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【 日本と韓国の『従軍慰安婦』に関する議論の『決着』】《後編》

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所要時間 約 7分

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この合意は、自分たちの願いを完全に裏切る外交的な陰謀だと憤る元従軍慰安婦の女性たち
経済面と安全保障面での協力関係の強化し、対中国「力による均衡」の実現を目指す日韓両国の首脳
女性たちの強制徴用に大日本帝国が国家として直接関わっていたかどうか、長く続いてきた議論には言及せず

ニューヨークタイムズ 12月28日

NYT Comfort 1
今回の合意に基づき日本政府は韓国政府が立ち上げる基金に830万ドルを提供し、基金は従軍慰安だった女性たちへの医療、介護、その他の援護措置を実施します。
両国の報道によれば、当初日本側はこれほどの金額は想定していなかったとみられます。
しかし従軍慰安婦として使役された女性たちはこの援助を受け取りたがらないだろうというのが、韓国政府当局者の観測です。

しかし日本政府が国家予算から基金に資金提供することは、明らかな前進です。
1993年の謝罪によって生み出された基金は、民間の寄付を募って運営されましたが、韓国内では完全平等に提供されたわけではありませんでした。
60人の韓国人女性が基金から財政援助を受けましたが、他の多くはそれを受け取りを拒否しました。

日本政府も韓国政府から、この問題について二度と日本政府を非難しないという大きな譲歩を引き出しました。

歴史家は韓国を中心に少なくとも数万人の女性が、1930年代初頭から1945年の間売春宿に強制的に送り込まれました。
その中、戦争を生き延びることができた女性たちは恥辱から沈黙を守り、そして多くの女性が決して結婚しようとはしませんでした。

従軍慰安婦02
1990年代になってやっと、当時のことを証言する女性が出始めました。
最終的に238人の女性が韓国内で名乗り出ましたが、現在なお生存しているのはわずか46名になりました。
今回の合意に対するこれらの女性たちの反応は、歓迎からは程遠いものでした。

記者会見で88歳のリー・ヤン・スーさんは次のように語りました。
「この合意は従軍慰安婦にさせられた人々の意向を反映したものではありません。」
「私は完全に無視します。」
彼女は今回の合意が日本に法的責任を認めさせ、正式に賠償金を提供させるという女性の長年の要求からほど遠い不完全なものだと語りました。

さらに彼女は市民グループが2011年にソウル市内の日本大使館の前に建立した従軍慰安婦を象徴する女の子の像の撤去にも反対すると語りました。
交渉の間、日本は像の撤去を要求して来ましたが、28日韓国政府はこの問題について女性たちとの協議を行うと語りました。

NYT Comfort 3
韓国の市民グループ『日本軍の性的な奴隷制度のために強制徴用された女性のための韓国会議』は今回の取引について「衝撃的なもの」だと語りました。
「韓国は1ペック(約8.8リットル)を得ただけなのに、日本には1ブッシェル(約35リットル)も与えるなど、屈辱的な外交もいいところです。」
グループは声明でこう述べました。
「この合意は、従軍慰安婦と韓国の人々の願いを完全に裏切る外交的な陰謀です。」

韓国の朴大統領はその声明において、重要な取引相手である隣国日本との関係を改善する必要性に触れ、より大きな視野の中で今回の合意を受け入れるよう韓国国民に訴えました。
そして従軍慰安婦であった女性たちが亡くなってしまう前に、この問題の解決を望む韓国政府の立場について強調しました。

日本はこれまで、韓国に対する植民地支配から生じたすべての法律問題は、1965年の条約で解決済みだと主張してきました。
両国の交渉担当者は28日、漠然とした表現が用いられた合意書に妥協点を見出しました。
この合意書は日本が認めた『責任』について、合法的だったのか、そして道義的にはどうだったのか、いずれについても明確にはしていません。

反安倍 1
岸田外務大臣は日本政府の拠出金が、法的な賠償金とは異なることを明言しました。
さらに合意書は女性たちの強制徴用に大日本帝国が国家として直接関わっていたかどうかという、長く続いてきた議論については触れませんでした。

日本国内の当初の反応は概ね好意的でした。
1995年、国内の保守層の反対を押し切って第二次世界大戦中の日本の歴史的な謝罪をおこなった村山富市元首相は、安倍首相が「良い決断を行った。」と感想を語りました。
安倍首相が率いる自由民主党の右翼メンバーである稲田朋美氏は、韓国との論争を沈静化させることにこの取引の価値があると示唆しました。
最大野党の民主党は合意の成立を歓迎しましたが、安倍政権が再び歴史を歪曲する人間たちを支持するようなことになれば、せっかくの和解も壊されていくことになると警告しました。

東京財団研究班の上級研究員である渡部恒夫氏は、安倍首相はこれまでしばしば擁護してきた歴史を書き換えてしまう攻撃的姿勢を引っ込め、隣国韓国と経済面、安全保障面での関係を強化するため、現実的な選択を行ったと語りました。

そして安倍首相が外交上の最終目標に到達する上で韓国との安定した関係を築くことは、不可欠だったと渡辺氏がつけ加えました。
台頭する中国との勢力均衡を保つため、同盟関係を強化することです。
「最終的に安倍首相が信じるのは、力による均衡です。」

従軍慰安婦NBC
アムネスティ・インターナショナル東アジア部門の研究者である庄司祥加さんは、今回の合意がかつて性的強制労働を強いられた女性たちが正義を実現するための戦いの、幕引きであってはならないと語りました。
「今回の交渉に当事者の女性たちは参加することができませんでした。そして彼女たちを、正義の実現より政治的功利主義を優先した取引の犠牲者にしてはなりません。」

 

http://www.nytimes.com/
「comfort-women-south-korea-japan」

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