ホーム » エッセイ » 【 日本政府、1,600キロ沖合の小さな島に130億円を投入 】
「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」国連海洋法
東シナ海において軍事的活動を活発化させ圧力を強め続ける中国を、軍事的経済的にけん制するための前線拠点
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2月3日
沖ノ鳥島に7,500万ポンド(約130億円)の予算をかけて整備を行うという日本政府の発表は、中国政府との間の長年の紛争を再燃させる可能性があります。
中国側から見る限り、沖ノ鳥島はおよそ人間が暮らすことなど不可能な岩礁の集まりに過ぎません。
しかし日本側から見れば、『はるか沖合の鳥たちが羽を休めるための島々』として知られる広大な太平洋に散らばるこの小さな岩礁群は、東シナ海において軍事的活動を活発化させ圧力を強め続ける中国を軍事的にも経済的にもけん制するための、前線拠点として利用可能です。
日本政府は2月第一週、東京から約1,600キロ南方にある沖ノ鳥島の監視施設を再整備するため130億円を予算化すると発表しました。
しかしこの措置は中国政府との間で長年懸案となってきた海事問題を紛糾させる可能性があります。
近年、北東アジアのライバル同士が東シナ海の尖閣諸島の主権をめぐって外交的に衝突する間、沖ノ鳥島は見落とされてきました。
これまで中国が沖ノ鳥島に関する領有権を主張したことはありませんが、日本政府がちっぽけな非常に小さい岩礁に多額の投資を行うことについて静観するつもりは無いと考えられます。
周囲には豊かな漁業資源があり、潜在的には大規模な海底油田などのエネルギー資源に加え、豊富なレアメタル資源なども存在しています。
この環礁は台湾と米国が領有するグアムのざっと中間に位置し、東西4.5km、南北1.7km程の大きさを持っていますが、東シナ海の尖閣諸島を巡る領有権争いに加え、南シナ海で同様の施設の建設を進める中国との間で緊張が高まる中、戦略的な重要性が増しています。
これまでこの付近での中国艦船の活動は対日本というよりは、台湾を巡って紛争が発生して米国艦船がこの海域内に入ってきた場合、潜水艦などの海底での作戦実施の際に必要になる海図作成のための調査であったと見られています。
中国政府は沖ノ鳥島の定義については人間が居住可能な島ではなく単なる岩礁であり、したがって周辺200海里に日本が排他的経済水域を設定することはできないとの主張を長年繰り返してきました。
海洋法に関する国際連合条約は、その第121条で島について次のように定義しています。
「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」
そしてその第3項に次のように記されています。
「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」
こうした理由からこれまで日本は、中国が南シナ海において行っているような、大量の土砂とコンクリートを使って人工島を建設するような取り組みは行わず、代わりに現存する珊瑚層が海面下で消滅するのを防ぐ対策を行い、その周囲に排他的経済水域を設定してきました。
1980年代後半から日本は干潮時に海面に現れる2つの岩礁を浸食から守るため、金属性の防波堤とコンクリート製の護岸設備を作るのに約700億円を投じてきました。
そして第3の岩礁については、波が運んでくるがれきなどからの保護のため、チタン製のネットがかけられています。
そして付近を航行する艦船をモニターし、国土交通省に情報を送るために地上3階建てに相当する監視硝を建設しました。
国土交通省の担当者は朝日新聞の取材に対し、恒常的な浸食に台風の接近による損傷が加わり、倒壊を防ぐため緊急修理が必要になったと答えました。
「これらの施設一式の保全のため、再整備を行う必要があります。」
氏名は明らかではありませんが、同省の担当者はこう語りました。
「できるだけ早く建設に着手したいと考えています。」
http://www.theguardian.com/world/2016/feb/03/japan-spend-billions-yen-tiny-okinotori-islands-1000-miles-south-of-tokyo
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【 今週3月20日~26日の傑作報道写真ベスト20から 】
グレッグ・ホワイトモア / ザ・ガーディアン 3月26日
ブリュッセル市内の建物の壁に、テロの犠牲者へのメッセージを書く2人の男性。(写真上)
ユダヤのプリム祭(エステル記に記された古代ペルシャでの大量虐殺からユダヤ人が逃れ得たことを祝う祭り)の休日、ネタニアのシナゴーグへ向かって歩く女の子。(写真下・以下同じ)
ニュージャージー州の住宅火災の現場の消防士。
マケドニアとの国境の町、ギリシア、イドメネイ村の畑の中にたたずむ難民の子供。
インド、スリナガルから約75キロの場所にあるカンガン村でブランコで遊ぶカシミール地方の女の子。
キューバの首都ハバナで演説するテレビの中のオバマ大統領を見つめる男性。
インドネシアのスマトラ島で、子どもを抱きかかえるオランウータンの母親。
今週亡くなったオランダの伝説的サッカープレーヤー、ヨハン・クライフの自宅前に置かれた写真を濡らす雨の滴。
http://www.theguardian.com/artanddesign/gallery/2016/mar/26/the-20-photographs-of-the-week