ホーム » エッセイ » 【 散り散りになったもの、まき散らされたもの 】〈第1回〉
[ 未来を奪われた原発避難民]第1回
12月22日 デア・シュピーゲル(ドイツ)
パート1[国からも県からも『捨てられてしまった』人々]
もう何か月もの間浪江町の住民21,000人は、日本全国の仮設住宅や避難所暮らしを続けています。
暮らしていた家を捨てさせられ、彼らはそれと知らず、福島第一原発が放出した 放射性物質が流れていく方向に避難をしてしまいました。
その心配と怒りについては察するに余りありますが、それでもほとんどの人々ただひたすら帰れる日が来ることを願い続けています。
馬場保氏は今や彼の後ろに貼られた地図の上だけにしか存在しない、浪江町の町長です。
9ヶ月前、馬場町長は福島第一原子力発電所で発生したメルトダウンから人々を逃がすため、21,000人の浪江町町民を避難させました。
当時日本政府にも、福島第一原発の管理者である東京電力にも、大惨事の際の避 難誘導などは無く、何もかもを町長自身が一人でやらなければならなかった、 と語ります。
そして今日に至るまで、彼はたった一人の戦いを続けてきました。
二本松市の男女共同参画センターにある馬場町長の事務所は狭く、窓もありません。
この場所以外に、浪江町の緊急事態の対応を行える場所はありませんでした。
彼の顔にはあごひげが伸び放題になり、疲労によるしわが深く刻まれています。
彼は何か月もの間、彼は浪江町の将来を救うための努力を重ねてきました。
「全員そろって、一緒に浪江町に帰りたいのです。」と彼は語りました。
「でもそれは難しいでしょう。そしておそらく、町内の一部はこの先もずっと帰れない場所になるかもしれません。それでも皆、浪江町に帰りたいので す。」
破壊された福島第一原発の北西わずか8キロメートルにある浪江町は、一部のわずかなエリアを除き、立ち入りが許されない避難区域になってしまいました。
放射線量が非常に高い場所が確かに存在します。
対策チームには浪江町の町役場その他数か所を、除染するという考えがあります。
「技術的な支援が必要です。」
と馬場町長が語りました。
▽ 危険に向かって逃げた
浪江町の町民はこの除染に、かなえられることは難しい程大きな期待を寄せています。
まるで放射性物質のセシウム137が排水溝に洗い落され、再び町が 汚染されることは無い、とでも言うように…
「町民はせっぱつまった様子で私にこう尋ねるのです、『いつになったら家に帰 れるのか?』と。」
馬場町長が語りました。
浪江町の住民は47都道府県のうちのほとんど、44の市町村にばらばらに暮らしています。
すでに何か月も経過した今、
「住民は避難生活に疲れ果てています。町民の当たり前の暮らしは、破壊されてしまいました。」
福島第一原発の管理者、東京電力は浪江町の住民ヘの補償を約束しました。
「東京電力は住民の心の傷が、時間の経過とともに癒されていくと考えていますが、私が見ている限り、住民の苦しみは時間が経つにつれますますひどくなっています。」
浪江町は避難区域に含まれる10以上の市町村の一つです。
この3月、これらの市町村の100,000人を超える人々が、皆等しく避難民になってしまいました。馬場町長は町民の避難計画を、彼自らが立案しなければなりませんでしたが、町長にも、そして住民にも、彼らが避難しようとしている方角に向け、汚染物質の雲が広がり続けていることを警告する者は誰もいませんでした。
浪江町の町民は避難し、その後を放射性物資が追いかけました。
事故が起きて4日目までに、町民は放射能汚染が最もひどい土地に、自分たちがいることに気づくことになったのです。
〈づづく〉
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,805337,00.html
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – +
今日からまた新しいシリーズものを掲載します。
原題は[ Scattered across Japan]、scatterはばらまく、まき散らす、追い散らす、といった意味なので、放射性物質がばらまかれた事と、浪江町の人々が追い散らされた、双方の意味をかけているものと思われます。そこでご覧のような表題にしました。
一度4回に分けてご紹介した[ 福島J-ヴィレッジ潜入記 : 使い捨てられる人々 ]と同じ、ドイツの雑誌、デア・シュピーゲル(ドイツ語で『正論』という意味)からです。
前回も翻訳していて観察眼の鋭さと、文章力の確かさに感動した私ですが、今回の内容も今年最後を締めくくるにふさわしい、重厚なものです。
浪江町の人々は、福島第一原発の事故でどのような悲劇的運命に追い込まれたのか?
そしてその原因は何なのか?
今回、この原稿を翻訳し、よく理解できました。
そしてひたひたと迫る、人々の悲しみと恐怖 - 第一回にはまだ現れませんが。
4回に分けて掲載する予定ですが、ぜひ最後までお読みくださるよう、心からお願いします。
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – +
【 殺人ウィルス完成、公表を差し止められる 】
アメリカNBCニュース 12月20日
この恐ろしい可能性に関する話題は一度取り上げましたが、追加情報をお伝えします。
考え得る中で最も恐ろしいこのウィルスについて、合衆国政府の諮問機関は研究者に対し、他 国への研究の詳細に関する発表を行わないよう命じました。
ロバート・バゼルがお伝えします。
レポーター : ひとりの医師がウィルスを作成した経緯を説明しました。
彼はこの医師はめったに人には感染しない鳥インフルエンザ・ウィルスを、フェレットを使って人間に対する感染力が極めて高いウィルスに作り変えました。
このウィルスに対してはほとんどの人は免疫を持っておらず、恐ろしい爆発的流行を引き起こす恐れがあり、感染した人の60%は死んでしまう可能性があります。
トーマス・イングレスビー博士(ピッツバーグ大学病院)「これは今まで世界に現れたものの中で、最も危険なインフルエンザ・ウィルスです。」
レポーター : 米国政府に助言する立場の諮問機関は一歩踏み込んで、二つの科 学雑誌(サイエンスとネイチャー)に研究の詳細に関する記事を削除するよう依頼し、テロリストの手に情報が渡らないようにしました。
イングレスビー博士「私はこうして研究が行われること自体に反対でしたが、実際行われてしまった以上、政府のこうした対応は妥当なものだと思いま す。」
彼らは、研究が公表されればどういうことになるか、そこまでは考慮していませんでした。彼 らは学ぶべき教訓を得た、と言えるでしょう。
アンソニー・フォウシ博士(国立健康研究所)「私たちはこのような研究が行われたこと、そして政府がこうした対応をとったこと、その結果がどうなっていくか注視していかなければなりません。」
二つの雑誌は今後数ヶ月内に、この研究の編集されたバージョンを公開する予定です。
これはすべての科学的研究がテロに利用される危険性をはらんでいる、という一つの実例です。
ロバート・バゼル、NBCニュー ス、ニューヨーク
Visit msnbc.com for breaking news, world news, and news about the economy