを優先課題の一つに挙げ、塚本幼稚園のような取り組みであっても表現や手法が見た目に穏やかなものであれば、これまで擁護する立場を取ってきました。
日本のニュースメディアが入手した塚本幼稚園が新設しようとしている小学校の初期の広告パンフレットでは、籠池氏が校名に安倍首相の名を冠しようと提案していました。
籠池氏は結局別の校名を採用しましたが、安倍首相自身が自分の名を使わないよう要請したと語りました。
安倍首相は日本の歴史教科書の中で、大日本帝国時代にアジアで行われた残虐行為に関する記述を曖昧な表現にするなどの措置を支持、さらにさらに公立学校の一般教育の中で愛国心を育てるための『道徳教育』を行うとする法律を可決成立させました。
《後編に続く》
https://www.nytimes.com/Asia Pacific
Bigotry and Fraud Scandal at Kindergarten Linked to Japan’s First Lady
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個人的に私がいつも感じる疑問は、ちゃんとした日本語の文章も作れない人間たちがどうやって美しい日本の伝統を守るのか、という事です。
私が考える愛国というのは自分を育んでくれた身近なコミュニティや周囲の自然環境などをごく当たり前に大切にするという事であり、そういう意味では福島第一原発などはきわめて非愛国的です。
そして日々変わりつつある世界環境の中で、どうやったら日本の美や利点を無理せず維持できるかという工夫を考えるのが真の意味の国防であり、足元で拡大する子供たちの貧困問題などを放置したまま軍備にばかり多額の国家予算を注ぎ込むことが賢明な国防政策だなどとは、とても思えません。
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【 メトロポリタン美術館375,000の収蔵作品をデジタル化、無料提供 】《3》
NBCニュース2017年2月14日
ニューヨークのメトロポリタン美術館はそのコレクションをデジタル化し、無料で375,000点に上る画像データを公開しました。
いずれも公有財産として、無料でしかも制約なしで利用することが出来ます。
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(イタリア : 1598-1680)[バッカス祭・子どもたちと戯れるローマ神ファウヌス]
ベルニーニはイタリア、バロック芸術の彫刻分野における代表的芸術家です。(写真上)
1495-1505年ごろのユニコーンを描いたウール製のタペストリー。動植物はユニコーンの物語を描いたタペストリーの中で重要な役割を演じています。(写真下)
http://www.nbcnews.com/slideshow/met-digitizes-its-collection-releasing-350-00-images-free-n719661