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【 国中から反対の声が上がる中、日本は原子炉再稼働を強行 】
チコ・ハーラン / ワシントンポスト 7月1日
東京の首相官邸前の広い通りが、抗議の声を上げる人々で埋め尽くされました。
福井県の大飯原発の入り口から400メートルほどの場所には、日本中から人々が集まってきました。
日本の報道によれば、彼らは大飯原発の職員の通勤を妨げ、出入りができないようにするため入口の前に車両を停め、口々に「再稼働、反対」と唱えていました。
しかし職員はすでに、原発内で再稼働の準備に取り掛かっていました。
西日本の沿岸にある大飯原子力発電所では日曜日、福島第一原発の事故以来停止していた日本の原子炉の中、最初に再稼働を行うべく、関西電力の職員たちが技術的手順を次々とこなしていました。
大飯原発の再稼働は、日本国内の他の原子炉再稼働への道を開く可能性があります。
野田首相は国民に対しては、夏場予想される電力不足による日本経済への打撃を避けるため、大飯原発の再稼働を行う、と話しています。
しかし今回の再稼働は、原子力発電所の廃止または維持で国論が二分していた状況下、原子力発電の安全性に疑いを持ち反対する人々を増々増やす結果になり、決定的に現政府を見限らせることになりました。
一部の政治評論家は、2週間前の野田首相の大飯原発の2基の原子炉の再稼働の発表(次に大飯原発4号機が7月末に再稼働を予定している)が、国民の怒りを鎮静化させるかもしれない、と語っていました。
「再稼働さえしてしまえば、大方の日本人はあきらめてくれるだろう…」
しかし、結果は全く逆でした。
野田首相が目にしたものは、インターネットのソーシャルメディアを通しての呼びかけにより、数百人だった抗議者の数が百倍にも、一千倍にも増えたことだったのです。
6月29日土曜日夜、大飯原発の再稼働に抗議するために首相官邸前に集まった人々の数は警察の発表によれば17,000人、主宰者の発表では200,000人に上りました。
しかし日本政府はこれまで、どれほど多くの一般の国民が声を上げたところで、大飯原発再稼働の方針を変えようとはしませんでした。
日本国内に広く、深く広がり続けている今回の抗議活動は、人々が権力の命令にはおとなしく従う傾向の強い日本では珍しいことです。
野田首相は消費税増税問題でも一部国民の反発を受けていますが、明らかに原子力産業界寄りであるその政治姿勢は、より広範な国民の怒りを買うことになりました。
アメリカの首都ワシントンに本社があるPEW調査センターが、日本国民を対象に6月5日に実施した世論調査では、70%を超える国民が、日本は原子力発電依存から脱却すべきである、と答えていました。
再稼働を宣言するまでに、日本政府は何カ月もかけて大飯原発周辺の自治体の説得に当たり、了解を取り付けていました。
大飯原発では7月1日日曜日、関西電力の技術者が燃料の間から制御棒を取り除きました。共同通信社によれば、4日水曜日までに1,180メガワットの送電が始まることになります。
福島第一原発で原子炉が次々にメルトダウンを起し、100,000人を超える人々が避難を強いられる以前、日本はその電力の30%を54基ある原子炉に頼っていました。
しかし福島第一原発の事故が発生すると、これらの原子炉は安全性への懸念、あるいは定期点検のため、次々に停止していきました。
そして5月初め、最後に北海道泊原子力発電所の4号機が停止し、日本には短い間でしたが、原子力発電が全く行われない時が訪れたのです。
その状態をいち早く破ったのが野田首相でした。
野田首相は国民に向け、こう語りました。
あなた方もわかっているだろうが、原子炉を再稼働させなければ、日本国民の生活がおびやかされることになる、と。
日本政府は日本の長く暑い夏がやってくれば、電力不足は避けられず、特に原子力発電所への依存率が高い関西地区では15%の電力が不足する、と予測していました。
政府が大飯原発3号機と4号機を最初に再稼働させたのは、関西地区に電力を供給していること、そして災害の対応能力を検証するためのストレステストに合格していたこと、この二つが理由でした。
日本にいる政策立案者がこの国の将来のエネルギー政策を検討しているこの瞬間に、大飯原発は再稼働します。
エネルギーと環境問題について検討を行っている委員会は、この国の原子力政策について、3つの選択肢を提示しました。
2030年までに原子力発電への依存率を
1. 20-30%にする
2. 15%にする
3. 0にする
日本の報道機関によれば、その決断は8月に下されることになります。
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/1st-nuclear-reactor-to-go-back-online-since-japan-disaster-meets-with-protests/2012/07/01/gJQAdlHZFW_story.html
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日本の報道機関はさっぱりですが、日本の原発問題について、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツのメディアは次々と鋭い切り口を見せています。
ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送)の
「日本の電力業界は福島第一原発の事故について、それをさほど大きな失敗としては認めていません。そのために、彼らが福島第一原発の事故から学んだものなど、基本的にはゼロなのです。」
→ http://kobajun.biz/?p=845
フランスのル・モンド・ディプロマティークは
「死の灰が大量に降り注がなかったのは、現場の緊急作業員の献身的作業、そしてただの偶然」 【 日本人の静かな怒り 】〈 日本の原子力発電に幻滅はつきもの 〉 → http://kobajun.biz/?p=1074
イギリスのザ・ガーディアンは
「家族を、家を、故郷を奪われ呆然自失する被災者に、大量の放射能を浴びせた福島第一原発・政府機関は言い逃れに躍起」[ フクシマ、それは津波と言う地獄を見た日本人が、決して見たくなかったもの ] → http://kobajun.biz/?p=1664
そして何と言ってもニューヨークタイムズとワシントンポストの報道には、何度も感心させられました。
6月29日の首相官邸前の抗議行動の真実の姿を、世界に向け発信したニューヨークタイムズ。
そして今回のワシントンポストの記事は、なぜ日本政府がこれほどまでに国民の声を無視し続けるのか、
「再稼働さえしてしまえば、そのうち、大方の日本人はあきらめてくれるだろう…」
という『政治評論家』の都合の良い解釈を、拡大解釈した日本政府の姿がはっきりと見えました。
そこには政治家としての国民に対する誠実さなど、かけらほどもありません。
「熱しやすく冷めやすい」と言われる国民性に、たかをくくり、あたかもこううそぶいているようです。
「これまで通り、やりたいようにやらせてもらうさ…」
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【北部スペインの住宅ローン支払い不能の追い立てに抗議する人々】
アメリカNBCニュース 6月27日
抗議を行っている人々は、スペイン北部のオビエドでエクアドル人の一家族が住宅ローンの返済を続けることができなくなり、追い立てられようとしていることに、反発しています。
ホルヘ・コルデロとその妻、そして5歳になる娘のアマンダの3人家族は、サハスツール銀行に対する住宅ローンの返済の継続ができなくなり、購入したマンションからの退去を求められました。
17人の活動家がこのマンションを占拠し、マンションの所有者を含む200人ほどが強制退去を阻止しようと、集まりました。
ホルヘの妻と幼い娘は強制退去が行われる間、別の場所にいました。
機動隊とのもみあいの後、20名が逮捕されました。
スペインでは疲弊する経済により、100万人以上の人々が住宅ローンの返済に窮している、と言われており、国民の間には増加する強制退去に対する反発と抗議運動が広がり続け、政治的にも見過ごせない事態となっています。
【7月4日アメリカ独立記念日に向けて】
アメリカNBCニュース 7月3日