ホーム » エッセイ » 被災者の人権を侵害 – 日本の原子力行政 : 福島第一原発事故の被災者、窮状を国連で証言
財政的に追い詰められ、まだ危険な量の放射線が残る自宅に戻ることを強制されている原発被災者
自宅を捨てて逃げなければならなかった原発被災者に、二重三重の経済的困難がのしかかる
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2017年10月11日
2011年に発生した福島第一原発の事故により自宅を捨てて避難せざるを得なかった女性が、ジュネーヴの国連本部で開催される委員会に先立ち、原発難民にされてしまった人々の人権が侵害されていると証言する予定であるとガーディアンの取材に答えました。
福島第一原子力発電所の3基の原子炉のメルトダウンした後、園田光子さんは夫とともに10歳の息子を連れてそれまで住んでいた村から自主的に避難しました。
園田さんは国連人権委員会の席上、こうした避難者が財政的な困難に直面し、事故発生から7年近くが経っても放射線量が危険な値に留まっているかつての住居に戻ることを強制されていると証言することになっています。
園田さんはジュネーヴの委員会に先立ち、日本国内で開催される調査会で証言することになっていますが、ガーディアンの取材にこう答えました。
「私たちは日本の政府からも社会からも、見捨てられたように感じています。」
園田さんのように事故当時、指定避難区域以外に暮らしていた住民で現在他の場所で避難生活を送っている人々の数は約27,000人と見積もられています。
彼らが暮らしていた場所については未だに放射線量の高さに懸念があり、果たして住民の安全が保たれるのかどうか懸念が残りますが、日本政府は今年3月に住宅費用の援助を打ち切りました。
これに加え福島地区の再建の取組の一環として日本政府は、一度立ち入り禁止区域に指定された後除染作業を行った区域について再び居住地としてこれを開放する方針を示し、これによって事故の際立ち退きを命じ去られた数万人の住民は来年3月に補償金と住宅援助の両方の支払いを打ち切られることになりました。
このように政府が財政支援を打ち切る方針を明示したことにより、避難民の人びとは不可能とも言える選択を迫られることになりました。
放射能による汚染が解消されていない場所に戻って暮らすか、安全な場所で暮らす代わりに国家による補償を打ち切られ、今以上に苦しい生活を強いられるか、そのどちらかを選ばなければなりません。
グリーンピース・ジャパンにおける世界的なエネルギー・キャンペーンの先駆者であるケンドラ・ウルリッヒ氏は、次のように述べました。
「原発難民の人々にはかつて住んでいた家に戻るかどうか冷静に判断する選択権を与えられるべきであり、そのために充分な財政援助を提供されるべきです。」
「もし原発難民の人びとが経済的圧力によって帰還を余儀なくされているのであれば、それは情報に基づく決定を下せる立場にないという事です。この度の国連総会は、日本政府に対し正しい対応を行うよう、圧力をかけることが目的です。」
原発事故によって避難を余儀なくされた人々は、『ホットスポット』と呼ばれる放射線量が極端に高い場所が各所に残っているにもかかわらず、今度は福島第一原発近くの自宅に戻ることを強く勧められているのです。
今年3月に避難命令が解除された飯舘村では、前例の無い規模での除染作業が行なわれた住宅や学校など公共施設に対しては安全だと宣言されたものの、周囲の森林の多くは放射能が高いままです。
「野外刑務所、そんな表現をしても良いかもしれません。」
ウルリッヒ氏がこう語りました。
「こうした場所に戻ってしまえば、人々の生活の質が受ける悪影響は厳しいものになるでしょう。この場所での生活は森林とは切っても切れない関係にあります。しかし放射能汚染により森の中に入ることは決して許されません。そして森林全体を除染することは不可能です。」
数ヶ月間各所を転々とした後、園田さんと家族は2年間京都に住んでいましたが、その場所の自治体が無償でアパートを提供してくれました。
その後これまでの4年間は夫の母国である英国で暮らしてきました。
フリーの翻訳家であり日本の書道の師範でもある園田さんは
「私たちは実質的に2度に渡り避難しなければなりませんでした。息子も私も最初は本当に苦労しました。私たちは日本を離れたくはありませんでした。」
食品の安全性と内部放射線被ばくに対する深刻な懸念があるため、親戚に会うための短期の滞在を除いて、園田さんはもう二度と福島の故郷に戻ることはではないと確信を深めています。
「私の故郷の村はとても美しい場所なので、本当に悲しいです。」
と彼女はこう語りました。
「そこには私たちの家があり、引退後はそこで生活するつもりでした。」
福島第一原発の事故による避難は家族を離散させてしまいました。
園田さんの両親は暮らす場所を新たに手に入れるために必要な資金を調達しようと悪戦苦闘していますが、捨てざるを得なかった自宅の住宅ローンの支払い義務が重くのしかかっています。
園田さんが次のように語りました。
「今年3月、日本政府が住宅援助を打ち切ったことは冷酷な仕打ちでした。」
「何人かの友人は望まないのに、福島に戻るという以外の選択肢が無くなってしまったのです。」
原発難民の支援を行っているグリーンピース・ジャパンは、園田さんが行なう証言が被災者への財政的支援を継続し、住民の帰還計画を推し進めようとしている日本政府に対する国際的な圧力を構築するための最初のステップとなり、政府が計画を撤回する結果に結びつくことを期待しています。
グリーンピース・ジャパンは過去、福島周辺の放射線量が、国際放射線防護委員会が勧告している放射線への曝露限度である1ミリシーベルト(mSv)を下回るまで、福島周辺の安全宣言を行なわないよう日本政府に要請していました。
日本政府は長期的には年間1ミリシーベルトを長期目標とするとしていますが、原子力発電所の労働者に適用される年間曝露限度である年間20ミリシーベルト以下の地域に、一般の住民が帰還して生活することを奨励しています。
こうした日本政府の態度に対し、園田さんが次のように語りました。
「なぜ一般の人、特に女性や子供たちが国際的に定められた限度の20倍の放射線がある場所で生活しなければならないのでしょうか?」
「日本政府は、被災者にきちんとした回答をしていません。」
1番目の写真 : 指定避難区域の外側で農作業をする園田さんの叔母
2番目の写真 : 福島第一原発事故発生の前、近くの山間の渓流で水を飲む園田さんの息子と友だち
3番目の写真 : 福島第一原発の事故発生の前、自宅近くを歩く園田さんの家族
https://www.theguardian.com/environment/2017/oct/11/fukushima-evacuee-un-japan-human-rights
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お断りしなければなりませんが、原文の記事には『安部政権』も『安倍首相』も一切書かれていません。
被災者への援助を打ち切るのは Japanese Government であり、Abe Administrationとは書かれていません。
しかし原子力行政は国の重要な政策の一つであり、その方針を決めるのは現政権、すなわち安部政権に他なりません。
本文中に『日本政府』とあるものは、すべて安部政権と置き換えるべきです。
しかしながら原文を尊重し、本文中は『日本政府』とさせていただきました。
※英文からの翻訳のため、個人名・固有名詞の漢字表記に誤りがある場合があります。