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安倍政権の憲法第9条の解釈の変更の裏には、『不正な意図』が隠されている
安倍政権による憲法第9条の解釈の変更は、平和憲法を窒息死させてしまった
ジョン・フィファー(ワシントン)/ IPSニュース 2014年7月7日
日本は70年近く『平和憲法』のもとに国づくりを進めてきました。
日本国憲法を最も特徴づけるのが第9条であり、日本が国際紛争を解決する手段としての戦争を禁じています。
しかしこの数十年間の度重なる「再解釈」により、平和憲法はその本来の機能を徐々に奪われてきました。
そして安倍政権による最新の決定は、平和憲法を窒息死させてしまったのです。
7月、安倍政権は日本の集団的自衛権の原則に関する閣議決定を公表しました。
平和憲法のもとでは日本は、自衛目的以外の武力行使は許されません。
そして日本自体が攻撃されない限り、同盟国が攻撃を受けていても援護のために武力行使を行うことはできません。
安倍首相は今回の解釈変更により、日本が戦争に巻き込まれる危険性が低くなるのだと強調しました。
安倍首相は今回の解釈変更は海外での軍事活動に大きな変更をもたらすことは無く、憲法違反にもあたらないと語っています。
しかし実際には今回の解釈変更は、今後の展開に著しい影響を及ぼすことになります。
これまで長い間日本に対し、その安全保障戦略の一端を担うよう促してきたアメリカ政府は、安倍政権による思い切った政策転換を称賛するメッセージを送りました。
チャック・ヘーゲル国防長官はこの政策転換について、
「世界とアジア地区における平和と安全に、日本がより一層の貢献をするための重要なステップ」
と表現しました。
日本の近隣諸国の反応は、きわめて冷めたものでした。
日本は現在その周辺の島々の帰属をめぐり、中国、韓国、そしてロシアとの間に緊張関係が生じていますが、安倍政権の対応はそれぞれの事情を色濃く反映したものとなりました。
たとえばは韓国では与党と最大野党とが共同歩調を取ることはめったにありませんが、安倍首相の憲法第9条の解釈の変更は韓国の与野党を一致団結させることになりました。
両党の代表は揃って日本の動きを、地域の安定に対する脅威であると非難しました。
中国のメディアはさらに厳しい表現を用いました。
安倍政権の憲法第9条の解釈の変更の裏には、『不正な意図』が隠されていると表現したのです。
そして、日本人すべてが今回の憲法第9条の解釈の変更を温かく迎え入れたわけでもありません。
安倍首相は国内の情勢を見て憲法の条文そのものの変更よりは、内閣の閣議決定により解釈を変更するという手段を選択しました。
を変えようとするよりはむしろ、内閣レベルに変化を押し通す方向に向かうことを強制されました。 日本の与党自民党と連立を組む公明党を併せても、憲法の条文を変えるために必要な議会内の絶対多数には届きません。
仮に議決しても、次に国民投票による承認手続きが必要になります。
その手続きがうまくいく可能性はなおさら低いと考えられます。
世論調査のひとつを例にとれば、日本国民の58パーセントは、安倍首相が行った憲法第9条の解釈の変更に反対しています。
この第9条を完全に放棄してしまう事は、同様の、あるいはそれ以上の反対に遭遇することになるでしょう。
しかし首相としての最初の任期に、安倍氏は自身が進めようとしている憲法の変更に有利に働かせるため、最低投票率について規定の無い新しい国民投票法を成立させました。
安倍晋三氏はそもそもの始めから、日本の軍備をより一層増強すべきだと明確に主張してきました。
しかし日本の軍備の拡大増強を図るため、日本政府が憲法の解釈に変更が加えたのはこれが初めてではありません。
日本の軍隊は、正式には未だに自衛隊と呼ばれています。
北朝鮮が1998年に大型ミサイルを日本の空域に打ち込んだ後、日本はアメリカが主導するミサイル防衛システムへの参加割合を高めました。
そして9.11同時多発テロが発生すると、今度は海外での戦闘を行うアメリカ軍を自衛隊が後方支援することを認めた新しい法律を可決しました。
自国が攻撃を受けた場合にのみ武力行使を認めていた日本国憲法の規定が、ここにおいて覆されることになったのです。
〈後篇に続く〉
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下の写真の5枚目を見ていただくと、現代の戦争がどういうものか、仮に自衛隊が海外派遣されればどういう環境に身を置かなければならないかが端的にご理解いただけるのではないでしょうか。
そして6枚目の写真には『戦争は資源のムダづかい』と名づけられたゴミ箱が出てきます。
第二次世界大戦当時の記録フィルムや映画を見る限り、アメリカ軍やイギリス軍が軍隊内においてもユーモアの精神を失う事が無かったのに対し、日本軍の規律のうるささ、そして無意味な死を強制された理不尽さは陰惨の域に達しています。
日本人は軍隊を持つべきではない、私がそう考える理由のひとつです。