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起業する・実業家になるという事が、良い職業選択であると考える日本人の割合は31%だけ
新しい事業を始められない原因は、日本人のDNAの中にあるのではなく日本の社会構造の中にある
エコノミスト 2016年11月5日
LinkedIn(リンクトイン : ビジネス向けのソーシャル・ネットワーキング・サービス)の日本版とも言える、新世代のためのジョブサイトWANTEDLY(ウォンテッドリー)は、たとえカリフォルニアの会社であったとしても違和感はありません。
繁盛しているこの会社のオフィスを特徴づけているのは、今はやりの家具と卓球台です。
32才の最高責任者である仲晶子氏は、黒っぽいスーツに白のワイシャツやブラウス姿の代わりに、ジーンズとソックスをはいて歩き回る社員たちを率いています。
会議室には有名なマンガ・コミックの登場人物の名前がつけられています。
しかしWANTEDLY(ウォンテッドリー)のような会社はまだまだ一般的な存在ではありません。
景気が良かった1980年代、そして1990年代の後半に始まり短命に終わったドットコム・ブーム以降も、日本はWANTEDLY(ウォンテッドリー)のような会社が起業する際、条件的に決して恵まれているとはいえません。
起業する・実業家になるという事が良い職業選択であると考える日本人の割合は31%だけですが、2014年に世界中の大学が協力して調査・編集・完成させた企業家精神モニター調査(Global Entrepreneurship Monitor - GEM)によれば、その順位はプエルトリコに次いで下から2番目というものでした。
日本と比べると、アメリカは65%、中国は66%、オランダは79%の学生が職業選択として起業する・実業家になることが望ましいと回答しました。
日本の安倍晋三首相は、日本経済復活のための一策として、国民に対し新たなビジネスを始めることを奨励しようとしました。
これまでになかった仕事を作りだすこと、そしてアメリカと比べると65%に過ぎない生産性を高めることに着手することは、日本経済の復活に向けて何としても実現しなければならない必須の要件です。
安部首相は起業することをもっと簡単に、手早く実現できるよう制度改革を行いましたが、現実はなかなか変わりませんでした。
例を挙げると2016年上期、日本国内のベンチャー・ビジネスへの投資は928億円で、前年同期の765億円と比べ、投資規模としても大きくは無く上昇率もおおきいものではありません。
しました。
日本では株式市場の存在が大きく、起業資金を集めるためには株式の公開公募の方が方法としては一般的であるのです。
日本では主に生命科学と生物工学において、有望な企業が2、3誕生しました。
そうした会社のひとつ、スパイバー(Spiber - 「スパイダー(Spider:蜘蛛)」と「ファイバー(Fiber:繊維)」を組み合わせた造語)はクモの糸をヒントに強度がきわめて強い絹糸のような、人工クモ糸繊維という新しい素材を創り出しました。
しかし日本に新しい起業の動きを創り出すためには、しなければならないことはまだまだあります。
日本ではリスク回避がことのほか重視されます。
大部分の日本人は何より失敗することを恐れます。
2011年3月に発生した東日本大震災の地震と津波によって様々な形で被害を被った人々とともにニットウェアを制作販売する会社を立ち上げた御手洗たま子さんは、震災で生計手段を失った人々が再び立ち上がる気持ちになれるように、その先駆けをつとめたかったのだと語りました。
しかし震災から5年が経った今も、立ち上がることが出来たのはわずかな人々だけです。
「ひとつの形にとらわれる必要はありません。」
起業家から米国政府、そして日本政府のアドバイザーに転身したウィリアム斎藤さんがこう語りました。
同氏はアメリカ西海岸で行っていた事業を整理した後日本に渡り、出資を受けた企業を設立し軌道に載せる事業も手掛けています。
「そうした問題の原因は日本人のDNAの中にあるのではなく、日本の社会構造にあります。」
慶應義塾大学の國領二郎教授がこう語りました。
〈 後篇に続く 〉
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【 12月9日までの報道写真から 】《1》
アメリカNBCニュース 2016年12月9日
12月9日中国の瀋陽市内の公園内の凍結した湖で、氷を割って泳ぐ男性。(写真上)
12月8日パリ市内、はもやに覆われるエッフェル塔。
人間の髪の毛の太さよりはるかに小さく有毒な、そして人間ののどを攻撃する微細な煤塵が市全体を覆い、パリはこの10年で最悪の汚染状態になっています。
この事態を受け市当局は車両の通行制限その他の例外的措置を取っていますが、ほとんど効果は見られません。(写真下・以下同じ)
12月4日パリのセーヌ川でスタンド・パドル競争をするサーファーたち。
12月7日のスコットランドのエジンバラで、クリスマス・ツリー迷路を楽しむ市民たち。
12月2日キューバ、バヤモでフィデル・カストロの灰を運び込む葬列の到着を待つ人々。
http://www.nbcnews.com/slideshow/week-pictures-dec-2-9-n694191