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子どもたちの貧困問題に対する安倍首相の取り組み姿勢は信頼できない
貧困問題について日本政府は民間の取り組みに任せっ放し、実質的には責任を放棄している
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ 2016年12月22日
▽ 信頼できない…
全国子どもの貧困・教育支援団体協議会の世話人代表を務める青砥恭(やすし)さんは、安倍首相や安倍政権が子供たちの貧困問題を解消するため本腰を入れるとの約束について、信用することはできないと語りました。
「率直に言って、子どもたちの貧困問題にも全体的な貧困問題にも、安倍首相が真剣に取り組むつもりがあると私は信じることはできません。保守政党に共通しているのは貧困問題には関心が無いという事です。貧困問題は選挙の際、票の獲得にはつながらないからです。」
「政治家は常に、今現実になっている差し迫った問題の解決を求められています。そうした人間たちが現在の子どもたち、そして人々がこれから40年から50年という長い期間どのように暮らしていくのかをじっくり考える能力を持っているとは思えません。」
青砥さんはこう語りました。
そして青砥さんは次のように付け加えました。
「現在の制度の下では、こうした人々を実際に救済するシステムは機能していません。だからこそ私たちの組織は自主的にこうした隙間を埋めようと行動しているのです。」
特定非営利活動法人の豊島子どもWAKUWAKUネットワークの理事長を務める栗林知絵子さんは自身が暮らす地元の豊島区で、貧困にあえぐ子供たちのために『子ども食堂』の取り組みを全国で初めて行いました。
この取り組みは直ちに全国に広がり、現在では日本国内に300カ所の拠点が出来ました。
「私は教師でもありませんし、子ども育てるプロフェッショナルという訳でもありません。私はこの地区で自分の子どもを育てた一人の母親に過ぎません。」
栗林さんがこう語りました。
「私が子育てをしていた頃、しばしばおなかをすかせた子どもたちに出会いました。その子たちはその時間まで何も食べることが出来ないままでいたのです。私が最初に始めたのは、貧困のため高校進学をあきらめかけていた子供たちに対する学習支援でした。」
▽ 生きることに精いっぱいの毎日
「子供たちの1人は、現在の生活の中では勉強することもままならないと語りました。彼女は毎日母親から昼食代として500円ずつ受け取っていたのですが、実際にはそのお金ですべてをやりくりしなければならなかったのです。」
栗林さんがこう語りました。
子ども食堂は地元の子どもたちに栄養価の高い食事を提供し、一緒に快適な環境でくつろいだ時間を過ごすことができる場所を提供するだけでなく、ボランティアの大学生や高校生が進んで子供たちの学習のサポートを行っています。
しかしこうした取り組みだけでは問題の本質的な解決には至りません。
その理由の一つとしてこうした問題に詳しい専門家は、法定貧困レベルを下回る暮らしを強いられている子供たちの世話を日本政府がNGOなどに任せっぱなしにし、実質的には責任を放棄しているに等しい実情を挙げました。
「私は、日本政府がもっと多くの対策を実行すべきであり、そして今の日本の政治には貧困問題を解決していくための取り組みが明らかに不足していると考えています。」
栗林さんはこう語り、次のようにつけ加えました。
「しかし今や日本中の市民が子供たちの貧困問題が深刻になっているという事実を把握するようになっており、私たちが協力すればこうした問題を解決するために具体的な対策を採る必要があるという事も理解するようになりました。
子ども食堂などもそうした対策のひとつです。」
「これは、我々の子供たちの将来について考えるべき良い機会なのです。」
〈 完 〉
http://www.dw.com/en/japan-a-wealthy-nation-with-poor-children/a-36875397
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【 アイウィットネス(Eyewitness)目を奪われる光景 】
ガーディアン 2016年11月
11月16日ケニアのナイロビ郊外で焼却処分される大量の違法所持の銃。
国内に密輸される違法な銃の取り締まり強化の一環として、ケニア政府が行った措置です。(写真上)
11月15日、インドのカシミール地方スリナガル近郊で、秋の光の中でクリケットに興じる人々。(写真下・以下同じ)
11月14日、タイのチェンマイで始まった仏教行事灯篭祭りの初日、祈りを捧げるなったばかりの僧侶たち。
https://www.theguardian.com/world/series/eyewitness