ホーム » エッセイ » 強まるゲンパツへの逆風 : ニッポン《前篇》
原子力発電を推進すればするほど、様々な負の側面も拡大していくことを気づかせた福島第一原発の事故
原子力発電はたくさんの人々の生活と環境に壊滅的被害を与える危険がある、そこまでして動かす必要があるのか?
ジュリアン・ライオール / ドイチェ・ヴェレ 2016年10月21日
世論調査の結果は、日本人の多くが国内の原子力発電所を再び稼働させることに反対している事実を明らかにしました。
国民ひとりひとりに原子力発電所は安全だという事を納得させることが、日本政府にとってどれほど困難な作業であるか、そのスケールの大きさが示される結果となりました。
10月16日という日が訪れるまで、米山隆一氏は4度国政選挙を戦い、4度敗れるという体験を強いられてきました。
しかし現在、医師と弁護士の両方吏資格を有する49歳の米山氏は、国政の場の与党自民党が擁立し当選の可能性が高いと見られていた対立候補を破り、新潟県知事として宣誓を行うことになりました。
米山氏は対立候補の元建設省の官僚・森民夫氏に選挙戦で勝利するため、懸命に闘ってきました。
しかし有権者が投票所に入った時、彼らの心を占めていたのはたった一つの問題でした。
森氏と自民党は、広大な敷地面積を誇る世界最大の原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を望んでいました。
彼らは口をそろえ、発生してからもうすぐ6年が経過する福島第一原子力発電所の事故、2011年3月に地震と津波によって発生した世界史上2番目に最悪の原子力発電所事故と同様の事態が起きないよう、新しい安全基準が導入制定された今、新潟も柏崎刈羽原子力発電所も安全だと主張しました。
しかし有権者は首を縦には振りませんでした。
528,455人の有権者は現状のまま柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を認めるわけにはいかないという米山氏を支持しました。
これに対し森氏を支持したのは465,044人でした。
▽ 全国に広がる再稼働への反対
日本国内の原子力発電所の再稼働については、国民の多くが反対しているという調査結果はこれまでも繰り返し明らかにされてきましたが、朝日新聞社が10月15、16の両日に渡って公開した調査結果においても、一般市民の57%が再稼働に反対していることが明らかになりました。
日本では2011年以降ほとんどの原子力発電所が停止したままですが、このうち新たな安全基準に適合する原子力発電所の再稼働に賛成する一般市民の割合は29%に留まっています。
現時点で日本国内にある54基(事故を起こした福島第一原発の6基を含む)の原子炉のうち、実際に再稼働しているのは2基に留まっていますが、それすら地元住民や環境保護団体から厳しい反対意見が相次ぎ、法廷の場で再稼働の是非が争われました。
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所(IEEJ)IEE JAPANがこう書した報告書によれば、現在の2基に加えて2017年3月末までに7基の原子炉が、そして1年後にはさらに12台の原子炉が稼働する見込みであることを明らかにしました。
しかし世論調査が示すように、大多数の市民は現在の安倍政権が国の最大利益に合致すると主張する再稼働方針に反対しています。
「福島第一原子力発電所の事故が発生したことにより、多くの人々が原子力発電を推進することに従い、危険を始め様々な負の側面も拡大していくことに気がつきました。みんなもうそんな危険は冒したくない、そう考えるようになったのです。」
東京で暮らす司書の森脇ひろ子さんがこう語りました。
「そして同時に多くの人が、そこまでして原子力発電所を再稼働させる必要はないという事実に気づきました。」
「福島第一原発の事故が発生してから原子炉が使用できなくなりましたが、身の回りをよく見回しても何も不都合はありません。必要なだけの電気があり、停電も無く、皆普通の生活を送っています。」
「地震発生の直後こそ、私たちは電気を節約するために出来ることは何でもするように求められました。しかしそれ以上のことは何も起きませんでした。」
森脇さんはドイチェ・ヴェレの取材にこう答え、次のように続けました。
「私たちみんなが、本当は日本には原子力発電所は必要ないのだという認識に到達したのだと思います。そして私たちが本物の進化を手に入れる機会を与えてくれているのでしょう。」
森脇さんはさらに日本は安全でしかも環境に優しい発電技術を開発・進化させ、それを商業的にも成功させるだけの技術と開発力を持つ世界有数の先進工業国であると語りました。
〈後篇に続く〉
http://www.dw.com/en/opposition-to-nuclear-energy-grows-in-japan/a-36110302
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
2016年11月の報道写真から《1》
アメリカNBCニュース 2016年11月1日
2016年11月1日イラク国内のカイヤラ油田の井戸から上がる猛煙。
政府軍やクルド族民兵の攻撃を受け、イスラム国(ISIS)兵士が撤退前に放火して行ったものです。(写真上)
インドのジャム・アンド・カシミール州スリナガル郊外の朝、霧に覆われた野菜畑でバスケットを頭に載せて運ぶ女性。(写真下・以下同じ)
現在イスラム国(ISIS)に支配されているイラクのアブジャルボア村から避難してきた少年。イラク領内のモスル奪還作成の開始により、家畜とともにさらなる避難をすることになりました。
ロンドンの聖ジェームズ公園で。
ミンスクの北西約110kmの場所にあるバルニー村にある、第一次世界大戦のドイツの犠牲兵士の墓参りをする高齢の女性。
http://www.nbcnews.com/slideshow/today-pictures-nov-1-n676621