ホーム » エッセイ » 【 廃炉のための専門技術者、福島第一原発で完全に不足 】《後篇》
完全廃炉の経験は小型の実験炉1基のみ、これが日本の廃炉の現実
福島第一原発の完全廃炉という巨大な作業、日本だけでは完遂不能
影山ゆり / AP通信 / 米国FOXニュース 12月15日
フランスもすでに9基の原子炉を廃炉にした経験を持っています。
中央政府レベルでは7名の廃炉の専門家を擁し、地方レベルではさらに10名の専門家がいます。
アメリカの原子力技術者で、1979年にメルトダウンしたペンシルヴェニア州のスリーマイル島の原子炉の廃炉作業の経験を持つレイク・バレット氏が、コンサルタントとして東京電力に雇用されました。
彼は年1~2回程度福島第一原発の現場を訪れ、助言を行うことになっていますが、恒常的に廃炉作業に関わる訳では無く、毎日仕事がある訳でもありません。
スリーマイル島の事故と比較した場合、福島第一原発の事故ははるかに深刻で複雑です。
スリーマイルでは1基のメルトダウンが起きましたが、核燃料が格納容器の外にまで溶け出すメルトスルーは起きていません。
これに対し、福島では3基の原子炉でメルトダウンに加えメルトスルーが発生、さらには複数回の大きな爆発が発生したことにより、事故現場の複雑さ、汚染の深刻さなどにおいて比較にならないからです。
バレット氏は、彼が福島第一原発における廃炉作業に参加することを決断した理由として、スリーマイルの廃炉作業には複数の日本人技術者が参加しており、彼らも今回の作業に当然参加するはずだと考えていたことを明らかにしました。
バレット氏は彼らの所在について尋ねましたが、返答は一切ありませんでした。
バレット氏はスリーマイルで働いた日本人技術者全員が引退してしまっているか、あるいは原子力産業界にはもう席を置いていないことを恐れています。
「最も重要かつ困難な課題は、熟練した原子力技術者の確保です。事故収束・廃炉作業の手順について具体的な計画を立案し、実際に作業を行う日本人技術者たちの中に溶け込み、充分に意思疎通できる人間が必要なのです。」
バレット氏がこう語りました。
日本の原子力発電はアメリカより遅れて始まり、これまで完全廃炉を完了した経験があるのは、小型の実験用原子炉1基のみです。
日本では現在、5基の原子炉が廃炉の様々な段階にあります。
内訳は実験用原子炉が2基、商業用原子炉が3基です。
廃炉の最も長い期間がかかると見られているのは、東海原子力発電所1号機です。
現在22年の予定期間の15年目に入っています。
約70人の専門技術者が廃炉作業に取り組んでいます。
しかし、日本の最も古い原子炉で積まれた経験を、直接福島で応用できる訳ではありません。
福島第一原発に類似した原子炉の廃炉作業は、東京の西にある浜岡原子力発電所にあり、ここでは現在2基の原子炉の廃炉作業が行われています。
しかしその作業は始まったばかりで、完了まではこれから30年という時間がかかることになっています。
事故の発生から2年半、日本は国内外から専門家を集め、原子炉の廃炉について研究する国際研究所を設立することになりました。
この研究所は福島第一原発の事故収束・廃炉作業の実際について、情報交換をする役割も担うことになります。
原子力発電所の設計と安全管理の分野で20年の経験を持つアイダホ大学のアキラ・トクヒロ教授は、その取り組みを福島第一原発の事故収束・廃炉作業について、初めて正しい第一歩を踏み出すものだと語りました。
しかし一方では、これから進めなければならない作業の巨大さと比べると、対応としては小さすぎるとも語りました。
あらたに設立される組織は、課題が山のようにある事を認識しています。
ロボット開発やその他の数多くの技術開発も含め、先例のない難しい問題がこれから待ち受けています。
トクヒロ教授は、チェルノブイリの事故処理問題を抱えるウクライナ、スリーマイル島の経験を持つアメリカを中心に、福島第一原発の問題解決のための国際的機関の創設を主唱しています。
「福島第一原発の完全廃炉という巨大な作業を完了させるためには、国際社会の取り組みが必要なことは明白な事実です。」
トクヒロ教授がこう語りました。
「世界の原子力産業界の連携と性根、それが試されることになるのです。」
〈 完 〉
◆ 掲載されている写真について(AP通信社)
技術研究組合・国際廃炉研究開発機構が公表したこの写真は、9月25日に国際専門家会議のメンバーが、福島第一原子力発電所内で東京電力の技術者と、事故収束・廃炉作業の進捗状況について打ち合わせを行いました。
国際専門家会議が福祉の事故に関する実況見分を行った(9月23日~27日)のはこれが初めてです。
http://www.foxnews.com/world/2013/12/15/japan-lacks-decommissioning-experts-for-fukushima-nuke-crisis-with-none-at/